経験がたっぷり詰まった静岡でのお話
前回は、私の自己紹介と決断についてお話しした。
詳細はこちら
https://note.com/nice_holly595/n/nfc99d8a06eda
今回は、2010年に私がこれ以上ないくらい、行き詰まっていた時の話をする。
私は2010年の6月に、広島を旅立って関西に出て来た。
しかしそこから職を転々と変えて来た。
原因は、発達障害の一種の注意欠陥多動性障害(以下ADHD)による症状により職場で失敗が目立ったからである。
具体的には
1 一回の説明で、仕事を覚えられない。
(メモを取ってもパニックになり忘れてしまう)
2 同じ事を何回も聞く事に対して、指摘される。
3 1と2を繰り返すことによって、職場のみんなに愛想を尽かされてしまう。
と言う流れが学校、バイト先や就職先で起こってしまう。
2010年の年末、私は仕事が上手くいかず、辞める事になり、途方に暮れていた。
上記の流れで、何がダメなのかを理解していなかったのだ。
その時、客室が20数室ある、とある旅館のホームページで
「期間限定のスタッフを募集!興味ある方がいれば電話をください」
と言う求人を見つけて、早速電話をかけて、女将さんとお話をして、働かせて頂く事になった。
私は新幹線で静岡県の三島市に向かう途中、
「俺って一生懸命にやっているのに、何がいけないんかなぁ😅」
という気持ちだった。
(この時はまだ、自分にADHDがある事にすら、気付いていなかった)
三島駅から、電車とバスを乗り継ぎ、私は戸田(へだ)と言う場所にたどり着いた。
現地は海沿いで、バスを降りた時、海の向こうには、富士山がはっきり見える。🗻
そしてとても寒く、海から強い向風が吹き、肌に何がか突き刺さる様な痛い寒さだった。
自分の心の中の状況を表現されている感じがして、自然に涙が出てきた。
バス停には、車で旅館の男性のスタッフの方が、迎えに来て下さっていた。
スタッフ「山本くんか?よく来たね!君がちゃんと来てくれた事が嬉しい😃よろしくね!」
山本「よろしくお願いします!」
旅館に到着後、私は社長室に通され、支配人と女将さんに挨拶をする。
女将さん「この年末年始の2週間、本当に慌ただしく過ぎていく事になると思う。一生懸命やってたら、周りもきっと助けてくれるから頑張りましょう😃仕事終わったら温泉に浸かってもいいからね! 」
支配人「君が山本くんか? よろしくね! 働く事はしんどいぞ? 君がどんな経験をしてきたかは、僕達にはわからない。困ったら力になるから頑張って行こう!」
私は、現地に到着してから、社長室に通されるまでの数時間で
「この人達は、真正面から人を見て下さる人たちかもしれない!頑張ってみよう!」
と言う気持ちに切り替わり、不安も一気に和らいだ。
旅館のタイムテーブルはこんな感じだ。
(夜から仕事が始まる。)
夜の部
16:00~18:00 出勤&宿泊客の夕食の準備(食器の準備、盛り付け、浴室の点検)
18:00~20:00 板前さんが、調理した料理を、客室係に届ける。
20:00~21:30 客室の就寝準備
21:30~22:30 厨房の後片付けを手伝う。
(ここで一旦お仕事は終わる。)
朝の部
7:00~9:00 朝食準備&片付け
9:00~11:00 客室の清掃及び寝具の交換
夕方お客様を迎えて、翌日客室の清掃が終わるまでが、旅館での1日という流れだ。
女将さんや、支配人の言葉以上に、旅館の仕事は大変だった。
年末年始の旅館の厨房の忙しさは、まさに「戦場」という表現が、ぴったりだった。
スタッフは、地元の人は勿論、全国各地から沢山の人が来ていた。他の旅館で働いていた人、何かしらの事情を抱えた人、外国からの留学生もいた。
私は、旅館では「山ちゃん」と呼ばれていた。
私はこの旅館での仕事の中で、このお二人にお世話になった。
スタッフをまとめている、
トミ子さん(仮名)とナオさん(仮名)だ。
トミ子さんは、強くて逞しいベテランの女性で何でも出来る方。
ナオさんは、職人気質な男性で、いつも厨房では、怒鳴り散らす様な方。
私は厨房での食事の準備と後片付けの所で、苦労をした。
・食器を準備する
・料理を盛り付ける。
・客室係に届ける。
この3つを短時間で終わらせないといけない。少しでも遅くなると、客室係の女性やナオさんに叱られる。
そして、何より盛り付けをしながら、後片付けもやらないといけない事が凄く自分の中でハードルが高かった。
(マルチタスクが本当に苦手、と言うか無理😅)
