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「話すの面倒くさい」と相談者は言った。

相談員は言葉を介して仕事をする。

相談者が話をしてくれるから、成り立つ。
その相談者が、「面倒くさい。話したくない」と言ってきた。

「面倒くさい」と他者から面と向かって言われることは、日常でそうそうないだろう。
思春期のお子さんなどは例外だが。

面倒くさいと言われ、もちろん、面食らった。
けれどもその奥にあるものはすぐに察知できた。

実は「面倒くさい」といきなりシャッターを下ろされる直前まで、楽しく話をしていた。
相談者はイキイキとしていた。

この相談者は身近な人との人間関係でトラブルを抱えている。
「面倒くさい」となったのは、一本の連絡が相談室に入ってからだ。その連絡は、トラブルの張本人から。
連絡事項が伝えられると、相談者はガラッと面談の態度を殻に閉じこもるように変えた。

私との面談中に発せられた「面倒くさい」という表現は、一瞬にして問題を抱える現実に引き戻されてしまったために、一気にエネルギーを引き抜かれたかのように起こったようだった。
日頃感じている絶望感や無力感、そういったもののやり場として「面倒くさい」という言葉が選ばれたように思う。

言葉じりよりもその奥にぐちゃっと絡まってる表現できない「何か」。
そこにフォーカスを当てることで、言葉じりに負けない面談ができるように思う。
そう、負けないことが大事だ。
飲まれそうな強い表現とは度々出会う。
文中の相談者との旅は、始まったばかりだ。

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