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ふしぎなたいこ

 むかしむかし、琵琶湖という湖のそばに、源五郎さんという人が住んでいました。
 源五郎さんは、ふしぎなたいこを持っていました。このたいこをたたきながら、
「鼻、高くなれ」
 というと、鼻がどんどん長くなり、
「鼻、低くなれ」
 というと、鼻がどんどん短くなるのです。

 ある時源五郎さんは、いったいどこまで鼻がのびるか、ためしてみたくなりました。
 源五郎さんは上を向いてねころがり、たいこをたたきはじめました。
 トン、トン、トントコトン……
「鼻、高くなれ。鼻。高くなれ」
 鼻はどんどんのびて、人の背の高さほどになりました。
 トントコトン、トントントン……
「鼻、高くなれ。鼻、高くなれ」
 家の屋根より高くなりました。それでも源五郎さんは、たいこをたたくのをやめません。
 トントコトントコ、ストトントン……
 鼻の先が雲をつきぬけても、まだのび続けます。いったいどこまでのびるのでしょう。すると突然、鼻がのびなくなりました。
「何かにつっかかったみたいだな」

 今度は、鼻を短くすることにしました。
 トントントン……
「鼻、低くなれ。鼻、低くなれ」
 たしかに鼻は短くなりました。でも、鼻の先が雲の上でおさえられているらしいのです。鼻が短くなったぶんだけ、源五郎さんの体が浮きあがります。
 トントコトントン……
「鼻、低くなれ。鼻、低くなれ」
 それでも、源五郎さんはたいこをたたき続けます。源五郎さんはどんどん浮き上がって、とうとう雲の中にすいこまれました。
 しかし、鼻はもっと高いところまでのびていたのでした。
トントコトントントコトトトトトン……
「鼻、低くなれ、鼻……」

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