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司法試験 著作権法の勉強の仕方・問題の解き方(まとめノートと論証集付き)

割引あり

はじめに

私は、知的財産選択で司法試験を合格しました。その時の点は、60.21点です。また、直前期に辰巳の模試を受けた際も60.07点と60点を超えていました。
司法試験を資格試験と見たとき、選択科目はいかに効率よく短期間で学ぶかが重要となります。これは他の科目の方が一般的に点が取りづらく、かつ、周りの受験生の勉強量も多いと考えられるからです。
私は、1年前の7月(予備試験短答式試験受験後)から勉強を開始し、得意科目とすることができましたが、このような効率よく、短期間で学ぶためにはある程度コツを掴むべきだと思います。そこでこの記事では私の個人的な経験からおすすめの勉強の進め方、問題の解き方を提案させていただきます(なお、合う合わないはあると思いますので、読んでいただける方には批判的に読んでいただけるとありがたいです)。
また、もし、この記事を読んでいる人で回生の多さから、知財選択を迷っている人がおりましたら、令和6年採点実感が『作問にあたっては、そのときどきの立法・実務・学説を前提として、法曹になろうとする者に求められる重要な事項から出題すべきであり、現にそのような出題がなされてきたところであるが、他方で、動きの激しい知的財産法の分野において、受験者の予見可能性をある程度担保し、過度な負担を課さないことにも配慮が必要であろう』と示しているので、個人的には他の科目と同程度の注意で足りるのではないか、と考えられますので参考にしてください(特にロー生は指導してくださる先生がここが注目されているといった発言を抑えておく程度で良いのではないかと思っている)。

勉強法

あくまでおすすめ、というレベルです。
私は、まず、薄い入門書を読むことをおすすめします。これを2.3日で1周し、イメージを固めます。その後、2.3周めを読んである程度の知識をつけます。
この際つけるべき知識は後でやる過去問、演習書の解説の意味がわかる程度でいいと思います。個人的にはこの段階から一元化教材を作成し、イメージを掴んでいくべきだと思います。イメージを掴むという言葉は多義的ですが、①定義をある程度把握すること②論点の配置を頭に入れること、があればひとまず足りると思います。
次に、過去問を解きます。著作権の過去問は出題趣旨、採点実感で大変丁寧に解説をされています。そして似た論点が繰り返し出されています。したがって、過去問を全て解けばある程度の論点が把握できると思います。把握した論点を一元化にまとめます。以下も同じです。この時に論証集を自分で作っている人はとにかくコンパクトにすることをおすすめします。著作権法は紙面に限りがあるにもかかわらず比較的多い論点を書かせるからです。
そして、次に「知的財産法演習ノート―知的財産法を楽しむ23問」という演習書を解きます。こちらは過去問と同時並行で進めるのもおすすめです。過去問に無い論点を補完します。
最後に答練があればいいですが、なければ上記の問題を完璧にしつつ、適宜、出ていなさそうな論点を基本書で確認する、というのでいいかと思います。個人的には、答練はいいのですが、直前期の模試は申し込むことをおすすめします。

解き方(答案構成について)

前提

著作権の特徴は、論点の多さと条文の正確な指摘にあります。後者は適宜気をつける他ありません。これは演習時に意識することである程度身につきます。
一方、前者については、論点落としと書きすぎて紙が足りない、という問題点を生じさせます。もっとも逆を返せば、論点をコンパクトかつ、全部に触れさえすれば著作権は合格答案に行くと分析しています。

答案構成に工夫を

1. 著作物か
 ・著作物性の検討
 ・二次的著作物であることを指摘
  →そこで初めて著作者の話に行くことができる場合もある。
2. 著作権者か
 ・著作者性
 →特に共同著作者(共同著作者なら権利が制限されたりとかにも気をつける)
3. 侵害者か
 ・侵害主体に当たるか。
4. 侵害されている著作権は何か
 ・支分権を特定する
 ・制限規定の特定
 ・依拠性
5. 侵害されている著作人格権はないか
 ・権利の特定(名誉声望を含む)
6. 損害賠償や差しどめなどは本当に認められるか
 ・過度広範性
 ・すでに権利侵害が終わっていないか

私は、演習しはじめの頃は以上の骨組みを常に頭に入れて、ここに当てはめながら論点を落としていないか確認して答案構成を作っていました。たしかにこのような丁寧な枠を設定しても侵害されている権利を落とすことがあります。ただ、この枠を設定してから論点を落とすことが減り、答案構成がしやすくなったのも事実です。
こちらの答案構成が個人的におすすめです。

