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守霊宿
心霊スポット。
みんな誰しも興味本位や罰ゲームなどで行ったことはあるだろう。そこは過去の事件によ、深い念を持ち続ける霊たちの巣窟である。しかし全員悪い霊でもない。人のように思考や行動が違うものもいるのです。
真夏の蒸し暑く、暗い山の中を車を走らせる者たちがいた。半袖半パンの男が2人と半袖スカートの女は、ここら辺じゃ霊が出ると噂の廃墟に向かうのであった。
「皆さんこんばんは。今大人気ミュージシャン。マスカットパインのギターのタケルでーす」
マンスカットパインは、最近TVやネットで若い層に人気のバンドである。
「もうすぐ、夏も終わりに近づく。今回はジエンドオブサマーという事で、廃墟に向かいまーす」
タケルは助手席に座り、スマホ片手にインスタライブを開きながら元気よく挨拶をした。
タケルは運転席の方に、スマホを向け「こちらは、女は皆惚れるイケメン。ベースのナオくんでーす」
ナオは、照れながらスマホにコクリと首を振り手を振った。「こんばんは〜」
タケルは後部座席に座る女を映し「そしておまちかね。一度聴いたら中毒性マックスの歌声、みんなのアイドル。シロナちゃんでーす」
シロナはムスッとした顔をし、首を横に向けた。
「ふんっ、別に映ってあげてもいいけど。私が出ないと、どうせ人集まらないでしょ」
シロナは不機嫌な様子だ。それもそのはず「ごめんねーー、無理に頼んじゃって。今日はスッピンだもんね〜。でもシロナちゃんのおかげでもう4000人も集まったよ」
「当たり前でしょっ。私を誰だと思ってるのよ。そんじょそこらの軽い女じゃないの。だからすっぴんでもマスクは徹底してるのよ」
シロナは怒り気味であるが、インスタライブのチャット欄は普段見れないシロナの姿に興奮気味である。
ナオは、そんな二人を横目にクスッと笑った。そして喋り出した。
「もうすぐ、着くから行ける準備しておいて」
「おうっ、わかった」「ようやく着いたのね」
着いた先は、暗闇で見えづらく唯一見えたのがでかい建物が立っているということだけだ。
3人は必要な物を持ち、車から出て辺りを散策した。建物の周りには雑草や苔がびっしり生えており、かなりの年数が経ってるようだ。
タケルは中が気になり、一目散に走っていった。
「待ってよ〜」
2人もその後を追う。
しかし、タケルはドアの前で立ち止まった。どうやら、ドアはかなり古いもので苔がついて開かないのである。
中々開かないので、力づくで開けようとタケルはドラ目掛けて思いっきりタックルをした。ドアは鈍い音と共に開いた。
『入ってこないで、入ってこないで』
するとどこからか不思議な声が聞こえてきた。
「何だ⁉︎ この音⁉︎」
タケルはビックリし、ライトで辺りを照らした。しかし何もいない。
「ビビらせるなよタケル〜。そんなの今時古いぞ〜」
しかし他の2人は笑うように言った。どうやら何も気づいていない様子である。自分だけ悪い呪いにかかったのかなと、思ったが特に別状はなかったので安心した。
そのまま探索していると、使い古された物や今じゃかなりレアな骨董品など様々な物が落ちていた。
その中でも気になったのが、大部屋に張り出された大きな絵だった。父母娘の3人家族での絵だ。
「どうやら過去に住んでいた者の絵だろうな。一体何があってこんな廃墟見たくなってしまったんだ。」
少し切ない気持ちになったが、気を取り直してあたりの散策を続けた。
「何もないみたいだな〜」
ナオは期待していた心霊体験や物珍しい事がなく、だんだん飽きてきた様子だ。
「よしっ、この絵を背景に写真を撮って帰ろう」
ナオは、スマホを手に取り2人を撮影し取れた写真はインスタライブ中に視聴者見せた。
「何か変化ある? 何もないよね」
ナオは声を低くしていった。
「アンタたちが行きたいっていうから来たのに〜、気分上げなさいよ。レディーの前ではいつも全力よ」
「はい〜」
シロナの声はナオには届かなかった。
すると、さっきまで動きの遅かったチャット欄が物凄いスピードを上げ出した。いつのまにか同接2万人を超えている。
何が起こったのか戸惑いながらもコメントを読む。
すると「あの絵の家族1人減ってるよね」「これって心霊現象?」「ついにきたか〜!」
コメントは、心霊写真だと盛り上がっている。見てみると確かに1人減っていた。本物の絵を見るも全員揃っている。廃墟は不思議な事も起こるもんだ。そう思い帰ろうとした。
するとまた不思議な声が聞こえた。
「見たわね〜見たわね〜見たわね〜〜」
それは人間とは思えない、おどろおどろしい声だった。
タケルたちは、怖くなり一刻も早くここから出ようと出口まで駆け抜ける。
すると後ろから世にも奇妙な人間が追ってきている。それは、さっき見た写真の家族の内の1人の少女だった。向こうは宙に浮いたままどんどん駆け寄ってくる。
「ヤバい、ヤバい、追いつく」
必死で逃げるも向こうの方が、早い。タケルたちは、玄関前まで走り抜けそのままドアをタックルしぶっ飛ばした。さっきまで着いてきた少女は追うのを止め一言「別にいいもん。私にはパパとママがいるから」そう言い帰っていった。
タケルは汗だくになりながらも、帰ってくる事ができた。
「ナオっ、シロナっ、ここやっぱり幽霊出るんだな。俺怖すぎてオシッコちびりそうになったよ〜」
タケルは安心した声で言った。
すると2人は何の返事も返さない。
「どうしたんだっ、2人とも。俺たち何と帰ってこれたんだぜ」
タケルは必死に呼びかける。
「そうだね、帰ってこれたね。そしてまた帰ろうね」
そう言い振り返ると、それはあの絵に描かれていた父母の顔だった。タケルは驚いて後ろ倒れしてしまった。
「怖かったよね。怖くならないようにじっくり教育してあげよう」
「オシッコのおしめは私が替えてあげるわ」
タケルは車に飛び乗り、飛び去ろうとする。しかし、車の鍵はナオが持っていたので動かせない。
「欲しいのは、コレかな〜〜」
不敵な笑みを見せながら言った。そこからの事は、自分でも覚えてはいない。気づいたら自分の家で眠っていた。ただ分かる事としては、ポケットに入っていた写真に家族と自分、ナオ、シロナの顔が追加されていた。
霊というのは、時に人をも変えてしまう場合もあります。あなたたちも遊び半分では行かないようにしましょう。