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【黄昏ジャパン】兵庫県知事選で火がついた日本版SNS文化大革命!

相変わらず兵庫県知事にまつわる話題がつきない。
出直し知事選での斎藤知事の逆転勝利に続いて、選挙の直後には、西宮市のPR会社社長の公職選挙法違反ともとれる爆弾投稿が、寄りにもよってこのnote上に投稿され、更に激しく炎上している。
そこで今回は、先日の兵庫県知事選で、なぜSNSの熱狂が起きたのか?
さらには、なぜ衆議院選挙での自公過半数割れなど、最近政治で異変が続くのか。その要因について仮説を立てて論じてみたい。

兵庫県知事選は日本の文革だ!

その仮説とは、兵庫県知事選が、言わば「SNS文化大革命」の号砲を鳴らしたということだ。

文化大革命とは

文化大革命(略して「文革」)と言われても若い人はピンとこないだろう。
文革とは中国で1960年代から1970年代の初めまで続いた全国規模の政治運動だ。

最初は毛沢東の権力闘争

当時、中国の建国の父である「毛沢東」は、経済政策の失敗などの責任を取らされて実質的に引退に追い込まれていた。
しかし永久革命を唱える毛沢東は、大人しく引退などしなかった。
国民の間で神格化されていた自身のカリスマ的な人気を利用して、権力奪取のための大衆運動を仕掛けた。
人民日報などの新聞や大学の壁新聞(!)を使って一般民衆や学生を煽り、自分を追い落とした共産党の指導者を引き摺り下ろそうとした。
その時に唱えられた有名なスローガンが「造反有利(ぞうはんゆうり)」だ。
プロパガンダで煽られた学生たちは、共産党幹部の自宅などに押しかけて、幹部達を公衆の面前でつるし上げにし始めた。

大規模大衆運動に

しかし運動が全国規模に広がるに従って「偉い奴らを皆で引き摺り下ろせ!」という大衆運動になってしまった。
共産党内部の権力闘争として始まった文革は、共産党の独裁的支配と格差の拡大にフラストレーションの溜まっていた一般大衆の暴力を解放してしまったのだ。
この文革の最中には、暴徒化した学生や工場労働者が、中国全土で工場長や校長などと兎に角「長」が付く「偉い」人間を広場などに引き摺りだして公開リンチすることが頻繁に行われた。それも数年に渡ってだ(!)。
この10年近く続いた騒動で、中国全土で3000万人近い人がリンチや内ゲバなどで殺されたと言われている。
日中間でしばしば問題となる南京大虐殺も真っ青だ。

最後は暴徒化した学生や労働者のグループが、中国各地の都市でグループ同士の内ゲバから、機関銃や大砲まで持ち出して武力衝突するというカオスな状況になってしまったそうだ。
この全国規模の大衆リンチでは、共産党のトップだった劉少奇までサッカー場での批判集会に引き摺りだされて、大衆の前で跪かされて自己批判するという異常な事態まで過激化した。更に劉少奇はその後自宅軟禁され癌の治療が受けられず亡くなっている。

学生を田舎に追放

最終的には、余りに騒動が広がったことに恐れをなした中国共産党が、都市部の学生たちを僻地の村などに強制的に追放する「下放(かほう)」という政策を実施し、運動はやっと収束した。
この「下放」では、理想に燃える世間知らずな大学生を「君たち知識人が、遅れた農民を教育するのだ!」と煽って列車に乗せて田舎に送り込んだ。
ところが中国の地方は、想像を絶する原始的な状態だった。電気も水道もない状態で、毎日の過酷な農作業に従事させられた大学生の中からは自殺するものが頻発した。何しろ広大な中国の内陸部の村だ。隣村まで歩いて数日とかざらだ。逃げたくても逃げられなかったそうだ。
また過酷な労働から逃れるために、農民の男性と結婚する女子学生も多く、その時生まれた子供たちが、後に捨てられて中国では大きな社会問題にもなった。

※チャン・イーモウ監督の映画には「文革」のエピソードも出てくる

洞窟で青春時代を送った習近平

因みに今の中国のトップである習近平総書記も15歳の時に北京から北西部の砂漠地帯の村に「下放」され、「洞窟の家」に住み22歳まで7年間にわたって農作業をしていたそうだ。

この「下放」などで全国規模の騒動は収束したものの、文化大革命自体は毛沢東が亡くなる1976年まで実質的に解除されなかった。
つくづく中国は恐ろしい国だ。
日本に生まれてよかった。

日本で始まった「SNS文革」

この恐ろしい文化大革命のような事態が、日本で始まっているかもしれないことにお気づきだろうか?
この夏ぐらいから日本の選挙で異変が続発しているのだ。

東京15区のつばさの党

最初の異変は、東京の江東区が選挙区の衆議院議員東京15区の補欠選挙だった。
この補選では、「つばさの党」という政党が、立憲や維新、そして出来たばかりの保守党の候補者を街宣車で追い回すという異常な選挙活動を行った。
また演説会場では、公衆電話ボックスのよじ登って大音響で他の候補の演説を妨害するなど異様な状況になった。
さらに選挙後には「つばさの党」の代表者などが公職選挙法違反で逮捕されるという事態にまでなった。