一元化・論証集について

上記で何度も出ている一元化・論証集については上記の答案構成を骨組みに作成していました。
以下に実際に作った一元化教材を貼っておくのでよかったら参考にしてみてください。私は当日こちらをプリントアウトして数分前まで回してみておりました。
『』で囲った後が論証となっております。

また、全部見てみたいという方用に販売もさせていただきます。まとめたものは、過去問、演習書、基本書(茶園先生の本)に記載のあるものです。
〈注意点〉
こちらは実際に使っていたものでありますが、一受験生が作成したもの、にすぎません。したがって、使用の際はとても注意してください(誤字等もあると思います)。

一元化・論証集

答案構成の骨組み

1. 著作物か
 ・著作物性の検討
 ・二次的著作物であることを指摘
  →そこで初めて著作者の話に行くことができる場合もある。
2. 著作権者か
 ・著作者性
  →特に共同著作者(共同著作者なら権利が制限されたりとかにも気をつける)
3. 侵害者か
 ・侵害主体に当たるか。
4. 侵害されている著作権は何か
・支分権を特定する
・制限規定の特定
・依拠性
5. 侵害されている著作人格権はないか
 ・権利の特定(名誉声望を含む)
6. 損害賠償や差しどめなどは本当に認められるか
 ・過度広範性
 ・すでに権利侵害が終わっていないか

著作物について

総論

・著作物の定義は、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」である。①何らか「表現」されているもの②その表現に何らかの「思想・感情」を含むもの③単なる表現ではダメで、「創作性」があること④文芸等の範囲内にあること、をいう

思想・表現

・広く人間の有する「考え・気持ち」をさす。これを有していないものを著作物から外すための概念。
 →人間の思想や感情が入っていないものはここで弾かれる(事実の羅列、自然にできたもの、動物の作品)。事実の発見もあくまで事実だから著作物ではない。

表現物であること

・他の者にとって認識可能である状態にあること。頭の中にとどまるものを弾く。有体物に固定される必要はないが、外部への出力を求める要件。そして、著作権はその具体的な表現が保護される。
・アイディアとしっかり区別する。

創作性

・人間の感情を表現したもののうち、その創作性がしょぼいもの、そもそも創作しようがない(選択の余地がないもの)を弾く。ただし、何らかの個性が現れていれば足りる。
 →偶然に一致していても、真似してなかったら大丈夫。
・否定のパターンは、
a)そのまま模倣(デットコピー)
b)ありふれた表現、その表現を取らざるを得ないこと
→誰が表現しても同じようなことになるもの

部門の限定

→あんま気にしなくてよい。
『創作性 模倣系』
創作性は、作成者の何らかの個性が現れていれば認められるが、本問では、模倣したものであるから、創作性は認められない。
『創作性 ありふれた系』
創作性は、その表現の独占を許しても同一のアイディアに基づく他の表現の選択の幅が十分に残されている場合に認められ、誰がやっても同様の表現を取らざるを得ないものについては、創作性が否定される。

言語の著作物

短文の著作物
→表現の選択の幅が狭い。

音楽の著作物

・固定の必要はない

舞踊または無言劇の著作物

・身振りや手振りで表現する創作物
 →創作性は「振り付け」にあり、舞踊行為は実演家の著作隣接権として保護されるにすぎない。
・判断には、身体活動の自由、との関係が重要。
・固定の必要はない。

絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

書道について

・書は、個性が出づらい。書道家ならではの表現があることを踏まえると、一応認められる。
『書 著作物性』
文字の基本的な形自体には選択の余地はないが、文字の形の独創性、線の美しさや微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚等の表現については、誰がやっても同様の表現になるとは言えない。したがって、書自体に創作性が認められる余地はある。

印刷用書体

・判例があるので意識しておく。
『印刷用書体の著作物性』
従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えており、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となりうる美的特性を備えなければならない、としている。

