恵方巻きという名の戦い
やあ、今日もご苦労だったね。
僕は昨日の数式をもう少し正確に再考してたよ。
今日は何を話そうか。
そう言えば、明日は節分だね。
恵方巻きを食べるとき喋ってはいけないというルールがある。
具体的な文化的意味は知らないが、その方が良いらしい。
しかし、残念なことにその風習は僕の親の代で途絶えてしまったので経験は少ない。
なので、あるあるなど言えた立場ではないのだが、そんな僕が何度か行事に参加した際に決まって発生したことがある。
それが、妨害である。
なぜか一部の人間には、恵方巻きを食べている人に話させたがる習性があるらしい。
かくいう僕もその一人である。
このゲームはターン制なので自分の番にいかに決めるかが重要になってくる。
このゲームは、基本的に先行有利である。
なぜならプレッシャーが声を出させやすくなるからだ。
それでは、どうやって声を引き出すのか。
ポピュラーな手口は笑わせにかかることである。
ボケてのような大喜利は結構強い。
開始前に2、3枚は選定しておくことをおすすめする。
しかし、あくまで食事中なので、節度を守らなければアンスポーツマンライクファウルで退場になる。
食べる側の対策は、笑ってはいけないと考えないことだ。
考えることで、さらなる笑いを生んでしまう。
最悪の場合、見ない事も戦略の一つだ。
三十六計逃げるに如かずである。
ほかに相手を動揺させることも効果的だ。
些細な秘密をバラしたり、恥ずかしいエピソードを掘り起こしても良い。
もちろん、やり過ぎには要注意である。
さもなくば、互いの関係にイエローカードが出ることになる。
もしくは相手が鬼の形相になるだろう。
あとは、各ルールで規制がなければ触るのも一つの手である。
食べる側には恵方を向かなければならないという、このゲーム最大の縛りが課せられている。
耳に息を吹きかける、背中を指でなぞる、くすぐるなど効果は絶大である。
また、特殊な勝ち方として恵方から向きをそらさせるという手がある。
例えば皿の割れる音を流して振り向かせることや、
「痛っ」などとのたまい、善意を利用する事ができる。
僕は、はじめに違う方角を教えることで一人を潰したことがある。
あれは、稀に見ぬ名シーンである。
もちろん友達からは爆笑をかっさらった。
その後、お返しにと、座っていたカーペットごと動かされたのはいい思い出である。
このように、恵方巻きとは非常に高度な戦いである。
今日はこんなところかな。
それじゃあ、また今度。
投げるな危険