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W_001 定期試験の作り方

こんばんは。この記事は文章でお送りします。ますひこです。


一度やってみたかったのがこの形、文章による配信です。
どうしても音声配信中のフィラーをなくせず、話すことを職業としているにもかかわらず、まだまだ精進が足りないなと思っています。

以下のコンテンツで話した内容のまとめとして、作り上げた文章です。


定期試験をどう作るのか、気になる方へ届けます。想定する読者=あなたは、中高一貫校に通うご子息をもつ保護者の方々です。
お読みいただければ、幸いです。




定期試験の目的


まずもって定期試験の第一の目的は、生徒の学習状況の評価です。授業内容がどれだけ身についているか、先の内容を学ぶにあたって習熟が足りないところはないか、確認をしていきたいのです。
この確認=評価がなされると、それが生徒に認識されます。

「あ、僕は数学が得意なんだ」  「あ、私は英語が苦手なんだな」

それぞれの主観の中で、それぞれの生徒が自分の評価を確認し、それによってその後の行動も変容します。

「もっと数学を頑張って、クラスで一番になろう」  「せめて英語は平均点くらいとらないとな」

その結果、近い未来でより勉強に励んでほしいのです。

目的を間違えた定期試験


このように考えると、以下のような定期試験はあまり意味をなさないといえます。

・あまりにも難しすぎる問題が何問も含まれている試験
・全員90~100点を取ってしまう試験

これらの意味がない理由がわかるでしょうか。試験は、よく勉強した生徒が点数を取れ,あまり勉強していない生徒があまり点数を取れない形であるべきなのです。
そうでなければ,よく勉強しても点数の取れない試験が続いてしまっては、勉強しても無駄という実感を生徒に与えかねません。学習性無力感という現象です。


後者は少し複雑です。問題を簡単にすればいいじゃないか、とお思いかもしれませんが、これを実現するには定期試験として有り得ないくらいの簡単さが必要になります。

生徒は,どんなに簡単な問題でも間違える可能性があります。24の正の約数の個数を問う問題を中学3年生に出題しても間違えるほど、です。

そこまで考えて90点overを多くの生徒に取らせようとすると、非常に簡単でかつ問題数の少ない試験となります。この試験で高得点をとるために、生徒は勉強するでしょうか?

おそらくしないでしょうね。勉強しなくても高い点数を取れるからです。


妥当な定期試験の条件


では、どのような定期試験が妥当なのでしょうか。これは多様な価値観があってしかるべきですが、僕は以下のようなものを考えています。

生徒が十分に勉強してきていることを前提として
・平均点が55点~65点程度のもの
・点数全体が30~100点の幅に収まるもの
・よい問題を含んでいること

定期試験である以上、選抜ではなく教育を目的としています。あまり低い点数を取らせることは目的にかないません。
なので、目指したいのは全員が30点を超えることです。

そのために必要なことは、簡単な計算問題を一定数出す、ということです。
あまり同じものをたくさん出すと偏りが出ますから、試験範囲の中の計算問題をまんべんなく出すことが理想です。

計算問題をどう定義するか、は難しいところですが、おおよそ問題集で一番簡単なレベルの問題と考えてよいでしょう。



難しいのは「よい問題を含んでいることここにセンスが表れます」という条件です。



「よい問題」とは何か。様々な価値観があってしかるべきですが、僕は「のちの事項を学ぶ際に役に立つこと」 「来るべき大学入試を見据え、出来ておくと差がつくこと」の二つがあると考えています。


具体的出題



「来るべき大学入試を見据え、出来ておくと差がつくこと」の事例です。中学1年生で習う「図形の性質」という単元では、直角三角形の合同条件の演習問題として、以下のような問題があることが多いです。