応用美術について

・美術作品は、絵や彫刻などの、THE美術、というものから、奇抜なコップまで、言葉の意味的には入る。そのうち、奇抜なコップなどのように産業上の利用を目的とする美的な創作物を「応用美術」という(絵や彫刻を「純粋美術」という)。応用美術などのデザインは、意匠法でも保護しているため、棲み分け等の問題が発生する。その辺、いろいろの問題を含んでいるせいで、応用美術の著作性の判断は定まっていない。
○審査基準
A説〔一般の著作物と同様に判断する〕
 →応用美術だけ、他の要件を求めるのはおかしいし、意匠法との棲み分けは必要ではないこと、を根拠としている。
B説〔純粋美術と同一視できるか〕
 →同一視の方法について、2説分かれる。
B-1説〔高度美術性の有無〕
 →美的創作性や高度の美術・芸術性を有しているか否か。
B-2説〔分離可能性〕
 →分離ができるかどうか。分離して、美術の著作物っぽいものを通常の著作物性で判断
○思考過程
 ①応用美術にあたる。
 ②美術工芸品に当たらないか(少し微妙)
  →いわゆる美術工芸品とは、美的鑑賞の対象ともなる一品制作の手工的な美術作品であり、わざわざ、美術工芸品と言わなくても、この規定(2条2項)にあたる、とすれば、著作物性を肯定できるはず。
 ③いずれの説を取るかによる。
『分離鑑賞可能説』
応用美術は意匠法の保護対象でもあるため、著作物の判断について慎重を要する。しかし、そうであったとしても、文言上特別に高度な美術性は求められていないため、創作性の判断は通常の場合と同様にすべきである。そこで、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては、美術の著作物にあたる。

建築の著作物

・原則、建築の著作物とは建物である。しかし、設計図さえあれば、観念的に表現されているので、保護の対象となる。つまり、建物の設計図は、図形の著作物であると同時に、建物の著作物でもある。
・設計図上に表現された建築の著作物については、これを実際に建築する行為が「複製」とされる。
・美術の著作物に含まれる、という見解をとれば46条の制限規定が使える。
『建築の著作物を保護する趣旨』
建築物の美的形象を模倣建築による盗用から保護するところにある。
『住居用建築の著作物性』
また、仮に一般用住居を通常の著作物と同様にその著作物性を判断すれば、後続する多くの住居が複製権侵害となり、社会的損失が大きい結果となる。これらを踏まえると、一般用住居の著作物性が認められるためには、実用性や機能性を離れ、独立して美的鑑賞の対象となり、設計者等の思想・感情を監督せしめるような美術性を備えることが要求される。

その他の図形の著作物

地図について

・地図は事実を書き込むからこそ、意味があるし、各自が勝手な記号を用いていたら地図ではない。だから、創作性の余地が狭い。裁判例等は、素材の選択、配列、表現方法によって、個性を認める余地。当該区域内に観光地もマンホールの位置も学校も用途地域も色々ある、その中でどれを対象とするのか、どのように配置するか、目立たせているか、といった話。編集著作物に類似。
・正確な地図を作るための補正に過ぎない行為は、創作性を付加するものではない。
→独自の基準で「選択」、一定の工夫をして「配置」したことが重要。
『地図の著作物』
地図は地形等の地理的事実を所定の記号を用いて客観的に表現する必要がある結果、表現の選択の幅が狭いと言えるが、素材の選択、配列、表現方法によっては、なお創作性は表れうる。本件地図は〇〇なので、著作物性は認められる。

設計図について

・建物の設計図は、図自体の著作物でもある。設計図に表すのは、あくまでアイディアたるデザイン。これを創作性のない(画一的な)表現方法で図にしている。だから、著作物として認められるかが論点となる。
 →具体的な形状等も踏まえて判断されるべきか。
・機械の設計図も同じように問題となる。
 →大量製品される部分を含んで判断するか。
『設計図の著作物性』
設計図の対象物自体の設計思想はアイデアに過ぎず、設計図の創作性は、作図上の表記の仕方の創意・工夫の有無のみで判断するとの見解がある。しかし、設計図は、確立した共通の作図法に従って表現されるのが通常であることから、上記見解をとるならば、創作性が認められることは稀となるので、著作物の例示として「図面」(10条1項6号)を規定した著作権法の態度に合致せず、かつ,設計図の模倣を自由に認めることとなり不都合である。そこで設計対象物が有する形状や寸法,色彩等を反映した具体的表現内容も,設計思想から派生したものであり、それが設計図上に表現されている限り、それらの表現内容も加味して判断すべきである。

映画の著作物

総論
・映像により表現したものを固定した物をいう
 →ゲームソフトの映像も含む。
・著作者が誰か、という点が特に論点になる。
著作者
・①モダンオーサー(16条)が原則。②映画製作者(29条)との参加約束という例外。③職務著作という全てを崩す大例外がある、という感じ。
 →職務著作が優先
・創作的な寄与をしたもののうち、モダンオーサーのみが著作者となれる。映画の著作物は特別に著作者を限定する規定がある。
 →この著作者が映画製作者に参加約束したときに、29条1項が発動するイメージ。

