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パリのゾラゆかりの地を訪ねて~『ナナ』の劇場やファンにはたまらない様々なスポットをご紹介


はじめに

今回の記事では私が尊敬する作家エミール・ゾラの代表作『ルーゴン・マッカール叢書』ゆかりの地を紹介していく。

だがそのお話を始める前にまずは「なぜ私がエミール・ゾラという作家に出会ったのか」を簡単にお話ししたい。


エミール・ゾラ(1840-1902)Wikipediaより

私がエミール・ゾラを読み始めたそもそものきっかけもやはりドストエフスキーだった。ドストエフスキーがフランス文学、特にバルザックの作品に強い影響を受けていたのはこれまで当ブログでお話ししてきた通りだ。ドストエフスキーは彼らフランス文学を通して19世紀中頃のパリについて大いに想像を膨らませていたのである。

そしてそんなドストエフスキーが初めてパリにやって来たのは1862年。バルザックの描いた時代ははるかに過ぎ去り、フランス第二帝政真っ盛りの時代だった。この時のパリはナポレオン三世による積極的な経済政策によって一気に消費資本主義的ライフスタイルが広がり、まさに大変動の様相を呈していたのである。

言い換えれば、人々の欲望を刺激し、「欲しい」という感情を意図的に作り出していくという商業スタイルが確立していったのがこの時代だった。

そしてドストエフスキーはそのようなフランスに対して、色々と物申していたのだ。彼の『冬に記す夏の印象』はまさしくこのような「金さえあれば何でも手に入れることができる」という世界に対する強烈な批判が展開されている。

となるとやはりこの時代のフランスの社会情勢、思想、文化を知ることはドストエフスキーのことをより深く知るためにも非常に重要であると私は考えたのだった。

「第二帝政期のフランスをさらに深く知るには何を読めばいいだろうか…」

そう考えていた時に私が出会ったのが、まさにエミール・ゾラだったのだ。

そして以下の「『居酒屋』の衝撃!フランス人作家エミール・ゾラが面白すぎた件について」の記事で詳しくお話ししたのでここでは書かないが、私は彼の代表作『居酒屋』を読んで「こんなにすごい作家がいたのか!」と度肝を抜かれてしまったのである。

私はこの作品の続編の『ナナ』も読んでみた。するとこの作品もすごいのなんの!

これはもう決まりだ。ゾラの主要作品『ルーゴン・マッカール叢書』を全部読むしかない!

というわけで私はエミール・ゾラにどっぷりとはまることになったのである。

さて、ゾラの作品といえばここで挙げた『居酒屋』『ナナ』『ジェルミナール』などの作品が日本では有名だと思う。

だが、これらの作品は単体の作品として出版されてはいるものの、実は全20巻からなる『ルーゴン・マッカール叢書』という一続きの作品の中の物語なのだ。ゾラの天才的なところは、それぞれが単体の小説として読めながらも、全てが絡み合って大きな作品群として成立させている点にある。ゾラはこの20巻を通してフランス第二帝政のあらゆる人々を描こうとしたのだ。このことについては以下の記事で詳しくお話ししているのでぜひご参照頂きたい。

さて、前置きが長くなってしまったがこれよりパリの『ルーゴン・マッカール叢書』ゆかりの地を紹介していきたい。


『ゾラの肖像画』のあるオルセー美術館。『制作』に描かれる画家たち

セーヌ河畔にあるオルセー美術館。ここには印象派の作品がたくさん展示されている。


その中でも何と言っても私が見たかったのはマネの『ゾラの肖像画』だ。


この絵は直接『ルーゴン・マッカール叢書』とは繋がりはないが、ゾラと印象派の画家たちは非常に強いつながりがある。そしてその中でもセザンヌとは並々ならぬ関係があった。

セザンヌと言えば印象派の巨匠だ。なんとゾラは彼と南仏のエクスアンプロヴァンスの中学校の同級生で、パリに出てからも互いに深い交流を持ち続けていたのだった。印象派の発展のためにゾラは美術評論を数多く書き、ゾラ自身も天才画家セザンヌから多くのことを学んでいたのであった。いわば二人は芸術界を切り開く盟友だったのだ。(※ゾラと印象派については以下の本がおすすめ)

その繋がりがあったからこそゾラの『制作』という作品が生まれたのである。

この美術館にはそんな印象派の絵画が数多く展示されているので、ゾラファンにとっても見逃せないスポットとなっている。


ナナが出演していた演劇場、「ヴァリエテ座」


こちらはゾラの代表作『ナナ』の主人公ナナが出演していたヴァリエテ座。

大通りに面していてかなり人通りも多い。現在でも営業している。残念ながら演劇のチケットがないと中まで入れないので外観のみ。

ここでナナは次々と男を虜にし、破滅させていった。

『ナナ』に関してはロンシャン競馬場も訪れたかったのだが時間の都合上行けず。無念。


『ボヌール・デ・ダム百貨店』のモデル、ボンマルシェ

ボン・マルシェは『ボヌール・デ・ダム百貨店』のモデルになったデパートで、デパートの起源として知られている老舗。

ゾラは現場での取材を重要視した作家で、この小説の執筆に際しても実際にボン・マルシェやルーブルなどのデパートに取材に出かけ、ほぼ1カ月にわたって毎日5、6時間みっちりと取材と見学を重ねたそう。

1852年にデパートとしての形が出来上がった老舗ということで、時代を感じるものを想像していた私は中に入ってびっくりしてしまった。想像よりもはるかにモダンで、高級感がありながらも気詰まりを感じさせない雰囲気だった。

このボン・マルシェについてはフランス文学者鹿島茂先生が『デパートを発明した夫婦』という本を出している。

この本がとにかく面白いのでぜひおすすめしたい。もちろん、ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』も叢書中ピカイチの面白さなのでぜひぜひご覧あれ。


おわりに

今回の記事は以前当ブログで紹介した以下の記事を再構成したものになります。

この元記事ではさらに『パリの胃袋』のレアールや『獣人』のサン・ラザール駅、『金』の証券取引所などゾラ作品の舞台となった場所をご紹介しています。興味のある方にぜひおすすめしたいスポットです。

『ルーゴン・マッカール叢書』はとにかく面白いです。そしてこの作品群ほど私たちの生きる現代社会の仕組みを暴き出したものはないのではないかと私は思います。

ぜひエミール・ゾラという天才の傑作を一冊でもいいのでまずは手に取ってみてください。そしてその強烈な一撃にぜひショックを受けてほしいです。それほど異常なパワーがある作品群です。

私の個人的なおすすめ作品を紹介した記事を以下の関連記事に掲載していますのでぜひこちらもご覧になって頂ければ幸いです。

以上、「パリのゾラゆかりの地を訪ねて~『ナナ』の劇場やファンにはたまらない様々なスポットをご紹介」でした。


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