令和5年 予備試験 民法 再現答案
私見
・結果はBでした。再現度はそこそこです。
・時間がとにかくなく、設問2はかなり雑になりました。結果がBなのは意外でした。
再現答案
設問1
1 BはAに対して、本件請負契約に基づく報酬支払請求(民法632条、以下、「民法」は省略)をすると考えられる。
2 これに対して、Aの反論は認められるか。
3
(1)Aは、令和5年7月1日に締結した本件請負契約に先立つ同年6月15日には本件損傷が生じていることから、契約時にすでに修復可能な状態になく、原始的不能であるから、本件請負契約は無効である、との主張をすると考えられる。
(2)しかし、民法は、原始的不能については、危険負担の問題として処理する、としているので、Aの主張は認められない
4
(1)Aは、甲が現に修復されていない以上、Bに報酬支払請求権は生じない、との反論をすると考えられる。この反論が認められるか。
(2)契約の内容は、当事者の意思及び社会通念に照らして決せられる。本問では、BはAに対して、甲が修復可能な状態か聞き、修復不可能である状態であればAの責任である旨の合意の元、本件請負契約を締結している。したがって、本文において、甲の保管状態が悪かったことによって、修復不可能な状態であったことは、Aの「責めに帰すべき事由」(536条2項)にあたる、といえる。したがって、Aは報酬の支払いを拒むことはできない。
(3)もっとも、報酬支払請求権は仕事の対価に対して生じるものである以上、甲の修理をできていないため、250万円全額の請求は認められない。
(4)ただし、Bはすでに、甲の修復に要する材料費等の費用一切として40万円支払っている。この支出は、Aが甲が修復可能であるとの説明を行ったからであり、信義則上、仕事として認められる。
(5)以上より、BはAに対して、40万円の範囲で請求することができる。
設問2
第1 (1)について
1 Dの所有権が認められるか。
2 DはBとの間で令和5年6月2日に売買契約(555条)を締結している。しかし、Cは同月1日に乙の返還を請求しているから、Bは乙の販売権限を失っている。よって、DはBから所有権を取得することはできない。
3
(1)即時取得(192条)が認められないか。
(2)Dは売買契約という「取引行為」(同)を行っている。Bが乙を占有していたことから、「平穏」「公然」「善意」は認められる(同、186条)。そして、「過失」も認められない。
(3)Dは占有改定による引渡し(183条)を受けているが、「動産の占有を始めた」(192条)といえるか。判例は、ここでいう引渡しは、一般外観上従来の占有状態に変更を生じさせるものでなければならない、としている。本問では、乙がBの支配領域を離脱したとは言えないので、一般外観上従来の占有状態に変更を生じさせたとは言えない。よって、動産の占有を始めたとは言えない。
(4)したがって、即時取得は認められない。
4 以上より、Dの請求は認められない。
第2 (2)について
1
(1)BはCに対して、本件委託契約によって、乙の売買について「代理権」(112条1項)を授与している。CはDとの売買契約締結時、本件委託契約の契約書を示して、説明しているので、顕名が認められる。
(2)CD間の売買契約は、「代理権の範囲内」(同)である。代理権消滅後に売買契約を行っているが、DはBは本件委託契約に基づく処分権限を現在も有している、と信じているから、「代理権の消滅の事実」(同)を知らない。乙をCが有している以上、Dに過失はない。
2 よって、BはDに対して責任を負うので、引渡請求を拒めない。
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