映画製作者について

 ・2条1項10号に定義。
 ・趣旨は、映画は多額の制作費及び多数の関与者をもって制作されるがそのすべての人を権利者とすると円滑の流通の妨げになるため、映画制作者に著作権を与えることが最も妥当であるから(権利の集中による流通促進と投下資本の回収)
→だから、発意と責任とは、映画の著作物を制作する意思を有し、著作物の制作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことから経済的な収支の主体となるものをさす
  ⇨創作性とかいらない。発意と責任があるものに、約束したら帰属する。
 ・裁判例は未編集の映画は、「映画の著作物」には当たらない、としている。
  →検討の余地あり。完成の前後で著作者が変わることは29条1項という特別な規定の存在から、当然に予定されているという見解。
『映画製作者とは』
映画制作者とは、映画の著作物の制作に発意と責任を有する者をいう。ここで、29条1項の趣旨は権利の集中による流通促進と投下資本の回収にあることから、「発意と責任を有する者」とは、映画の著作物を制作する意思を有し、著作物の制作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことから経済的な収支の主体となるものをさす
『未編集の映画 映画の著作物に当たらないか』
上記趣旨に照らし、29条は完成された映画の利用権を確保するための規定であると考えられるので、ここでいう映画の著作物は編集されたものを指す。未編集であるが故に29条の映画の著作物に当たらないとなると、完成の前後で著作者が変わることとなるが、29条1項という特別な規定の存在から、著作権法が当然に予定していると考えられ、法の趣旨に反しない。

写真の著作物

創作性について

・写真において、創作性が出るのは、①撮影技法等(どんなふうに撮ってやろうかな)②被写体の選択(どんなものを取ってやろうかな)、と言う2面である。①については、当然に創作性の判断ができる(その構図で撮ったことに創作性がある)。しかし、②については、争いがある。
・②は、被写体の選択を創作性に含めるならば、被写体が共通しているだけの時に侵害と言えるかが問題となる。
→被写体の選択の余地がない場合なら、問題とならない。

プログラムの著作物

・ゲームがこれに含まれるから、一応意識する。
『ブログラムの著作物性』
プログラムは効率的な機能を追求する結果指令の組み合わせの選択が限定的となる。そうであるにもかかわらず、仮にごく短い表記法によって記述したものやごくありふれたものに著作物性を認めて保護の対象とすると、社会生活、経済活動に大きな支障をきたす。そこで、指令の表現自体、その指令の組み合わせ、その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり、作成者の個性が表れている場合に認められる。

既存の著作物を基礎とした著作物

二次著作物

…原著作物の翻訳、編曲若しくは変形、又は脚色、映画化その他翻案することにより創作された著作物。要は、翻案されたもの。
  ・イメージとしては、プラスの権利。二次著作権者が文句を言えるのは自分でプラスしたところだけ。一方、原著作者は、二次町作者が足したところまで、文句が言える。そもそも俺が親だから、的な。

編集著作物

・素材の選択又は配列に個性を見出す。だから、中身の素材が著作物であろうがなかろうが関係ない。著作物なら別途保護される、というだけ。特に、原告が素材自体の権利者でないときに使える。
 →その選択と配列が没個性的なものであれば、保護の対象とはならない(額の汗は保護しない)。
『編集著作物とは』
その素材の選択または配列によって創作性を有するものである。

データベース

・パソコンを使って検索できなければならない。
・情報の選択と体系的な構成、という点に創作性が求められる。どのような基準(体系)に従い、どのような情報を選び、並べるか、というのを保護してあげるもの(体系=個々別々の認識を一定の原理に従って論理的に組織した知識の全体のこと)
 →体系的な構成は理解としては、何で検索できるようにしているか、その検索項目に独創性が溢れていると言えるか、という話。
・つまり、個別的に抜き出すに過ぎない場合や、抜き出して自分で並び替えている場合は、体系を使っていないので、著作権侵害にならない。

著作者

総論

・創作的な表現をしたものが著作者である(①創作行為&②表現行為)
 →創作又は表現を行なっていない者は著作者ではない。
・創作と同時に、著作者には、無方式で著作者人格権と著作権が帰属する。

