司法試験 商法 一元化教材(まとめノート)
はじめに
本記事は、私が司法試験・会社法を勉強する際に作成、使用していた一元化教材(まとめノート)であります。
商法は令和5年予備試験、令和6年司法試験で共にA答案を取ることができました。
このまとめノートは、はじめに総論的な知識の説明や理解のイメージを記載し、そのあと、答案に書く際のフォーマット及び論証を記載しているというものです。
商法は違法事由は何か、手段は何か、と問われますが、その際に、知っていたのにあの手段に気づけなかった、のような声を度々聞いていました。
そこで私はまとめノートの段階から、ある単元を学んだ際にそこで問われそうな問題を想定して記載し、自己の思考フローにそうような形で、まとめました。そして、通常とは異なったとしても司法試験に合致するような形で体系的に整理することとしていました。
内容の充実度としましては、令和6年設問2に関してはこのワードに記載した思考フローそのまんまである程度書くことができたのでまずまずの内容だと感じています。
〈総論〉
目的の話
・目的の範囲内でのみ権利能力が認められる。
・目的の範囲とは、目的達成に直接又は間接的必要なことを含む。
→政治献金は、間接的に会社の発展に関わりがあるから間接的に必要
『会社の権利能力』
定款に明示された目的に加え、この目的を遂行する上で直接又は間接的に必要な行為であれば全て含まれる。
〈会社の設立〉
設立総論
・発起人の定義
…署名または記名押韻したもの(形式説)
〈現物出資の手続き〉
定款への記載(28条1号)と検査役による調査(33条1項)
→事業の現物出資はここの資産ごとに記載
〈検査薬調査の省略〉
・相当の証明があったか
設立を概観
会社の設立には、発起設立(25①1)と募集設立(25①2)がある。この2つの相違点に気を付けて理解しないといけないが、主に発起人の責任ポイントである。この2つの意味的な違いは、前者が、発起人のみで設立するが、後者は引受人という発起人ではないが設立時から株式を持つものが現れてくる、というところが挙げられる。
現物出資は発起人しか許されていない(34①と61①の比較)。
出資を万が一、しなかった場合、発起人は一回催告という猶予が認められている(36①③)が、引受人は一発アウトである(63①③)。
設立時取締役などの設立時役員等が選任される必要があるが、これらは会社設立後にそのまま、その役職につく者たちである。この選び方にも違いがある。発起設立なら、まず、定款であらかじめ決まっていないかを確認する(38④)。もし決まっていないなら、発起人の過半数によって決定される(40①)。募集設立については、定款は関係ない(募集設立は第4節を含んでいないから)。発起人と引受人で構成される創立総会で決められる(88①)。
出資額が不足したときの責任に違いがある。発起設立では、発起人は原則、過失責任を負うに過ぎない(52②2)。ただし、現物出資した発起人は例外的に無過失責任である(52②括弧書き)。
募集設立でも、現物出資をした発起人が無過失責任であることは変わらない。ただし、現物出資した発起人でなくても、無過失責任を負うことになる(103①、52②)。
募集設立なら、払込金保管証明書の交付請求が銀行にできる(64①)
現物出資
【設立 著しく廉価な現物出資】 会社の財産を戻す
① 基本的ながれは、52条1項(出資された財産の価額が不足した場合の責任)を追求して行う。
⇨発起設立なら、検査役の調査を受ける、もしくは、無過失の証明ができれば責任を負わない
⇨募集設立なら、検査役の調査を受けるのみ(無過失でも責任を負う)
② 責任を負う発起人、証明者を個別的に見ていく。
[具体的な客体 発起設立を例]
ⅰ 現物出資者…絶対に責任を負う
ⅱ 現物出資をしていない発起人…検査役の調査or無過失の証明ができれば免責
ⅲ 代わりに証明した専門者…無過失の証明ができれば免責。
財産引受
・28条2項
・定款に記載がない場合は、無効。
定款のない財産引受 本人に追求
無権代理責任を追求するが、発起人が定款に記載がない売買を行うことはできない。
定款を確認することは容易であるから、過失はある。
→ただし、不当利得を考える。
【定款にない財産引受】
① 設立前に設立後の売買契約は財産引受
② 28条2項より、定款に記載がない財産引受は無効である。
