小説の投稿 #5 「In my life」
第三章
メトロポリス
地面に突き刺さった様な、三角の建物がある。G線上のアリアは、雑踏の混ぜ込まれた風に舞う、その建造物の中は、まさに、シャンペン・スーパーノヴァを試みるには、最高な感じだ。オーボエとオルガンは、果てしなく続く継続とラストを今か今かと待ちわびている。バッハの楽曲は、まさに彼の生活そのものとも言える。そんなことを、思いながらエレベーターで上へ行く、相変わらずスタンをカバンに入れ、この奇妙な学会に出席するのだ。
さあ、スタン…。おとなしくしとくんだ………。
学会がはじまり、ただ歩く人型生物なるものが、現れた。それは、生物ではなく、ただのロボットだった。王立研究機関がやりそうなことだ。すると、ひとりが前に立ち、話し始めた。
皆さまをお招きした理由は、主にエンサイクロペディア・メトロポリスを製作するに際し、そのお力をお貸しいただきたく、お招きをいたしました。
それは、王命なのですか?
隣に座っていた男が訊ねた。
いいえ。我々独自のプロジェクトであります。
ほう、それなら、アゼルトたちが嗅ぎつけているに、違いあるまい。
ぼくは、ふと思った。
ぼくは、席を見渡した。アゼルトたちの振る舞いは、すぐに分かるさ。芝居を隠したていながら、実は芝居染みている。しかし、それが自然なのだと高をくくっている、高慢な態度である。彼らは、手を膝の上に綺麗に置く。席の両サイドに、4人ほど、アゼルトの秘密警察が、いるのが、確認できる。多分、学会も承知しているはずだ。
ぼくは、思わず口を利きたくなったが、じっと我慢していた。なるほど、人が消えたと嘘をつけば、敵は消えたと地下の住人に思い込ませる事が出来るからか。
王の精神病は、本当であろう。多分、あの主催者は、3ヶ月以内に裁判にかけられる。およそ流刑に違いあるまい。それを、利用してエンサイクロペディアをつくるとでも言うのか?
ジョンは、事を把握せしめようと、キョロキョロと目を動かしていた。
学会は最後、警戒していたらしく、すぐに終わってしまった。しかし、ぼくを含めた、80人中、27人に紙が配られた。出口でこっそりと…。
なあ、スタン…。なんだい今のは…。
秘密警察は、そこまで賢くないらしく、まとまって出て行った。まあ、仕方ない。既に異様な雰囲気を漂わせている。同じような素振りをした人間が、席の両サイドに6人もいれば、気が付かれるに決まっている。
6人いたのか。
ジョンとスタンは、三角形の建造物に、シャンペン・スーパーノヴァの調べを聴いた。