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H25刑事訴訟法を出題趣旨と採点実感で分析する

設問1

逮捕①
逮捕②

差押え

[総論]
差押えについては、『刑事訴訟法…第220条が定める令状によらない差押えについての正確な理解と具体的事実への適用能力を試すもの』である。いわゆる逮捕に伴う捜索差押である。
具体的な論点として、出題趣旨は『逮捕の地点から約200メートル離れた地点において実施されている点が、同法第220条第1項第2号の「逮捕の現場」という要件との関係で問題となること』、『向かう途中において差押えを実施しており、この点についても、各自が展開すべき法理論との整合性に配慮する必要がある』こと、『甲の携帯電話を差し押さえる前提として、同携帯電話が逮捕被疑事実であるVに対する殺人事件と関連性を有するものであることが必要であり,具体的事実関係を抽出した上で関連性の有無を論じる必要がある』ことを挙げている。
具体的には、①「逮捕の現場」ではないところでも許されるか②移動途中でもいいか③差押え対象物の被疑事実との関連性の有無 を指していると考えられる。
個人的に、逮捕に伴う捜索差押えはまず、何より条文に即して当てはめていくことが重要だと考えている。また、令状主義の例外であることもあって様々な点が論点になりやすいため注意が必要である。
[逮捕の現場以外でも許されるか]
これについては、前提として判例は、『「逮捕の現場」で直ちに被逮捕者の身体を捜索し差押手続を実施することが適当でなかった場合に、できる限り速やかに被逮捕者を身体の捜索・差押えを実施するのに適当な最寄りの場所まで連行した上で行われた差押手続につき、「刑訴法220条1項2号にいう『逮捕の現場」における差押えと同視することができる」』としているらしい。つまり、逮捕の現場以外絶対にだめ、という考えは判例とは合致しない。もっとも、なぜ別の場所でできるか、という点について法的説明がなされていないらしいため、検討しなければならない。
ここからは私見である。まず、「逮捕の現場」ではない。ただし、私は相当説をとっている。これは、逮捕の現場には逮捕にかかわる被疑事実に関する証拠の存在する蓋然性が高いことから、法が合理的な捜査手法として、無令状の捜索差押を認めたもの、という解釈である。身体・所持品に関しては移動したとしても証拠存在の蓋然性に差異はない。だから、同視することができるのだ、という見解である。詳しく色々見てみると、このような見解に反対、無理があるとの意見もあるようだが、司法試験との関係ではひとまずこれで足りるのではないか。
[移動途中でもいいか]
これは現場思考問題と思われる。ただ、感覚的には、移動先でいいのだからその途中でよくないはずがない、という感想を持った。司法試験で現場思考問題だ、と考えた場合、このような相場感のようなものが大事になってくるはず。すわりのいい結論を先に考えて、自己がもっている見解と矛盾がないよう論証する、というのでいいと思う。私なら、移動をする原因が、被疑者の名誉保護、被疑者らの抵抗による混乱の防止にあるからこれで差押を行なってもその趣旨・目的に合う、証拠存在の蓋然性はある、という2点を押すと思う(ただし、これは正しい答えというより司法試験はこのくらいのある程度の妥当性で突破できるはず、という理解を示しているに過ぎない。よって、正確な理解は基本書等に譲る)。採点実感では「甲が転倒して携帯電話を落としたことによりその存在がPに明らかになり,重ねて捜索をせずとも差押えが可能な状況になったという具体的な事実を摘示」することを求めている。これは、おそらくまさに証拠が存在しているから、とか、捜索しない=プライバシーを害さない、とうの評価を与えて許される、ともっていくのではないか。
重要なのは論理の一貫と妥当性だと思う。
[差押え対象物の被疑事実との関連性の有無]
採点実感曰く、「被疑事実と証拠物の関連性は,差押え時の事情から判断すべき」である。ここから、「その後の捜査において携帯電話と殺人事件との関連性が無いことが判明した場合に,遡って差押えの適法性が問題となり得」えないことが読み取れる。

設問2

以下、後日。

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