面白いのは百鬼夜行シリーズだけじゃない!『巷説百物語』
数年ぶりに京極夏彦先生の最新作が出ましたね。正式名称ではないようですが京極堂シリーズと呼んだ方が分かりやすいかもしれませんね。
『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』や『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』等は映画化、アニメ化やマンガ化と様々な展開をしているのでどれかを観たり読んだりして作品の存在を知っている方も多少いるのではないでしょうか。
最新刊が出た今なら京極堂シリーズを一から読んでみようかなと思っている方も少なからずいるはず。
ところが、こちらのシリーズはかなり巻数が出ているうえに一冊がめっちゃ長いんです。
そしてわりと重いです。内容も物理的にも。
ありがとう分冊版。
読もうと試みたけど数ページで挫折する、というのはあまりにも惜しい…
長いうえにややこしい話はちょっとな…という方には入門編も兼ねて『巷説百物語(こうせつひゃくものがだり)』シリーズはいかかでしょうか。
比較的読みやすいしシリーズもまだ短い方ですよ。もちろんしっかりと京極夏彦要素をたっぷりと含んだ安定の面白さがあります。
百鬼夜行シリーズと比べたらまだ短いです。
どのような内容か簡潔に言うと…
妖怪に因んだ話を利用して事件を解決する時代小説
です。時代小説と言っても堅苦しくないので大丈夫、警戒しないでください。
そして主要な登場人物は一部を除いて皆小悪党。
ここが重要です。
演技も話も上手い小悪党達が善人悪人読者関係なく人の心理を巧みに利用して現実に寓話を混ぜて不思議な物語に仕立て上げて騙す…といったお話です。
その小悪党集団でも1番目立つ「小股潜りの又市」
という登場人物が文章から滲み出るいい男感とニヒルな感じがカッコいいです。
嘘や小細工が上手い小悪党と言っても人を陥れて金稼ぎをしたり楽しむタイプではないのもミソですね。ちなみに小股潜りというのは甘言をもちいて人を騙す詐欺師とかそんな感じです。
勿論こういう集団に欠かせない口が悪い爺さんや色っぽい美人もいます。
なにげない日常の中にするりと又市達と妖怪が入り込んでくる。そんな物語です。
今回はどこに妖怪が絡んでくるのか?
それを予想するのも面白いんです。
何かしらの仕掛けがあると分かっているはずなのに
「なんだか不可思議だけどまぁいいか」
となってしまい、
最後の最後で仕掛けの裏側を知ってようやく
「なんだ、そんなことだったのか」
と思わせられてしまいます。
そこが本作が持つ最大の魅力です。
時代物は肌に合わないな…という方には
『ルー=ガルー 忌避すべき狼』はどうでしょう。
近未来で学生生活を送る少女達が主人公のSF作品です。SFですがミステリー度合いが高いです。最初こそ設定が独特で取っ付きにくいな…と感じましたが、読み進めていくと全くそれが気にならなくなるくらい面白かったです。
改めて調べたら京極夏彦先生が書いた色んな作品が知らないうちにメディアミックスしており驚きました。
かなり前に『魍魎の匣』のアニメを見た時は絵の雰囲気が漫画版のおどろおどろしい感じとは逆で驚きました。
驚きましたが、序盤に出てくる少女達の美しさや儚さが際立ち良いなと思いました。
アニメ版と漫画版、どちらの絵柄も独自の良い世界観を持っておりどちらも好きです。
もし京極夏彦シリーズを読み始めるのなら出た順ではありませんが『魍魎の匣』から読むのが私のおすすめです。第一作目『姑獲鳥の夏』は結構パンチが強いので『魍魎の匣』からが良いと思います。
『魍魎の匣』も十分刺激的ですけどね!
年末年始は京極夏彦の世界にどっぷりと浸かるのを悪くはないじゃないでしょうか。
それでは今回はこの辺で。さようなら。