③ 追認ができるか
→できない 論証①
④ 誰が無効の主張ができるか 論証②
⑤ 信義則に反しないか
『定款にない財産引受を追認できるか』 ①
28条が各号の事項につき記載がなければ無効とするのは、広く株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするからであり、特に財産引き受けがこれに含まれるのは、現物出資の潜脱行為として利用され、資本充実の原則が守られないおそれがあるからである。したがって、設立後の会社の追認を認めることは28条2号の趣旨を没却するため、追認しても有効とはならない
『無効の主張ができる当事者』 ②
無効となる趣旨は、会社の資本充実の原則を害されることを保護するためであるから、相手方に無効を認めるべきではなく、また、認めることによって、相手方に投機的な判断をする余地を与えてしまうため、認めるべきではないという主張が考えられる。しかし、判例は無効の当然の結果として、いずれの当事者も主張できるとしている。
『財産引受の無効 信義則』 ③
ただし、無効の主張が株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするものではなく、専ら(自己の債務を消滅させるという)保護に値しない目的のためになされたものであれば信義則に照らして、認められないとしている。
設立前の法律行為及びその費用について
・会社が成立する前に、ある程度従業員を雇わないといけなかったり、オフィスを借りたり、定款を作ったり、会社が成立した時用に先に契約しておく、など、さまざまな法律関係をすることが想定される。
→想定されるのは、①設立のために法律上必要なもの②事実上必要なもの③開業前にする会社の事業の一部(開業準備行為)④③に含まれない事業に用いる財産を開業を条件に取得する契約をすること(財産引受)
・効果が会社に帰属するか、しないなら請求は発起人にするか、という論点となる(財産引受は財産引受というところで別途論点になるはず)
発起人の権限 総論
・上の問題は、結局発起人の権限(会社に効果帰属するか、という問題となる)
・①②は帰属する。
→しかし、最終的に会社が責任を負えるのは定款記載の額まで。
⇨個人の話で考えると、会社と発起人のいずれに責任追求できるか、という話。
⇨複数にとの間では、誰が優先か、という話が出てくる。
・③開業準備行為は効果帰属をしない。
定款を超えた債務は誰の責任か。
・判例は、定款の額までは、会社。超えたものは発起人
→しかし、債権者保護に欠ける、という批判。
・複数人いる時は債権者比例の原則を適用して、按分する。
『設立後に帰属する発起人の行為』
発起人は設立中の会社の執行機関であるから、その権限内で行われた行為から生ずる権利義務は設立中の会社に帰属する。そして、設立中の会社に帰属する行為は特別の移転行為なしに設立後の会社に当然帰属すると考えられている。ただし、発起人の権限は、設立中の会社の執行機関としての範囲で認められるため、具体的には、財産引受の契約締結に加え、会社設立に法律上又は事実上、必要な行為に限って認められる、といえる。
『定款を超えた設立費用の処理 判例を踏まえて』
そこで、判例は、債務について、定款記載の額までは会社に帰属し、これを超えた額は発起人に請求できるとしている。しかし、定款の記載という内部の事情で債務の帰属が定まるというのは、債権者の地位を不安定にさせるため不当である。そこで、発起人の権限内の行為は会社に帰属すると考えるが、28条4号は定款を超える額の設立費用は効力を生じないとされているため、当該費用については会社が発起人に求償できる、と考える。
開業準備行為は効果帰属をしない。
→よく、無権代理構成を考えさせられる。しかし、そもそもダメな行為なのだから、無権代理行為について過失ありまくり。つまり、権限の範囲外について、無権代理責任が生ずる、との論点があるが、権限の範囲外は当たり前に認められないため、かなり珍しくないと生じないのではないか。一応下記。
⇨民法117条の趣旨は代理人であると信じてこれと契約した相手方を保護する趣旨に出たもの。これと類似の関係にあるから類推適用できる
『発起人の権限の範囲』
