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世界自然遺産ンゴロンゴロでアフリカの大自然に圧倒される

2019年3月27日 午前8時半 アルーシャのホテルを出発。

私が乗り込むのはサファリ仕様のトヨタのランドクルーザー。

車高も高く窓からの視界も良好だ。

アルーシャからンゴロンゴロまでは車でおよそ3時間、西へ180kmの道のり。

アルーシャの街中を進む。

周りにはアフリカの人々しかいない。

道路沿いには大きなパラソルの下で雑多な露店が軒を連ね、車のすぐそばを自転車やらバイクが追い抜いて行く。

狭くて雑多な街中の細い路地では車の方が移動が大変だ。

かといって外を歩く勇気も気力もない。

一か国目にしてこれだ。私はすっかり怯えてしまっていた。実は私はアフリカはおろかヨーロッパすら行ったことがない。そんな私がいきなりアフリカに来てしまったのだから恐怖を感じてしまうのも無理はない。

ここは日本じゃない。ここに生きている人は日本に住むぼくとはまるで違う世界を生きているのだということをつくづく感じた

アフリカの道をひたすら西へ向かって進んでいく。

アルーシャを離れると、緑豊かな風景からアフリカらしい赤茶色の大地がまた顔を出す。

道の両側には巨大なアロエのような植物やオリーブの木のような植物がたくさん生えている。日本ではまずお目にかかれないような大きさだ。

アフリカの植物には強さと鋭さを感じる。だが、まっすぐに伸びた葉や硬そうな茎からは瑞々しさは感じられない。どこかぱさついているようにも見える。

こういう植物を見ると、いかに日本が水が豊かな土地であるかを感じる。

日本の植物にはこのようなぱさついた、そしてなおかつ強く鋭い植物というイメージはそぐわない。

どこか柔らかでしなやかでしたたかで。

そんなイメージを僕は日本の植物に抱いている。

ーアフリカの植物ってたくましいですよね。強いというか鋭いというか。

「今はまだ乾季なのでこうですが、雨期が来ると緑でいっぱいになりますよ。私はその景色が大好きです」

ガイドさんの言葉にはっとする。

アフリカだってずっとこの天気が続くわけないではないか。

でもまあ、今回はこの季節の植物たちをしっかり見れたのだからそれでよしとしよう。

そしてンゴロンゴロへあと1時間というところまで来ると道が二手に分かれた。

その一方がンゴロンゴロへ向かう道であるのだが、なんとその道は日本の援助で12年前に舗装されたそう(※2019年当時)。


しかもそのプロジェクトの中心が鈴木宗男氏であったというから驚きだ。

この道を1時間走り続けるとようやく本日の目的地、ンゴロンゴロの入り口に到着した。

ちなみにこの入場ゲートも日本の援助で作られている。中の展示室にあるンゴロンゴロ周辺のジオラマも日本の援助だそう。

日本が発展途上国に援助をしているというのは、聞いたことがある程度にしか私の中にはなかった。

だが実際に現地でそれを目にすると、日本と他国との関わり合いがあることを実感する。

さあ、いよいよンゴロンゴロへ。

ンゴロンゴロは火山の噴火によって出来上がったカルデラだ。

火山の噴火によって出来たクレーターを外輪山が完全に囲んでいる。

例えるなら、お椀の形をした地形。

お椀の淵は標高約2400mで、お椀の底は約1800m。600mの標高差があり、お椀の淵はかなりの急斜面だ。崖と言ってもいい。

そしてお椀の淵部分は南北に16km、東西に19km広がっていて、お椀の底部分の面積は310平方kmにも及ぶ。

つまり、とんでもない広さのお椀なのだ。一体東京ドーム何個分なのだろう。

そして、この崖に等しい急勾配のお椀の淵が外界とお椀内部を遮断しているため、クレーター内部は外界から独立した世界を形成している。だからこのンゴロンゴロは動物の楽園と呼ばれているのだ。

外輪山から眺めたクレーターは絶景と言うにふさわしい。

手前から広がる緑色のグラデーション、そして左に視線を向ければ湖も見える。はるか向こうに見える外輪山と空の景色もカルデラの奥行きを感じさせる。

この外輪山に囲まれた広大な平原に、大量の野生動物が暮らしているのだ。

さあ、いよいよクレーター内に下りていく。すぐそこはもう、動物の楽園だ。

外輪山からクレーターに下りると、そこには遮るもののない平原が広がっている。

もうすでに動物が映り込んでいるが、こんなものではない。

ンゴロンゴロをなめてはいけない。

少し進めばあっという間にこうである。

想像してほしい。

これはあくまで車の正面方向からの写真に過ぎない。

四方八方いたるところに何かしらの動物がいるのだ。

サファリが始まった直後はシマウマやヌーの群れに喜んでいた私であったが、30分もすればすっかり驚かなくなってしまった。

あまりにも普通に動物がいすぎるため、感覚が明らかに麻痺してしまっている。

まあまあそう言わずにと気を取り直して今度は水辺に寄ってみる。

シマウマやヌーの群れと共にハイエナが昼寝をしているところを発見する。

若干テンションが回復したことを実感。

そしてしばらくすると道の真ん中に薄茶色の大きな動物を発見。

そう。

ライオンである。

ガイドさんによると、これは待ち伏せのポーズらしい。

サファリカーは慎重にライオンに近づいていく。驚くべきことにライオンはサファリカーにはまったく関心を持っていないようで、まるで私達がいないかのようにじっと獲物の方向を見続けていた。

さあ、ライオンの後ろまでやってきた。車から手を出せばがぶっとやられる距離だ。

このライオンの視線の先、水地の辺りからこちらに向かってくるシマウマを待ち伏せしていたらしい。

しかしシマウマはすでにライオンの気配を察したらしく、はるかかなたに逃げ去ってしまっていた。

ガイドさんによると、ライオンは体が大きいのですぐに疲れてしまう。だからライオンが獲物を追える距離はせいぜい20mから30mしかないとのこと。

だからこそ獲物が近くに来るまで待ち伏せして一気に仕留めるのだそうだ。

でも、私は思う。

それにしたって射程距離20mは短すぎやしないか?

この大平原で、南北に16km、東西に19kmもあるこの大平原で、20mの距離までばれずに接近するなんて本当に出来るのだろうか。

案の定、今現在の乾季のンゴロンゴロでは背の高い草が生えていないため、ライオンの待ち伏せに適した場所がほとんどない。

乾季はライオンにとっては受難の時期らしい。

百獣の王も苦労人なのである。

とはいえ、一度射程距離まで近づけばその攻撃力は脅威だ。

草食動物は必死になってライオンの居場所を常に探している。

そのせめぎ合いがこのンゴロンゴロで日夜行われているのであった。

もし人類の祖先がこのような環境下で生きていかなければならなかったとしたらどうだっただろう。

やはりシマウマと同じように、いち早くライオンの居場所を見つけることが必要となっただろう。

シマウマにはよく効く鼻と目、そして脚力がある。

うん。ライオンから逃げるには十分な能力だ。

では、人間は?

樹上の生活者だった人間にはどうやらそのような力はなかったようだ。

だからこそ、一人一人が弱くても集団の結束力を高めたり、知性を用いることでライオンの射程距離の20mから逃れようとしたのではないか。

ライオンを見た後もしばらくクレーター内をサファリ。

サファリの終わり頃にはバッファローも象の群れも、サイも見ることが出来た。

ンゴロンゴロでそれらをまとめて見れるのは運がいい方らしい。

さあ、いよいよ明日はオルドバイ渓谷だ。


今回の記事は以前当ブログで公開した以下の記事を再構成したものになります。

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