体系数学等の問題集にも掲載されているような問題です。


読んでくださっているあなたがこの問題を解ける必要はありませんが、以下の問題と比較して「似ているな」という感覚は持っていただけるでしょうか。


DA=DB=DC、という条件が上記証明問題と一緒です。斜めの辺の長さが等しくなっています。
東京慈恵医科大の問題の状況を図にしたものです。


よく似ていると思っていただけましたか?東京慈恵医科大の問題は、解き始める手がかりとして中1での問題がわかっていないと動き出せません。

$${\tiny\text{中1での問題によりHが底面の外心であることがわかり、}}$$

$${\tiny\text{底面の外接円の半径を出せばAH、BH、CHがわかるので}}$$

$${\tiny\text{三平方の定理を用いてDHを求めます。その後余弦定理等を}}$$

$${\tiny\text{駆使して△ABCの面積を求め、四面体ABCDの体積を求めていきます。}}$$

難関医学部である東京慈恵医科大の問題を解くために必要な知識を、中1で扱っているわけです。
ちなみにこの構図の三角すいに関する問題は、毎年複数の大学で出題されています。
これを教員がわかっていないと、「高2までの5年間きちんと勉強してきたのに、高3の受験勉強で聞いたことない知識がたくさん出てくる」となってしまいます。

そのような状況を作らないため、先の見通しができる教員は必ずと言っていいほどこの証明問題を授業で丁寧に扱います。
そして、ほかの問題で出題すべきものなどの条件が許せば、定期試験に出題します。


このような問題は各単元で多くあるわけではないですから、先生のような先の見通しが出来ている人に聞くことで、十分準備しておくことができます。


また、「のちの事項を学ぶ際に役に立つこと」という観点でのよい問題の事例はこのようなものです。


出題される状況では点線,D,Hはないものと考えてください。こちらで補助線を引いておきました。

中学2年生で図形の相似・円周角の定理を扱った後であれば、出題できる問題です。
問題文を読んでいきなり点線の直径を引くのはほぼ不可能です。これまで何度となく授業してきた中でも、引けた生徒はいません。

ですが、この図はそのまま

$${\frac{\sin A}{a}=\frac{\sin B}{b}=\frac{\sin C}{c}=2R}$$

という中3で学ぶ定理「正弦定理」の証明で用います。補助線まで全く一緒です。

この問題が印象に残っていると、正弦定理を学ぶときに非常に有利といえます。
先が見通せる教員は、高校までで学ぶ数学の内容とその証明がだいたい頭に入っているので、それを見越して問題を選定するんですね。
必然、定期試験にも出やすくなります。


ノイズ


正直、ここまでに確認した
・計算問題
・よい問題
が問題なく出来ていれば、間違いなく平均点は超えてきます。
そうなるように計算問題の量や配点、その他の問題のレベルを動かします。

ここからさらに上乗せしたい場合には、問題集の難しい問題に真摯に取り組み、出来るようにしていく必要があります。
ですが、多くの生徒はそこまでやり切る時間がないということも、現実のご子息の状況を見てわかっていただけると思います。

このような問題は「ノイズ」としてある程度放置していても構わないでしょう。
東大、京大、一橋、科学大、独自問題を作る国立医学部なんかを受けるのでなければ、必須なわけではありません。

また、たまに「試験範囲でこんな難しい問題作れた!すごいでしょ!」というノリで難問を出す先生がいます。

そのような場合は、独自問題もノイズとして処理しましょう。解ければ解いたほうが当然良いですが、解けるようになるためのコストはなかなかなものです。

中学受験の算数を思い出してください。小4からの3年間、かなりハードに勉強し続けてきたと思います。
定期試験でノイズとなるような難問を解き切るには、あのレベルの勉強が必要となります。
基本的なところができていれば、大学受験において高2からでも逆転は十分可能、おさえるべきところをおさえていきましょう。

まとめ


まとめに入ります。
ここまでにあげたことから、定期試験の対策としてやるべきことは

①計算問題を確実に解ける基礎を、授業と自宅演習で身につける。
②「よい問題」を確実に解けるようにする。
③提出すべき問題集を終わらせる。
④「ノイズ」となりうる難問に取り組む。

の順番になります。②までで平均点は超えてくるはずです。
多くの人の勉強は①→③となっていないでしょうか。

すべての問題を等しく解けるようにするのは、あくまで理想です。

多くの人にとっては理想は叶わないので、学習効果の高いものに集中しましょう。


では、②をどのように見つけるか?が一番の問題です。
これについては今後このアカウントで配信していきたいと思っています。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
また有益な情報を、さまざまな形式で発信していきたいと思いますので、ご覧いただければ幸いです。




ちなみに三角すいの問題がなぜ大学入試で出題されるのか、はまた長い話となります。次はこの話ができたらうれしいです。




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