権限の範囲を超えた行為について、発起人に請求できるかが問題となる。会社は設立する前であるため、発起人は本人が不存在につき、代理人とはなりえず、117条を直接適用することはできない。判例は、117条の趣旨が代理人であると信じてこれと契約した相手方の保護であることから、これと類似の関係にあたる場合には、民法117条を類推適用して責任を追求できるとしている。
設立に関する責任
○会社に対する責任
・任務懈怠責任(53条1項)
→お金が足りないことによって生じた損害は賠償する(ここが、出資責任と近くなる)
・出資仮装責任
→ちゃんとお金を入れる責任。周囲の人間も連帯責任。
仮装と株式
仮装した場合の株式の権利
52条の2より、払い込むまで株式の権利を行使できない
名前だけ貸した株式の引き受け
判例は、名義ではなく、実質上の引受人が誰かによって株主が決まると解している(名前を貸した人ではなく、使って申し込んだ人)。よって、真に契約当事者として申込払い込みを行なったものが株主である。
⇨要素として、経済的負担や、意思や行動
見せ金
・見せ金の定義にあたることまでを論証する必要があるかは微妙。
→いずれにせよ、3つの観点から検討する。
・求償権という事実も加えて検討する。
【見せ金をした責任】
① 見せ金は払込をなしたとは言えない 論証①
② 見せ金にあたる基準 論証②
③ 見せ金をした発起人の責任追求 論証③
→52条の2
④ 見せ金をしていないが、その後取締役になる人たち 論証④
→任務懈怠による損害賠償
『見せ金とは』 ①
当初から、真実の株式の払い込みとして会社資金を確保する意図がなく、一時的の借入金を持って単に払い込みの外形を整え、会社設立の手続き後直ちに払込金を払い戻して、借入先に返済することである。
『見せ金の基準』 ②
もっとも、払込みが見せ金にあたるか否かは発起人の内心の問題であるから、客観的事情から推知するしかない。具体的には、①会社成立後、借入金を返済するまでの期間の長短、②払込金が会社資金として運用された事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等を考慮して判断すべきである。
『見せ金をした場合の本人の責任追求方法』
見せ金は、形式的には払込みが行われているものの、実質的には会社の営業資金は確保されていない。よって、本件払込が見せ金にあたる場合、出資に係る金銭の全額の払込(34条)を仮装したといえるので、本人は仮装した出資に係る金銭全額の支払を行う義務を負う(52条の2 第1項1号)
『見せ金をした場合に本人以外の責任追求方法』
会社が取締役に金銭を貸し付けることは利益相反行為(356条1項2号)にあたるため、取締役会決議を要するが、この決議に賛成したものは423条3項3号より、任務懈怠が推定される。
本問では…
よって、別の取締役は任務を懈怠したと推定されるので、423条1項より、払い込みのない金額につき、損害賠償責任を負う。
設立無効の訴え
『無効事由の論証』
無効原因は明文規定がないため、当該事実が無効原因に当たるか否かは、設立手続きにおいて、重大な瑕疵がある場合を指すとしている。
〈無効原因として出るもの〉
・絶対的記載事項を欠く
・定款記載の最低額に出資額が達さないこと(27条4号)
・一株も引き受けない発起人がいること(25条2項)
〈株式について〉
株式の準共有 106条
総論
・原則は、1人に決めて、通知する、という流れ。
・問題では、準共有状態で決議が行われた場合が問題となるのが多い。
例外
・民法の規定から考えると、少なくとも全員一致によって権利者を指定すれば株式を行使することはできそうだが、これに加えて、この1人を会社法は通知することを求めている。
・ただしがきにおいて、「同意した場合」は行使できる、とあるが、前提として、民法の共有ないし準共有の規定を守っていなければ、同意しても認められない。つまり、使い方は決定しておく必要があり、使う人を1人に指定して、通知しろ、という部分を消すに過ぎない。
・共有株式を使って決議をするならば、決議をするという行為は管理行為であるため、過半数の者が賛成した使い方であれば、1人に指定しなくとも、通知がなくとも、会社の同意があれば、議決権の行使は有効となる。
→会社からの同意はある前提で、
①共有者全員が議決権を共同して行使している場合(権利行使者を定めてない)