しかも、仕事2日目に私は体調不良に陥り、高熱と倦怠感、頭痛の3点セットが揃う中で、自分と戦っていた。
私は、仕事中にナオさんやトミ子さんから
「山ちゃん、そんな慌てなくていいからね。落ち着いてやろう😊」
という声をかけて頂いた。
失敗を積み重ねて来た結果、当時自分の中で、こんな思考回路が出来上がっていた。
「失敗するかもと思う→作業が遅くなる→怒られる→怒られる事が恐怖に感じる→どうしたらいいかわからない→そして本当に失敗する。」
(それが落ち着きのなさの原因だったと思う。まだ何も起こってないのにね💦)
当時旅館の方々にこの事を、言えていたら、自分も周りもどれだけ楽に働けたのかなって今でも思う事がある。
一方で、胸を張って出来る仕事もあった。
それは客室の就寝準備だ。
客室の就寝準備とは、簡単に言うと、お布団を敷きに行かせて頂く事だ。
私は、勤務初日にこれをナオさんから教わった。
ナオさん「山ちゃん。客室にお布団を敷きに行こう😊難しく考えなくていいからな? 」
私はナオさんと2人で客室に出向く。
ナオさん「お客様、お布団を敷かせて頂きに参りました!今日は新入りが入りましたので、同行させて下さいませ!」(私は深く頭を下げる)
お客様「よろしくお願いしますね😊」
ナオさん「山ちゃん! 俺がやってるのをよく見ときな?」
ナオさんは、お客様と世間話をしながら、丁寧に素早く布団を敷いていく。
その時、この私は思った!
「こう言う事なら自分にも出来るかも! しかもここは静岡県だ。お客さんは関東の方が多いんだな。地元や関西の事をお話ししたら、きっと喜んでくださるかも。だからナオさんやり方をしっかり覚えよう! 」
私はナオさんと2人で布団を敷きながら、メモを取る。(実際に体を動かして作業を教わった事と、メモを取らせて頂いたおかげで布団の敷き方はすぐに覚える事が出来た。)
私は次の日から、ナオさんに教わった事を参考に自分から進んでお客様のお部屋に布団を敷かせて頂きにいった。毎日、寮の部屋に戻って、自分の布団を使って練習も欠かさずしていた。
そして私の思った通り、お客様は、関東の方が多く、自分の地元の話や関西の話から会話をスタートさせていた。
とても新鮮だったのか、興味を持って下さり、私もそこからは話を聞く役に徹した。
2週間の間に、私は沢山の宿泊客と布団を敷く事を通して、コミュニケーションを取った。
家族旅行で訪れた方、結婚前に思い出を作りたくて訪れたカップルなど、お客様の状況は様々。
そのお話を、聞かせて頂く事が、この旅館の仕事の中で、本当に楽しいひと時だった。
また、トミ子さんとナオさんには本当にお世話になった。
たまに寮のお部屋にご飯を届けて下さったり私の体調や気持ちの面を、特に気にかけて下さったりした。
このお二方は、とにかく私を可愛がって下さった。
トミ子さんには、客室の掃除の仕方、旅館での立ち居振る舞い、色んな事を教わった。
「山ちゃんさ?君が真面目で頑張り屋なのは、私よくわかるし、山ちゃんは確かによくドジするけど、それも含めて私は気に入ってるんだ😃関西に戻っても負けるなよ! 」。
この言葉は、私の宝物として心に残っている。
ナオさんには、布団の敷き方は勿論、厨房での仕事の仕方を教わった。
「山ちゃん!俺は怒鳴り散らかす事多いけど、不器用でも、頑張ろうとする子は、可愛いって思ってるよ! 忙しい中で、よく頑張ってくれてるね。ありがとうな😊」
そして、私は、ほぼ毎日仕事が終わって、温泉に浸かっていた。
この時間は、自分にとって癒しの時間だったし、勇気を出して修行に来て良かったなぁと思う瞬間だった。海の向こうに、静岡県の沼津市の夜景が、見えてとても綺麗だった。
あっという間に、2週間は過ぎていき、私は関西に帰る日を迎えた。
山本「ありがとうございました!ここでの修行は忘れません! 」
支配人「よく頑張っていたし、君ならきっと出来るから頑張りなさい! 」
私はこの2週間で、布団を敷く仕事が楽しかった様に、人には長けている事が必ずあると学んだ。
そして、「人の話をちゃんと聞く」ってこう言う事なのかと、お客様とのコミュニケーションで理解出来た事も大きかった。
あの時、祖父が
「お前がちゃんとやってたら、見てくれとる人はおるけぇがんばれよ!」
って言ってたのはこう言う事だったのかもと考えただけでも目頭が熱い💦
そして、当時は気付いてなかったが、ベストを尽くしていると、必ず助けてくれる人が現れたり、味方になって下さる方が出来たりするんだなぁと学ばせていただけた素晴らしい経験だったと思っている。