著作者性

総論

・簡単な基準は、創作行為をしているか否か。
 →具体的には、過程のうちどの段階で創作的表現が確定するのか、などを見極める。
・推定規定がある(14条)。
・ただ、別途判例に合わせて写真、映画、建築の著作物については著作者性に気をつけないといけない。
・職務著作もこの論点として考えていい。
・二次的著作物の著作者として権利行使しようと考える場合は、しっかり、二次的著作物に当たることも指摘しておく(しかも許可を得ていないなら翻案権等の侵害となる)。
『著作者性の口上 共同制作』
著作者とは、当該著作物の思想・感情の表現につき、創作的関与をしたものである。そこで、仮に創作過程において複数人が何らかの形で関与していたとしても、創作的寄与に及ばない単なる補助者は著作者に当たらない。

編集著作物

・編集著作物が問題となるときは、共同著作物としての問題として出てくるはず。
 →注目点は、①編集方針決定者②素材の作者が製作者に含まれる か。
⇨作成者の「意向に従っていたに過ぎない」(16事件) 
⇨編集方針の決定が、素材の選択、配列と密接不可分の関係にある場合は創作性に寄与している、といえる(百選事件)
『編集著作物 著作者』
創作性のある、素材の選択または配列を行なった者が著作者に当たる。

写真

・写真の著作物の場合、いくら、被写体を自分が作ったからといって、撮影という創作行為自体に関与しなければ、著作者に当たらない。
 ⇨写真は、著作物性の認定から論点にはなりうるので書き方注意。
『写真の著作者』
写真は、撮影技法や被写体の選択によって個性が表現されるものであるから、写真の著作物の著作者は、撮影技法や被写体を選択したものに認められ、被写体等の作成者はこれに当たらない。

映画

 →著作者について、特別規定があり、かつ、約束したりしたら、創作性に何ら寄与していない人が著作権者になる(映画の著作物に規定)

建築

・建築は設計図の場合、そもそも判例はあんまり認めていない。著作者の前にそちらが重要。

インタビューの場合

・インタビューをもとに出来上がった文章に、回答者にも権利が認められるか、という話。
・回答者が文章の構成に関わっているかどうか。
 →インタビュー側が、表現を加除訂正して、回答者が全く関わっていないなら関与なし。
 ⇨質問の用意、回答の仕方、その後の文章の加除訂正の有無。
『インタビューの創作性』
文書作成への関与の態様及び程度を考慮し、口述者が文書としての表現の作成に創作的に関与したと言える場合は、口述者も著作者といえる。口述した言葉を逐語的にそのまま文書化した場合や、口述内容に基づいて作成された原稿を口述者が閲読し表現を加除訂正して文書を完成させた場合など、文書としての表現の作成に口述者が創作的に関与したといえる場合には創作的に関与したと言える。

二次的著作物について

総論

・二次的著作物の権利が問題になる時、原著作権者なのか二次的著作権者なのかしっかり区別することが大切。原著作権者ならば、あくまで、28条を経由しての権利であることを意識しておく。
 →二次的著作権者(翻案を行なった者)が原告にあたる場合は、二次的著作物にあたることを明示する。
・結合著作物に当たらないかを気を付ける。
 →それぞれ独立した著作物であるものが一体として利用されているに過ぎない。
 ⇨歌(歌詞と旋律)、本(文章と挿絵)。

二次的著作物によって付加された部分

・第一に、二次的著作権者の権利の範囲は、自らが付加した部分にとどまる。
・原著作権者が付加された部分のみにも及ぶかが大きな争いがある。
『原著作者 二次的著作物 権利範囲』
原著作者の権利は、二次的著作物の著作者が独自に付加した部分にまで及ぶ、との見解がある。(これは、原著作物の著作者の創作的表現話引き継ぐ部分と二次的著作物の著作者が付加した独自の創作的表現部分の区別が困難であることなどを理由とする。)しかし、この見解は、自己の創作的表現を超えた部分にまで著作権が及ぶこととなり、創作的表現の保護を目的として著作権を認めるという著作権法全体の趣旨に反することとなる。(また、判例上、区別できる事例もあり、すべての事例に当てはまる根拠とは言えない。)そこで上記見解は採用せず、原著作権者の著作権は自己が創作的表現に関わるものにとどまる、とすべきである。
『二次的著作権者 権利範囲』
二次的著作物が別個の著作物として保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付与されているからである。したがって、二次的著作物の著作権は、新たに付与された創作的部分にのみ生じる。
『原著作者に許諾を得ていない二次的著作者の著作権』
著作権を侵害する行為によって二次的著作物が著作物が作られた場合であっても著作権の成立を否定する規定は存在せず、また著作権を侵害したという事実と二次的著作物を創作して文化の発展に寄与したという事実は別に評価されるべきである。したがって、著作権は生じる。

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