②過半数以上のものが賛成している内容で決議をした場合(権利行使者を定めていない)
③過半数以上のものが1人に決定していること(通知だけ忘れてしまった)
⇨権利行使者の指定は共有物の管理に関する事項として共有持分の過半数によってすることができるから。
④全株式、または過半数の株式が準共有状態にある場合には、特段の事情があるとして、権利行使者の決定なしで、株主総会不存在決議を提起できるという判例。
不存在確認の原告適格
・判例は、特段の事情がない限り、106条に反する者の原告適格は認めない、としている。
・特段の事情は、会社の発行済株式の全部が準共有状態にあり、かつ、共同相続人のうちの1人を取締役に選任する旨決議がされた場合、を挙げている。
・判例は同意がなかった事例。
→106条に乗っかって権利行使できるか、原告適格があるかを判断しなければならない。
気を付ける視点
・会社側から、通知が必要なときは共有者の1人に通知がなされていれば足りる。(126条4項)
・1株あれば、権利行使することができる権利についても、判例はできないとしている。
・議決権行使ができないだけで、定足数には含まれる。
フォーマット
① 共有状態にあり、これは準共有(民法264条本文)に当たる。
② 共有状態の株式を行使するには原則、権利行使者の指定と通知がいる(106条本文)。
③ 但し書きにおける同意があったとしてもこれは、106条本文が264条但し書きの特段の定めにあたることを前提に、その特段の定めを排除するものにすぎない。
→つまり、同意があれば、指定と通知はいらないが当然に民法上の共有の規定は適用される(264条本文)
④ この使い方は民法上、処分、管理行為、保存行為のいずれに当たるかを検討する
→ここに判例をまた使う。
『106条但書の同意』
106条但書の同意は、106条本文が特別の定め(民法264条の但書)に該当することを前提に、権利行使者の指定とその通知を要求を排除するにすぎない。したがって、会社の同意があれば指定と通知はいらないが当然に民法上の共有の規定は適用される(264条本文)。
『議決権の行使 管理行為』
議決権の行使について、判例は、当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し、または株式の内容変更することになるなど特段の事情のない限り、株式の「管理に関する行為」(民法252条1項)に当たる、としている。よって、同項より、議決権の行使は持分の価格に従い、その過半数で決せられる。
『準共有の特段の事情 不存在確認』 ②
準共有株主のうち、106条規定の権利行使者の指定、通知を欠く者の決議不存在確認の訴えにおける原告適格について、判例は原則認めておらず、例外的、会社の発行済み株式の全部が準共有状態にあり、かつ、共同相続人のうちの1人を取締役に選任する旨決議がされた場合、には特段の事情があるとして、原告適格を認めている。
株主平等原則 109条
総論
・持株数に比例して平等
・株式を持っていることを理由に全員一律に平等。
・問題になるパターンは、①シンプルに大株主にだけお金をあげる場合②株主優待制度との関係で問題となる場合③株主優待で渡すものが実質、現物配当と言える場合
・着席位置の判例が有り、平等にしなければならないものの、別の権利の制約が軽微だから許される、と示した。
『株主平等原則 合理的な区別』 論証①
株主平等原則は、絶対的な平等を要求するものではなく、合理的な理由に基づく一定の区別をすることは認められている。そこで、本問の株主優待制度との関係が問題となる。
→株式投資の促進という目的があるか、社会的相当性があるか、差が軽微であるか
先に座らせた事例
・合理的な理由のないにもかかわらず、同一の取り扱いをしないことは株主平等原則に反する。
・ただし、株主権を行使できたと言えるか否かが、不法行為に基づく損害賠償請求の流れにおいては、侵害利益に関わり、決議取り消しについては裁量棄却に関わると思われる。
利益供与
総論
・120条
・株主の権利の行使に関して、財産上の利益を供与してはならない
→感覚は、議決権行使とかをお金を払ってお願いしたらダメ、という感じ。賄賂的な。普通に政治家も売買をする。ただ、自分に票を入れてね、というお願いの元、売買をするのはだめ。
