日常
おうちカフェテラスなんて思いついたせいで、今日から寒くなると知っていたのに今朝もうっかりせっせと支度をしてしまった。
支度をしながらうすうす気づいていたけれど、やっぱり暖かいコーヒーを飲んだからといって、冬の早朝に薄いコーデュロイのパジャマの膝が温まるわけはない。
小さいひざ掛けをしたからといって、やっぱり腰やお尻は冷え冷えした。
楽しみも臨機応変でなければ、楽しみどころか歯磨きのようなただの習慣の一つになりさがるということに、今更気が付いた。よし、オープンカフェは気温次第で休業だ。
そう決心し、でも今日はせっかくだから飲み切っちゃおうと、苦行の様に冷めかけのコーヒーをすすり、鼻水をかみ、イスから伝わる冷気を感じていたら、数年前に日本語教師の資格を取ろうと文学部に通っていた時のことを思い出した。
あの時、私は元夫から逃げて台東区のシェルターで生活しながら、すでに入学してしまっていた大学の授業をリモートで受けていた(コロナ禍に感謝しながら)。
都会の図書館はフリーWi-Fiがあって、その上コンセルジュのような物腰の柔らかいイケメン司書までいたりするので、マスクをした人々で、平日の昼間も混んでいた。
そして図書館通いで始めて迎えた終末、やはりリモートで、授業と試験を受けるために訪れたときは、パソコンが使える学習スペースの整理券を待つ人々で行列ができていたのに驚いた。
えー!なんで?都会にはこんなに勉強熱心な人が、毎週末図書館に押し寄せることになってるの?
そんなこととは露知らず、平日同様にWi-Fiのないシェルターを少しだけ早めに出発し、授業までは勉強しながら待てばいいかとのんきに思っていた私は、その列の長さに驚愕した。でもそんなことも知らない田舎者だとバレるのが嫌で(誰に?)、わけ知り顔で最後尾に並んだ。
のだが、案の定、整理券は手に入らなかった。
そこで、土地勘もなく、他に適当な場所を探して始業時間までにたどり着く自信もなかった私は、しかたなく、誰もいない図書館の、広いデッキの冷たい鉄製のテーブルとイスで授業と試験を受けた。
雪がちらついてきた。
年末の寒空の下では、お尻だけでなく、猫足の素敵なアイアンテーブルに乗せた肘からも全身の体温が吸い取られる。
それでも教授の講義を一言も聞き逃すものかと一心不乱に、かじかむ指でパソコンを打っていたとき、私は心の中で元夫に毒づいた。
色々毒づいた。
あ~、あの時は自分で自分を哀れんだなぁ。
でも、あれだってもしかしたら、支払ってしまった受講料さえ諦めれば、また次の機会に同じ授業を受ければよかっただけかもしれない。
成績にさえこだわらなければ、一時間くらい休んだって単位はもらえたはず。
でもなぜかあの時の私は、最短の2年で、そして自己としては可能な限り良い成績で文学部を卒業しなければ、それは元夫に負けたことになると思いつめていた。
ま、あの頑なさもやっぱりちょっとアホみたいではあるが、おかげで今の仕事を早めに始めることができたな。
ADHDも役に立つことはあるにはあるのだと思う。
でも、歳と共にそれはコントロールしなければ、時に健康にもよくないね。
肝に銘じよう。いつも自分を客観視すること!コーヒータイムは苦行にしないこと!