ネズミにだまされたネコ
むかしむかし、まだ人間もこの世にいなかった、ずーっとむかしのお話です。
ある年の暮れのこと。神さまが、山の上から、ふもとの動物たちを見ていいました。
「そうじゃ、来年の正月からは、みんなに何か決まった仕事をあたえるとしよう」
神様はさっそく動物たちに次のように知らせました。
『一月一日の朝、わたしのいる山へきなさい。先にきた者から12番目までを順番に、その年の王さまとしよう』
動物たちはみんな大はりきりです。
ところが、のんびり屋さんでねぼすけのネコは、昼ねをしていたので、このことを知りません。
昼ねから起きると、あくびをしながら友だちのネズミに、集まる日を聞きました。
「ああ、一月一日の次の日の朝だよ」
ネズミはわざとうそを教えるのでした。
さて、当日のことです。
まずはウシが、
「わしは足がおそいからそろそろ出かけよう」
と、まだ暗いうちに家を出ました。
おやおや? ウシの背中にちょこんとのっているのは? なんとネズミでした。ちゃっかりとウシの背中にのっています。
山のてっぺんについた頃、朝日がのぼってきました。初日の出です。
その時、それ! ネズミは1番にとびおりて、最初に神さまの所へつきました。
ネズミはこの年の王さまになりました。ウシは2番目で、来年の王さまとなりました。
それから次々に動物がやってきます。トラ、ウサギ、リュウ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、ニワトリ、イヌ、イノシシの順でした。
神さまに、それぞれがみんな順番に、再来年からの王さまになることを告げられました。
次の日の朝、ネコはネズミに教えられた通り、山のてっぺんにいきました。
すると神さまは、
「おやおや、これはずいぶん遅かったじゃないか。残念だけれど、昨日で十二番目までの動物は、決まってしまったよ」
とやさしくネコをなぐさめていいました。
さあ!それを聞いたネコはもうたいへんです。
「ネズミめ!うそを教えたんだな!」
ネコはカンカンに怒っています。
それからというもの、ネコはずっとネズミを見るとおいかけるようになったそうです。
そして、もう二度とねぼけないよう、ネコはいつも前足で、顔をこするようになったんだとさ。