都知事選の石丸フィーバー

次は衆議院補選の直後に行われた東京都知事選だ。選挙結果は、現職の小池百合子都知事の勝利に終わった。
しかし小池知事以上に注目されたのが、ご存じ元安芸高田市長の石丸伸二候補の大躍進だった。
当初はネタと思われていた石丸候補がアレヨアレヨトいう間に支持を獲得し、最後には小池都知事の有力対抗馬とみられていた蓮舫候補を追い抜いて二位になってしまった。可哀そうな蓮舫候補は事実上政治生命を絶たれたも同然に。

また、この都知事選では、今回の兵庫県知事選に立候補していた立花氏率いるN国党が「ポスターの掲示板スペースを有料販売する」という奇策にでて話題にもなった。
このポスター騒動では、元セクシー女優の女性が際どいというか卑猥なポスターを堂々と選挙のポスターに掲示して警察沙汰になった。ちなみに件のポスターは、警察の警告を受けて即座に撤去されたそうだ。

立花孝志は日本版紅衛兵

そして今回の兵庫県知事選では、オオトリが登場した。SNS文革の紅衛兵とでも呼べるようなジョーカー、御存じN国党の立花孝志氏だ。
既にご存じの通り、立花候補は、兵庫県知事選挙中に真贋不明の県庁職員のスキャンダル情報などをYoutubeなどのSNSで発信しまくった。
この怪情報の拡散に関しては、立花氏が公職選挙に立候補しているということもあり、SNSプラットフォーマーだけでなく、既存メディアも取り扱いに苦慮したようだ。
この立花孝志氏の暴露情報に関しては、斎藤知事の逆転勝利にどれほど寄与したかは意見が分かれるところだ。しかし、投票率が15%近く上昇したことから、この選挙の立候補を利用した暴露が効果的だったのは明らかだろう。

上級国民を火炙りに!

兵庫県知事選での逆転勝利だけでなく、ここ最近日本では、SNSを中心に下流の反乱とでも呼べるような現象が続発している。

炎上する財務省と厚労省のSNS

国会では、国民民主党により103万円の壁撤廃が議論されている。そんな中、注目されているのが財務省(そして厚労省)のSNSアカウントだ。
それまであまり注目されることのなかった地味な両省のSNSアカウントに批判のコメントが殺到して炎上しているようなのだ。

玉木代表の不倫陰謀説

財務省陰謀説の原因になったのは、103万円の壁撤廃でお馴染みの国民民主党の玉木代表の不倫騒動らしい。
この不倫騒動が報道されると、財務省のSNSには、”減税案を潰そうとする財務省の陰謀だ””財務省によるハニートラップだ!”などの書き込みが溢れることに。

厚生年金の改革で火に油

さらに今度は厚労省が、103万円の壁ならぬ、パート従業員などに厚生年金の加入を強制する106万円の壁撤廃案を提示した。
この厚生年金拡大の方針が伝わると財務省に加えて厚労省のSNSアカウントが批判コメントで溢れることになっているそうだ。

皇室批判も同根

同じようなことは、秋篠宮家などの皇室の報道にも言える。
以前は「タブー」で「アンタッチャブル」だった皇室に関する事柄に関しても、ネットが登場して以来、大衆のストレスの発散先として常に「炎上」している状態だ。当事者のストレスを考えると気の毒になるが、どうしようもない。

最近頻発する熊の駆除にクレームを入れる人たちも同じ類だろう。

異変の原因はSNSでなくてインフレ

東京都知事選以降に石丸伸二候補躍進の要因としてSNSによる情報拡散が注目されはじめた。
確かにSNSは、都知事選で大きな力を発揮したかもしれないが、それだけでSNSによる大衆の動員を説明するのは危険だ。
なぜならSNS自体は10年以上前から存在していたからだ。そして、スマホに関しても初代iPhoneが登場したのが2007年だ。もう17年も前の話だ。

そこで選挙の混乱の真の原因と考えられるのが、インフレだ。
2022年から本格化したインフレは、既に3年目を迎えている。
2020年を基準とする消費者物価は指数は108を超えている。
またより生活実感に近い食品や電気代などは15%から場合によっては50%近くまで上昇している。身近な卵なども40%近い上昇だ。

選挙に異変が生じたタイミングは、ちょうど電気代の国による補助が切れたタイミングだった。
デフレで顕在化しなかった低所得者層の生活苦がインフレで顕在化してきているのだ。
そう、要は「一揆寸前」なのだ。

「親ガチャ」と絶望のSNS

一連の兵庫県の騒動に関して、TVなどの主要メディアは、未だに公益通報の取り扱いの是非など些末な点を論じている。
しかし大衆は、そんな面倒な話には興味がないのは明らかだ。
唯一興味があるのは、物価高による生活苦のストレスを解消してくれる「生贄(いけにえ)」だ。
要は上級国民を火炙りにしたいのだ!

