そこにつくまでに15

 自分の階級がどうやら騒がしい、そしてその中にあの子の大切なやつも含まれてる事を薄々だがわかっていた。
 
 英雄くんがやったやつかぁ
 
 まだ試合は見てない
 
 強いやつらしいけど
 
 やはり、興味は出なかった
 
 しかし巡り合わせというものか、ユウはその男の試合を目撃することになる
 先輩のエキシビションマッチの前座として彼は殴り合いをしていた
 
 木本カズシ
 
 酷い内容だった
 ボクシングとしてギリギリのカタチを保った試合だった。
 それは雪山で遭難寸前の登山者が狂ってしまい熱いと服を脱ぎ捨てる様に似ていた。
 大切なしてきた荷物を捨てて
 フラフラと当てもなく歩いている彼は見るに耐えなかった
 
 
 なんでそんなコンビネーション食らうんだよ
 さっき避けてたろ、ほら
 また、おい。
 
 ユウの関係者が口々に言う
 
 
 ボクシング経験者なら誰でもわかるほど混沌めいた試合
 しかし木本は倒れなかった
 
 
 ユウは黙って思案していた
 
 
 木本は見えている探している
 外側ではなく内側の鈍くなった遠ざかってしまったであろう支配されるべき感覚を手探りで誰からも理解されない方法で
 痛みが導いてくれる場所を探してもがいてる
 
 
 そこじゃないよ
 
 そこにつくまでに
 
 なにかあったんだな
 
 悲しく寂しい
 
 そこは苦しいよな
 
 でも
 
 おれはアンタとはやりたくないよ、
 そこに付き合うのは骨が折れるんだ
 
 ユウはまだボクシングを始めたてた頃に
 迷い込んだ事があった
 ボクシングは今よりもっと下手だった
 下手ゆえに熱があった
 この技術で勝利が欲しく
 この技術を競い合いたかった
 
 しかし不遇にもその時の対戦者はユウとの強さ比べに踏み込んでしまった。
 そしてユウは勝ってしまう
 そして遭難してまった
 試合には勝利して行くが
 帰り道も行く道も見失った
 抜け出すためにいくらかさまよった、そんな中、ボクシングのルールで自分から華麗に勝利を奪った年老いたボクサーがいた
 彼のおかげでユウは遭難から
 帰還できた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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