民事訴訟法 処分権主義と弁論主義(論証付き)
はじめに
私は令和6年司法試験に合格した者です。
ここでは、私が司法試験を受けるにあたって準備したもののうち、処分権主義と弁論主義(主張原則)について綴らせていただきます(記事はあくまで1受験生が準備したものに過ぎないという批判的な目で読んでいただけたら幸いです)。
論点はさほど多くない(他の論点でその顕れは出るかもしれないが)ので、抑えるべきところをしっかり理解していました。
両原則について
この原則は、両方とも私的自治に根拠を持つ原則であるため併せて整理することをお勧めしています。
処分権主義は訴訟物レベルの話。訴訟物内の話だが、主張がされていないのは弁論主義(主張原則)の話。この辺りをしっかり整理して把握することが大事だと思います。
処分権主義
抑えるべきところ
意義
立退料について
意義
・処分権主義とは、訴訟の開始、判決によらない終了、審判対象の範囲については、当 事者の決定に委ねるという原則。
・訴訟自体をどうこうする、というものに対する概念であり、ストレートな論点で出てくることは少ないが、他の概念を理解するときに、〇〇と私的自治の間を埋める概念として有用。
立退料について
・立退料の事例は、処分権主義のうち、申立拘束原則についての話です。
・申立拘束原則は処分権主義、ひいては私的自治に軸を置くものであるため、原告の意思尊重と被告に対する不意打ちの防止を趣旨としています。
[考え方]
・立退料を原告の損と被告の損を考えるイメージ。
・原告は意思に反するか否かがポイント。この時、現実の意思と合理的解釈によって導かれる意思を区別する方が理解が伝わるはず。
→申立額と格段の相違がない=合理的意思には反しない という関係
・被告は原則、もらえる額への期待は保護されるはず。
→ただし、司法試験に①不意打ちに当たらないうあな十分な事情があれば、②再応訴のめんどくさを踏まえ、適法とする余地あり(誘導次第)
[整理]
・①申し立てた立退料より、高額の立退料の支払いを命じられた場合
→適法(原告の申立てと格段の相違がなければ適法)
⇨立退料を増額しても、なお建物の明渡しを求めるのが原告の意思と言える
不意打ちにならない
②申し立てた立退料より、低額の立退料の支払いを命じられた場合
→不適法
⇨原告の申し立てよりも有利な判決となり、被告にとって不意打ちになる
③立退料を申し立てていないのに、立退料の支払いを命じられたとき
→原則適法か。
⇨明示的に拒んでいるなら不適法
[フォーマット]
1
(1)処分権主義の導出
(2)申立拘束原則の提示と要件
2
(1)問題提起
(2) ……
論証
『処分権主義 口上』
私人間の法律関係は私的自治の原則が妥当することから、民事訴訟においては、その開始、判決によらない終了、審判対象の範囲については、当事者の決定に委ねるという処分権主義がとられている。
『申立拘束原則 導出』
特に審判対象の範囲については、246条において規定されており(申立拘束原則)、その趣旨は、原告の意思尊重と被告に対する不意打ちの防止と言える。
『申立拘束原則 要件』
したがって、申立拘束原則に反するか否かは、①原告の合理的な意思と②被告に対して不意打ちに当たるか、という観点から検討すべきである。
弁論主義(主張原則)
抑えるべきところ
意義
弁論主義の適用-スタンダート
主要事実の適用-規範的要件
主張共通の原則
意義
・弁論主義とは、裁判の基礎となる訴訟資料の収集及び提出を当事者の権限かつ責任とする原則。
→弁論主義の表れとして、主張原則、自白原則、証拠原則がある。
→主張原則とは、裁判所は当事者の主張しない事実を基礎として判決することができ
ないという原則。
・主要事実、間接事実、補助事実の意義をおさえる。
弁論主義の適用-スタンダード
・弁論主義は主要事実にのみ適用される。
・主要事実は請求原因事実、抗弁事実等と理解しておけば足りる。
→つまり、要件事実的整理をすれば主要事実は簡単にわかる。
弁論主義の適用-規範的要件
・規範的要件は、根拠づける具体的事実が主要事実。
・大例外として、公序良俗等の特に公益性の高い規範的要件についてはそもそも弁論主
義が妥当しない(私的自治に委ねられる領域でないから)との見解がある。
[考え方]
・主要事実問題であるとわかった時に、頭は①規範的要件か否か②規範的要件ならば具体的事実があるか否か→あるならば普通の規範的要件という流れ、ないならば公益性が高い規範的要件であることを押し出して大丈夫、とする③いずれにせよ不意打ちand法的観点指摘義務に反しないか、という論点がでる。
主張共通の原則
・弁論主義は当事者間の関係を規律するものではないから、どっちから主張するのでもいい。
[フォーマット]
1
(1)弁論主義導出、主張原則記載
(2)弁論主義の適用対象事実
2
(1)要件事実整理
(2)規範的要件の適用対象事実
3 主張共通の原則
論証
『弁論主義 根拠』
私人間の法律関係は私的自治の原則が妥当することから、民事訴訟においては、裁判の基礎
となる資料の収集、提出を当事者の権能かつ責任とする弁論主義が採用されている。{ここに各テーゼを入れる}
『弁論主義の適用対象事実』
弁論主義が適用される事実は、権利の発生、障害、消滅、阻止という法律効果を直接もたらす事実(主要事実)に限られる。(これは、間接事実が主要事実の存否を推認させるという点で、証拠と同様の機能を有するため、弁論主義を間接事実、補助事実に適用することは、自由心証主義を害することになるからである。
『規範的要件と弁論主義』
ただし、規範的要件については、主要事実を規範的要件それ自体と考えると、裁判所が当事者の主張していない具体的事実を認定することが許されるので、不意打ちの危険が生じ、私的自治の観点から見て適切でない。そこで、規範的要件においては、法的評価の根拠となる具体的事実を主要事実と考える。
『公益性の高い一般条項と弁論主義』
しかし、そのうち公益性の高い規範的要件の判断については、弁論主義の根拠である、当事者の私的自治に委ねることが相当とは言えないので、弁論主義は採用すべきでない。したがって、規範的要件の中でも公益性の高いものについては、これを基礎付ける具体的事実が主張されていなくとも、裁判所は認定できる。
『主張共通の原則』
→原告から、主要事実についての主張がない。
弁論主義は、当事者自治による裁判所に対する拘束を定めたものであり、当事者相互の関係を定めた者ではない。したがって、主要事実の主張は原告、被告のいずれがしたものであっても、裁判の基礎とすることができる(主張共通の原則)。
『訴訟資料と証拠資料の峻別』
〇〇という事実は当事者尋問で証言されているが、これは証拠資料に過ぎず、主張原則から裁判の基礎とすることはできない。