明日雨

本名をひっくり返して一字ずつ抜いた名です。ドラマ好き。アイコンは、根岸のレストラン香味屋のハンバーグです。

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ブギウギ感想・「無縁」の原理と、「家族」について

最終回からもう時間が経ってしまった。 書きたいことが多すぎて全くまとまらず(現在進行形で考え続けていることもある)、しかしこのままだと永遠に感想をまとめることができないので、ひとまず一冊の本に即して物語の感想を書いていこうと思う。 その本とは、「無縁・公界・楽」(網野善彦著)である。 中世日本の「自由と平和」、それを担保する「無縁」の原理、遍歴する職人や芸能民たち。 この「無縁」の原理が、ブギウギの物語世界には貫かれていたのではないか。 本書を引きながら、上記テーマに即して

    • 読書記録 「殉死の構造」

      「殉死の構造」(山本博文) 2年前に読んだ本の読書記録。 「こころ」の話題を見て思い出したので、昔インスタにあげたものをこちらに再掲載しておく。 - 主君の死を追って家臣が腹を切る殉死。近世初期のこの流行現象は、「主従関係による献身の道徳」「忠誠心」「周囲から強制された死のイメージ」(封建時代の忌まわしい風習)と捉えられてきたが、果たして本当にそうであろうか? 実際の殉死者の事例と共に、近世の武士の心性について考える一冊。 - ・殉死=情死論 日本の殉死の多くが衆道

      • 読書日記 「怖い俳句」(倉阪鬼一郎)

        昨日ちょうど詩歌に想いを馳せていた。今日は、いつもインスタにアップしている読書記録アカウントに、先日読み終わったこちらの本について書いていたので、なんとなくnoteにも転載しておくことにする。 ↓以下、読書記録からの転載です。 幽霊、妖怪、異世界、血、殺人、死の匂い、あるはずの無いもの、あるはずの無い時間、未知なるもの、非日常のもの、「現在」を侵犯するもの、得体の知れない何か… 「怖い」とは、何というか、その文化が育むものの裏面でもあるなぁと再認識。何を怖いと感じるのか

        • 日記 新宿野戦病院についての断片的な色々

          ドラマ「新宿野戦病院」がとても面白かった。 登場する舞/マイという女性が、NPO法人の代表でありながらSM嬢という設定だったこともあり、昔読みかけたままにしていた「ザッヘル=マゾッホ紹介」(ジルドゥルーズ)を読み返した。すごく面白くて、ドラマの読解にもとても意味があるなと思ったのだけど、きちんと批評文を書くほどの時間がないので、ものすごく簡単に(本書については簡単に書きすぎているので間違いもあるかもしれない…ご指摘ください)メモ的にここに残しておくことにする。 ・本書は、

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        ブギウギ感想・「無縁」の原理と、「家族」について

          虎に翼 最終回、の日の日記

          虎に翼、最終回だった。 内容も勿論なのだけど、それを伝える物語の構造としても凄まじいなと感じたのでそれはそれでblueskyに書いてきたことをいつかまとめるとは思うけれど、今日は最終回を観て感じた個人的な話から、日記を書く。  虎に翼の感想、としては、少しズレたものになるかもしれない。と予め書いておく。 ∞ 私は、優未の人生に大層憧れる。憧れる、というか、ああいう風になりたいのだよなぁ、と思った。 「お母さんの格好いいところ」を何も引き継げないと言った彼女。それでも、

          虎に翼 最終回、の日の日記

          日記 9.14

          古い「言語」で思考することの、危うさというものがあると思う。 「言語」とは、思想であり、その当時の雰囲気や熱情であり、そこに反発してきた歴史であり、「否定」と最先端があり、「否定」の残滓としての情緒やロマンティシズムなどもある。 朝ドラ「虎に翼」は、古き"左翼の言語"を刷新しようとしているのではないかと思う。 この物語が見ているものは、現代の、これからの、普遍的な、人間への、である。ことはわかっている。しかし、それを大前提として、今の私はそう思う。 今週の、学生運動の描写。

          日記 9.14

          虎に翼 雑感

          虎に翼に関連して教えて頂いた「隣の女」(向田邦子)を読む。 この心の隙間、想像していた以上に、トラつばの「あなたも女だからわかるでしょ」を補完するなぁ、と読み進めていたのだけど、 この物語の根にあるものは、繰り返しモチーフとして現れる「好色五人女」・西鶴によっては「殺された女」・物語における「女」=世間における「女」の、女の真の生命力による語り直しにあるのだろうなぁなどということも思い、そこもまた、トラつば哲学(女/男、という話だけでなく「語り直し」というテーマ)に通ずるのか

