シビル・ウォー アメリカ最後の日 感想
TOHOシネマでシビル・ウォーを観てきました。内容があまり日本人には興味を惹かないのか、上映しているシアタールームはかなり小規模。
主役のリー・スミスを演じるのはキルスティン・ダンスト。昔、スパイダーマンのヒロインで見たのが初めての記憶でしたがベテランの戦場カメラマンになってました。時の流れは速い。。
以下、ネタバレ注意
テキサス州とカリフォルニア州からなる「西部勢力」と連邦政府による内戦が勃発した近未来のアメリカ合衆国を舞台に、ジャーナリストたちが大統領にインタビューするため、もうすぐ陥落するという首都ワシントンD.C.へと向かうという話。町山智浩さんのレビューを聞いてたので知ってましたが何で内戦してるのかは全く語られません。保守的なテキサス州とリベラルなカリフォルニア州が連合するというのも、わざと政治的な背景をわからなくさせるための設定だとか。
一番印象的なシーンは CM予告でも抜粋されてましたが 途中で拉致された軍人(?)に銃を突き付けられながら「どの種類のアメリカ人なのか?」と脅迫されるところ。各人、ビビりながら○○州出身、と答えて見逃される中、アジア人だけ狙い撃ちで殺すという、何のことはない、ただ人種差別主義者が戦争に乗じて大量殺戮してるだけ。私もアジア人だから殺されるんか・・・と虐殺される目線でこわー・・・となりました。
本映画ではどういう理由で内戦になっているのか、その背景はまったく語られることなく米国内で殺し合いをしてるわけですが、戦争がトリガーとなって発生する無秩序下では、ある種の人間たちの暴力が解放されてしまう、という戦争そのものよりもその副作用で起きる暴力が怖いと感じます。まあ実際の内戦描いているところもひたすら殺し合いして無抵抗だったり降伏した人もバンバン無意味に殺されて怖いです。かっこいいとかは一切ない。音楽がピコピコいうような戦争に全然あってない音楽が流れてるのも気持ち悪い。さすがA24スタジオ。
主人公たちは車でワシントンDCまで行って、その道中も悪夢ですがアメリカの自然というか、森林だったり畑だったりが本当に綺麗だなと思わせるように撮ってますね。ただそういうシーンに限って音楽がひたすら不快で不穏なので、結局嫌な気持ちになります。つまり約2時間ずっと嫌な気分が続きます。
ラスト、ワシントンDCの攻防戦はまさに圧巻ですが、主人公たちはWFの従軍記者として兵士に密着しながら写真とってますが、これが最前線で撃ち合いしている人らと一緒に行動しているんですよね。これって映画的演出?本当にこんなに近くで撮影しているの?流石に近すぎじゃない?と思ってネットで検索したらひたすら戦場カメラマン渡部陽一さんのお顔が出てしまった・・こんなに近かったら命がいくつあっても足りない・・・
最後のシーン、出発時には半人前だったジェシーが大成長を遂げて、果敢(危険)な撮影してて大丈夫か~と思ったらオイオイ、そうなるのかよと。一流の戦場カメラマンってそういうもんなの?種類が私と違いすぎる・・・でも主人公のリーは、せっかく撮った写真を消去してるシーンがあるんですよね。何で消したのかは語られてないので推測ですが、一度は撮ったものの、彼女なりのモラルに反しているから消したのかなと思うのです。
攻殻機動隊ではアメリカは「アメリカ合衆国」「米帝」「米ソ連合」に分裂しているというフィクションを挟んでて「士郎正宗は変なこと考えるなぁ、そんなの起きるわけないじゃん」と思ってましたが浅はかでしたね。今アメリカでは本当に内戦の恐怖というのがあるんだなと気づかされました。日本から見ると、遠くてよくわからなかったんですが。
映画館で見ると迫力あって面白いですが、とても気分の悪くなる&気が滅入る映画なので、見る際は覚悟して見に行ってきてください。