おもしろ韓国語 (013) ハスの花と頭音法則
息抜きに笑い話をお話ししましょう。
昔,ハスがとても好きだった王様が住んでいました。王様は宮廷に大きな池を作って,朝晩欠かすことなくハスの花を見るのを生き甲斐にしていました。その王様の即位18年になった丙申 [병신] の年のある日の朝,池の真ん中に2つのかわいらしい蕾をつけたハスを見た王様は,うれしさのあまり,舌がもつれてこう叫んだそうです。
“지미 씨팔 년간 이 년 저 년 다 보았지만, 저런 쌍년은 병신년에 처음이네!”
〈아빠는 판사라면서 김용호著|지식공작소発行|1997년刊 参考〉
みなさんも王様になったつもりで“짐이 씨팔 년간 이 년 저 년 다 보았지만, 저런 쌍년은 병신년에 처음이네.”と声を出して読むとどこがおかしいか分かります。
それでもわからないようでしたら,今度,韓国の友達の前で,大声で発音して見てください。みなさんの発音がよければ,韓国の人は笑うはずです。ただし,女性の前ではやめたほうがいいかもしれません。
王様の言葉をきちんと書き直すと“짐이 십팔 년간 이 연 저 연 다 보았지만, 저런 쌍연은 병신년에 처음이네!”となります。
짐というのは「朕」のことです。天皇や国王は,自分のことを「朕」といいました。翻訳すると「朕は18年間,このハス,あのハスといろいろ見てきたが,あのような双蓮は,丙申の年に初めて見たぞ!」です。
「18年間」は십팔 연간ではなくて십팔 년간と書きます。
依存名詞として使われている漢字語には,頭音法則が当てはまりません。この場合の년は,依存名詞ですので,そのまま년と書きます。「何年」というときには,몇 년のように년と書きます。しかし,「丙申年」のように固有名詞として扱う場合には,병신∨년と書かずに,병신년のように付けて書きます。
そのほか,昔のお金の単位である냥も依存名詞ですから한 냥, 두 냥……というようにそのまま냥と書きます。
그럴 리가 없다.(そんなはずはない)というときの리も依存名詞です。また,有名な「アリラン」に “나를 버리고 가시는 님은 십 리도 못 가서 발병 난다.”とうたわれている「里」も依存名詞ですから리と書き,分かち書きします。
さて,발병 난다はどういう意味だかわかりますか。「発病した」ではなくこの場合は[발뼝]と発音して「長旅の疲れで生じる足の病気」のことをいいます。昔は徒歩で旅をしていましたから。ついでですが「発病」の発音は[발병]で,濃音にはなりません。
話を戻しますが,「年一回」というときには연 1회,년 1회のうち,どっちが正しいと思いますか。
この場合は연 1회が正しい表記です。おもに数詞の前に付く「年」は연と書きます。
複合語の場合の頭音法則はどうなるとおもいますか。たとえば「年末年始」は? 연말연시か연말년시か迷いますね。
もともとは연말と연시の2つの単語にわかれていたものが合体したので연말연시が正解です。同じように「新女性(신+여성)」「空念仏(공+염불)」などの複合語も頭音法則が適用になって신여성,공염불と書きます。下にまとめてみました。
正しい表記 間違った表記
高冷地 고랭지 고냉지× 고랭+지
空念仏 공염불 공념불× 공+염불
半裸体 반나체 반라체× 반+나체
新年会 신년회 신연회× 신년+회
新女性 신여성 신녀성× 신+여성
失楽園 실락원 실낙원× 실락+원
年利率 연이율 연리율× 연+이율
熱力学 열역학 열력학× 열+역학
重労働 중노동 중로동× 중+노동
初老期 초로기 초노기× 초로+기
独居老人 독거노인 독거로인× 독거+노인
付和雷同 부화뇌동 부화뢰동× 부화+뇌동
非論理的 비논리적 비론리적× 비+논리적
砂上の楼閣 사상누각 사상루각× 사상+누각
年末年始 연말연시 연말년시× 연말+연시
肉体労働 육체노동 육체로동× 육체+노동
ただ「赤裸々」は,ハングル綴字法に,「漢字語の場合,繰り返される2つの音の第1音は,頭音法則によって書き,第2音節は本音どおり書く」と定められていることから,적라라ではなく적나라と書きます。