⇨政治家は、いや、票を入れてなんて言っていない、というけども怪しい、という前提が2項の趣旨。
・何人に対しても、という観点を忘れない。
・権利行使、つまり、票を入れる、提案権を行使する、などが入るはず。そう思うと、株式の譲渡は単に譲渡に過ぎないので原則当たらないのがわかる。
モリテックス
・これは私に入れてくれたら、というのではなく行使さえすれば、という条件でQUOカードを送った。
→判決は、利益供与に当たるとしたが、事実関係も踏まえる必要がありそう。
『株式の譲渡が株主の権利の行使に関し、と言えるのか』
判例は、株式の譲渡は株主たる地位の移転であり、それ自体は株主の権利行使とはいえないから、譲渡することの対価として、何人かに財産上の利益を供与したとしても、原則、利益供与(会社法120条)には当たらない、としているが、例外的に、会社から見て好ましくない株主が株主としての権利を行使することを回避することを目的とした場合は、なお、利益供与にあたる、としている。
種類株式
・無議決権株式
→少数株主権については当然権利行使が認められない。
株主総会決議取消権は議決権があることを前提とする共益権であるから原告適格が認められないとするのが通説。
・全部取得条項付き株式
→①不相当な額で締め出される②締め出されたくないのに締め出される。という不都合
⇨
① …公正な価格に加え、強制取得により失われる今後の株価上昇に対する期待を評価した価額をも考慮して、価格決定の申し立て。
② …決議につき特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことにより決議が成立したという要件、決議が著しく不当であるという要件。をもって、決議取り消しの訴え(会社法831条1項3号)
無議決権株主の請求権
・議事録は318条4項より閲覧できる
・書面投票等における書面の閲覧はできない
→310条7項但書より
⇨・代理行使 ・書面投票・電子投票
・決議取り消しの訴えの原告適格はない
→議決権があることを前提とする共益権であるから
種類株式発行会社ではない会社の全部取得条項株式を使ったら、少数株主の締め出し方法
①種類株式発行会社にするように、定款変更→特別決議
②旧株式に全部取得条項をつける
→特別決議
③全部取得をする、特別決議をする
→その対価に、種類株式を交付する
株券の譲渡・対抗要件
・①対抗要件が問題となる時②譲渡の手続きが問題になる時がある
総論
・譲渡は基本、普通にできて、名義書換による対抗関係のみが問題となるが、①定款による譲渡制限②法律による譲渡制限(自己株式の取得や子会社の株式の取得)③契約による譲渡制限(従業員持株制度)があり、譲渡制限がかかると別途手続きがいる。
・譲渡の論点は、譲渡の手続きの履行と譲渡の対抗要件である。
上場会社
・振替法による。
・雑に、譲渡を申告して、口座管理機関→「ほふり」→口座管理機関→通知のような流れ。
・一定の日に、上記流れを「ほふり」から会社に通知(総株主通知、151条①)、例外的に少数株主権を使うならば個別株主通知がなされる(154条③)。
対抗要件について
・株券発行会社と未発行会社で株式譲渡の方法、第三者対抗要件、会社対抗要件が異なる。
・譲渡はできる。ただ、対抗要件は別。これが原則。だから、会社が名義書き換えのない譲渡を自己の危険の元、有効とすることはできる。
→譲渡制限ならば会社は譲渡人を株主として扱わなければならない。つまり、名義書換えの請求はできない。
・株券発行会社であれば発行前の株式譲渡の効果は、①原則、発行前は株券発行会社に効力ないが、②判例は会社が発行を不当に遅滞した場合は、譲渡の効果を対抗できる、としている。
⇨公開会社は即時発行しなければならないから、常に不当。 215条1項
非公開会社は請求後のみ、義務があるから、請求した後に発行しなければ、不当。215条4項
譲渡と会社への効果
・株券不発行会社を前提に考える。
・株主名簿を書き換えないと会社、第三者に譲渡を対抗できない(130条1項)
→ただし、あくまで対向関係の話なので会社側から認めることは原則できる。しかし、譲渡制限株式が承認請求されていない場合は、前提である譲渡の効果が生じていないので、会社は、譲渡人を株主として扱わなければならない(判例)。
『譲渡制限株式 承認手続きの未了』
