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八潮の道路陥没は、都市の動脈硬化

埼玉県南東部の八潮市で大規模な道路陥没が発生している。既に発生から3日が経過したが、依然として陥没の穴に落下したトラック運転手の救出は難航している様子だ。

また、この道路陥没の影響で、周辺地域では、周辺道路が広範囲に封鎖され、インターネットなどの通信が遮断されるなど深刻な影響が出ているようだ。

下水道は都市の静脈

今回の事態を受けて改めて分かったことは、下水管がまるで人間の血管のような役割を果たしていることだ。
地上を走っている道路や電気・水道などが、動脈とするなら、下水道は体の老廃物や二酸化炭素を排出る機能を持つ”静脈”のような働きをしている。

道路陥没の原因となった下水管は、報道によると120万人近い住民の下水を処理していたらしい。
埼玉県の人口が確か700万人程度だから、埼玉県民の6人に一人の下水が流れていたことになる。凄い量だ。
人間の体に例えるなら、大静脈が破裂したようなものだろう。

老化し始めた東京

今回の陥没事故で露わになったのが、東京などの「都市の高齢化」だろう。
上下水道や電気ガス、道路などのインフラは、人間の体に例えると循環器のようなものだ。
人間が老化すると循環器が劣化し、心筋梗塞や脳溢血、大動脈破裂などが原因で亡くなる。
それと同じように、東京を中心とする都市自体が、インフラの老化により「寿命を迎えつつある」のかもしれない。

修復は間に合うのか?

人間と違って都市自体には物理的な寿命はない。理論的には修復可能だ。道路や上下水道も物理的には修復が可能だ。
次々に問題が発生してもは修復が間に合えば問題ないだろう。
一方で都市自体の主体は、飽くまでも”人間”だ。体に例えると「細胞」のようなものだろう。
インフラの修復や復旧が間に合わなり、不便な時期が継続する場合、人口が流出してしまうかもしれない。ちょうど老化すると筋肉が衰えて、体が衰弱するようなイメージだ。そして都市が「死」を迎える可能性もある。

今回の道路陥没事故が象徴してるのは、東京を中心とする首都圏が、老化により寿命を迎えて「死につつある」ことかもしれない。

住民が「劣化」は「癌」

ちなみに、同じように東京のような都市を「生き物」に例えるなら、病気のの「癌」に当るのは、住民の劣化だろう。
丁度、人間の体を形成しているのが、数億個の細胞とするなら、細胞に当るのが「住民」だろう。
既に広く知られている通り、癌は人間の細胞が変異して増殖して起きる。
東京のような巨大都市でも、細胞にあたる住民が劣化し変異して増殖し始めると、ちょうど癌細胞に侵されて人間が死に至るように、都市も死に至るのかもしれない。

今後のカギは移動性

今回の道路陥没事故を見て感じたのは、今後の鍵になるのが「移動性」かもしれないということだ。
日本人は、元々村社会と揶揄されるように、一つの村にとどまり続けることがよしとされてきた。
移動を繰り返す人たちは、よそ者や流れ者として忌避や排除の対象になってきた歴史がある。
近代に入ってからも、終身雇用が象徴するように、一つの会社で働き続けることがよしとされてきた。

住宅に関しても、マイホームを持つこと、特に「一戸建て」のマイホームを持つことが常識とされてきた。
しかし今回の事故が示しているのは、一つの場所にとどまり続けることは、却ってリスクが高いとみなされるようになるのかもしれない。
今回の陥没事故は、たまたま埼玉県で発生したが、同じように高度成長期に開発された神奈川や千葉など他の地域で起きうるだろう。
今後、個人のリスク管理の一つとして、住居だけでなく、例えば仕事はリモートワークが可能かなど、全体的な「移動性」が重要になるかもしれない。

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