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チョッパリ狩り(2)
その日私は衝撃を受けた。
必ずや勝つと信じていた我が国の軍が憎きK国の軍に負けたというのだ。信じられない。
正直気が動転したし、きっとK国がせこい手を使ったんだろうと思った。あのK国のことだ真っ当に戦うとは思えない。
私はいわゆる右翼と呼ばれる思想を持っていた。
学生の頃からそういう団体の活動に参加してたし、社会人になってからもそういう政治家を支持していた、そのため、自分の国の素晴らしさに疑問を抱いたことも、他国よりも劣っていると思ったことも一度もなかった。だからこそこの結果は受け入れられなかったし、これからどうなるんだろうととても不安でしょうがなかった。
「そしてこの世からチョッパリを一匹残らず排除し、絶滅されることを誓います!」
ニュースの中継でK国大統領のこの発言を聞いたとき、私は動揺した。何を言っているのか意味がわからない。チョッパリ??猿以下??一匹残らず排除する??頭の中をたくさんの疑問が駆け巡る中、
ドゴンっっ
鈍い音がして自宅のドアがこじ開けられる。
「K国軍だ!チョッパリはどこだ!!いるんだろ!わかっているぞ!!」
屈強なK国軍兵士2人の姿が現れた。咄嗟に危機を感じた私はなんとかその場から逃げようとしたが遅かった。
「待て!!チョッパリが人間から逃げれると思ったのか??はははは!!笑わせてくれる!!」
「安心しろ、お前はK国様が責任を持って駆除するんだ。チョッパリとしては本望だろ」
そう言って私を摘み上げ、拘束する。
「やめろ!離せ!!人間だぞ!人権があるんだ、日本政府が黙ってないぞ!!」
「ん?なんかわめいてるな、お前分かるか??」
「いや、さっぱりw動物の言葉なんてわかるわけないだろ、お前自分のペットと喋れんのか?」
「それもそうか、わるかったよ。それにしても、何で俺たちの先祖や世界中の人たちはこれを人間と同じだと思ってたんだろうな?」
「まあ、まだそこまでの被害も出してなかったし、人間の真似を一生懸命してる姿が面白かったからおよがせてたんじゃねぇの?」
大きな笑い声が響く。
「クソっ!やめろ!離せーー!!」
「にしてもコイツうるせえな!」
ボゴスッ!
鈍い音ともに俺は意識を失った。
目を覚ましたとき、俺は知らない薄暗くて隔離された施設で目が覚めた。薄汚い場所でそこには老若男女関係なく俺とよく似た境遇の大量の日本人が押し込まれていた。
「出してくれー!!」
「ふざけんな!ここはどこなんだよ!」
「うぇーーん、ママぁ!パパぁ!」
色んな人の叫びが部屋中に響き渡る
ギィぃぃ!
不愉快な金属音とともに壁が倒れ、突如として視界が開ける。
するとそこには、夜空になびく太極旗と大勢のK国軍兵士と巨大兵器、さらにはさっきまでの部屋によく似た建物が至る所に見られた。きっと、日本中のひとがここに集められているのだろう。
そんなことを考えていると、K国語でないか叫び、長官のような男が手を振り下ろす。
バァンっ!
乾いた音がした。
これが例のチョッパリ狩りだと気づく暇もなく、哀れなチョッパリ達はこの世から姿を消した。
「このチョッパリ狩りによって、世界を苦しめた害獣、チョッパリは全て駆除され、絶滅したんです。」
K国のとある小学校の教室で教師が生徒の前でそう説明する。この授業を受けていた若き日の天才科学者パク・シウが残されたDNAからチョッパリを復活させ、牛や馬にかわり広く家畜として運用されるようになるのは、これからさらに数十年先のことである。