「親ガチャ」の本当の意味

数年前に「親ガチャ」という言葉が流行したことを覚えているだろうか?
日本では「親ガチャ」とは、親の収入や社会的地位で子供の将来が決まってしまうという意味に使われてきた。
しかし実は「親ガチャ」の本来の意味は「能力は遺伝する」ということだ。
東大生の親の年収が1500万円超なのは、親が金持ちだから東大生になれたのではなくて、子供が東大に行けるくらい親も頭がいいから金持ちなのだ。だから結果として東大生の親が金持ちだっただけだ。
そして遺伝的に劣っている人間は、いくら努力しても「遺伝的に優れている人間には勝てない」という残酷な意味でもある。
以前から「氏か育ちか?」という諺もある通り、人間の運命は生得的なものなのか、それとも学習や努力で後天的に獲得可能なのかは議論の的だった。
そして、これまでは、私たちの社会は、基本的に「努力すれば報われる」という共同幻想をベースに運営されてた。
しかし近年の人間や生物に関する科学の急激な発展は、人間の一生に「遺伝」が大きな影響力を与えていることを明らかにしてきている。
この事実は、忌まわしい「優生学」や「差別」を連想させることから、現代社会では事実上「タブー」とされてきた。
しかし科学的事実は覆い隠しようがない。「親ガチャ」という言葉が流行したことでも分かる通り、この科学的事実は、一般にも広く知れ渡るようになっている。

絶望のSNS

そして近年のSNSの急激な普及で貧富の格差が可視化された。
煌びやかな「上級国民の世界」を垣間見た下流国民、低所得者層は、自分たちは遺伝的に劣っており、社会的にに浮上する可能性が少ないことに薄々勘づき始めている。
以前なら受験勉強など、社会的に上昇するためのルートがある程度(幻想とはいえ)社会的に共有されていた。
しかし今では、経済的社会的成功者である「上級国民」と大多数の「下流国民」の間の「埋めがたい能力差」があることに皆が気づき始めている。

上の人間を引き摺り下ろせ!

経済的社会的に浮上する機会がないのなら、弱者に残された道は「上にいる人間の足を引っ張り、引き摺り下ろす」だけだ。
今まで従順に権力に従っていた下流国民が、インフレによる生活苦でとうとう限界を超えたのだ。
そして立花孝志候補のSNSが寝た子を起こしてしまった。
兵庫県知事選の勝利という、大衆運動の結果を目の当たりにした下流国民の群衆がSNSで繋がって蠢動し始めたのだ。

最近問題になっている「闇バイト強盗」なども同じロジックだ。金をため込んでいる老人から金を奪うことは、若者に金を還流するある種の「社会正義」だ!というのだ。

これは正に日本版「文化大革命」の勃発を予感させる事態だ。

ホリエモンはネット選挙の先駆者

実は20年近く前に石丸伸二氏と同じようにネットの力を選挙に、そして世代交代(とついでに世直し)に利用しようとした先駆者がいた。
御存じホリエモンこと堀江貴文氏だ。
ホリエモンは、2005年の有名な「郵政解散選挙」で、当時のライブドアブームに乗り、自民党を離党していた亀井静香氏の広島の選挙区に立候補して殴り込みをかけた。
しかし結果は残念ながらの敗北。
当時は、後にWEB2.0と呼ばれるようになるブログが出始めた時期で、今のようにSNSや動画サイトも殆ど存在しなかった。
そして何よりガラケー時代だった。

そのため「一人革命」を目指したホリエモンは、既存メディアや老害の支配する経済界の総攻撃にあい、最後は国家権力の総本山である東京地検特捜部に、でっち上げとも言われる国策捜査で最後は逮捕されてしまった。

しかし今は全国民の手にスマホが握られている。いつでもどこでも動画のライブ配信が可能だ。そして情報は、まるでウィルスのように指数関数的に拡散する。

そう、スマホとSNSの普及で、情報というウィルスが扇動家と世直しを求める大衆を仕切っていた高い壁を超えたのだ。もうウィルスの拡散を止めることはできない。

次の生贄は誰?

兵庫県を巡る今後の動向は不透明だ。しかしインフレが続く限り、この政治の異変は続く可能性が高い。そして決選の舞台は、当然ながら来年夏の参院選だろう。
もし参院選までにインフレが鎮静化し、国民生活がある程度のゆとりを取り戻していない場合には、与党自公の大敗も視野に入って来るだろう。
それだけではない、今我が世の春を謳歌している国民民主党に替わって、更に過激な「れいわ新撰組」が国会のキャスティングボードを握ってもおかしくない。

革命は始まったばかりだ


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