会社の承認を得ていない譲渡制限株式の譲渡はそもそも会社との関係において譲渡自体が認められるものではないことから判例は、会社は譲渡人を株主として取り扱う義務がある、としている。
名義書き換えについて
非株主からの名義書き換え請求
・株券発行会社ならば、持っている人が単独で請求できるので真の株主以外から名義書き換え請求を喰らうこともある。
→悪意重過失のない限り、名義書き換えによる瑕疵は生じない(免責される)。
非名義人の権利行使
・基準時の名義人に行使させておけば十分。
・ただし、会社の危険で他のものに行使させることは許される。
→別途、株主平等原則違反、恣意的な指定は問題となる
『非名義人の権利行使』
株主名簿制度は集団的法律関係を画一的に処理する会社の便宜のための制度であるから、会社が、自己の危険において、基準日前に株式を取得したが名義書換未了の株主に権利行使をさせることは許される。
名義書き換えの不当拒絶
・招集通知との関係などで、対抗力の問題が出てくる。
→名義書換がない場合、招集通知はいらない(譲渡の効力を対抗できないので株主である ことを主張できない、つまり通知がいらない)。そこで、不当拒絶の論点となる。
⇨①単なる書き忘れ(過失)②譲渡手続の誤解(不当拒絶)
『過失による名義書換未了』
判例は、会社側の過失によって、名義書換が行われなかったとき、会社は株式の譲渡を否定することができず、株式譲受人を株主として取り扱わなければならないとしている。
『不当拒絶による名義書換未了』
名義書換を行なわれていないのは、会社が〇〇でないにも関わらず、〇〇であると考え行わなかったからである。そうであるにもかかわらず、名義書換をしていないことを主張することは、自らが違法に阻止妨害している記名補充権の行使を求めることとなり、信義則に反する。したがって、会社は株式譲受人を株主として取り扱わなければならない。
失念株について
・名義書き換えをしないまんま放っておいた時に、会社が名簿上の株主に対して何かを挙げたときに、実質的な株主が名簿上の株主に不当利得返還請求できるのか、という論点。
・判例は、無償でもらった場合(株式分割、無償割り当て)は対象になるとする一方、有償で取得した場合にはならない、としている(株主割当)。
→後者について、少なくとも株式自体を引き渡せというのは不当利得にならないけども一歳認めないのは違和感。
定款による譲渡制限
総論
・感覚的に、非公開会社の株式。渡すのに、会社の同意がいる。
譲渡方法
・譲渡するには、原則、会社の承認がいる。
・承認がないなら、会社or指定買取人による買取を請求できる
→投資資本の回収を担保。
承認が要求されない場合
・譲渡にそもそも当たらない場合と、首都から見て要求されない場合がある。
・「譲渡」に当たることが前提。一般的に、一般承継なら、会社の承認は必要ない(譲渡に当たらない)
→会社分割が一般承継に含まれるかが問題となる。譲渡制限の趣旨から、売買と同様に他の株主にとって好ましくない人が入ってくる可能性が高いので、一般承継には含まれないとした。
⇨ただし一般承継でも売渡請求ができる(174条以下)
・一人会社や他の株主全員の同意があれば、であれば、譲渡の手続きはいらない。
『会社分割と一般承継』
会社分割は合併と同じ組織再編の一形態であるところ、合併は一般承継として「譲渡」には該当しない。しかし、会社分割は、合併と異なり、分割会社が依然として存在し、承継する権利義務の範囲に裁量が認められている。したがって、「譲渡」には当たらない。
『一人会社の譲渡制限』
譲渡制限を付する趣旨は、既存株主にとって好まないものが株主になることを防ぐところにある。そこで判例は、一人会社であれば、他の株主の利益を考慮する必要がないので、例外的に手続きは不要と考えられる。
持株制度
・契約による譲渡制限として出てくる。
・ただ、持株契約を行なって、信託した株主が株主としての権利を行使できるのか、という点で論点となりうる。
→株式信託契約の有効性。
⇨包括的な代理行使の禁止(310条2項)の精神に照らす(議決権行使についての指図条項は意識する)。
・契約が無効である場合も、対抗要件の問題は残る。ただ、これは信義則で突破できそう。
〈株主総会〉
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