          虎に翼 雑感

          虎に翼第十八週

          今週は、日本国民の戦争責任についての話だったのだ。 だからこそ、朝鮮人差別が引き起こした事件から始まる。今週は全てが一続きである。あの戦争の「大日本帝国」の範囲を、金曜日の時点で今再び考える必要がある。 金兄弟の「故郷」についても考えなければならない。 1952年のサンフランシスコ条約で、(併合により付与されていた)日本国籍が奪われ、暫定的に「朝鮮」という地域を国籍として与えられる。「朝鮮」という国はこの時に無い(1948年に、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国がそれぞれ

          虎に翼第十八週

          虎に翼 8/1

          ※金兄弟が持っていたであろう思い、ヒャンスク/香子の思い、朝鮮戦争、朝鮮籍について、今週はずっと考えながら観てきたのだけれど、今日の回、入倉の語ったもの・語ることに驚き、しかし今を生きてゆく日本人として大事なことだと思うので、この文章にはこのことについて書いた。 8/1、すごく大事な回だと思った。 入倉、どういう背景の人なのだろうと思っていたけれど、そのまま、現代を生きる多くの日本人も未だ抱えるぼんやりとしたものなのではないか。 (入倉の言う「昔のこと」は関東大震災での朝

          虎に翼 8/1

          豪雨の日の日記

          すごい大雨の中を帰って来た。夫はもはや、なんだか楽しそうで、私はというと、鞄の中に人に借りた文庫本が入っていたのでぐしゃぐしゃにならないかとヒヤヒヤしてそれで苛々していた。人間の奥底に意図せず投げてしまった石、について、直面しなきゃいけなかった後に。ずぶ濡れになっても辿り着けた家は安心だった。 夫が、誕生日の私に、コンビニでスパークリングワインを買って来てくれた。誕生日ってほんとうに、毎年毎年うれしくなくなる。自分の身体は重く錆びてゆく。買って来てくれたボトルは、なんだか偶然

          豪雨の日の日記

          読書記録 

          「帝国大学の朝鮮人」(鄭鐘賢 著)を読了した。 朝ドラ「虎に翼」の留学生ヒャンスクの描写から、私は知らないことがたくさんあるということを思い知らされる。Xでおすすめされていたこちらの本を読み始めた。 - 植民地時代に、近代日本のエリート育成装置であった帝国大学で学んだ朝鮮人。彼らは、解放後の社会(韓国・北朝鮮の行政・経済・司法・知識体系)に大きな影響を及ぼした。 そこには、たくさんの人々がいる。部分的に判断することができない、たくさんの複雑な背景が絡み合っている。簡単な

          読書記録 

          虎に翼 第十一週

          今週はとても心を突かれた。 blueskyのTLで、寅子のある種の「傲慢さ」について指摘されている方が何人かいて、なるほどなぁと思ったのだけど、 恵まれた場所から「私に何かできることは」と短絡的に思ってしまう寅子の姿は、SNSに流れる、大量の・それでいて断片的な(例えば現在進行形の戦争の渦中にいる)情報群を観ている時の、自分自身に重なりもしたからである。 行き場の無い善意というか、見てみぬふりをする(ことになる)自分への言い訳というか。奈津子さんに会った第一声、「ごめんな

          虎に翼 第十一週

          季節のない街について

          ドラマ・季節のない街の最終回を観て 宮藤官九郎監督ドラマの「季節のない街」を、最終回まで観た。 ドラマで表現されているものをもっと知りたくなり、途中から山本周五郎の原作小説も、青空文庫で並行して読んでいた。 原作小説から受けた感想、ドラマとの差異をメモしながら書き残していた。 初めの方は感想の分量も軽い。前半、基本的に、ドラマは原作のエピソードに忠実に進行していた。 設定の変更が、徐々に「物語」そのものを変化させてゆく。設定という、物語の外枠の力が、「物語」を(制御不能な

          季節のない街について

          一枚のチョコレートの描写から。

          ・虎に翼 6月6日の回より アメリカ人が分け与えてくれるチョコレートの甘さ、の苦さ。(花江で表現されていたもの)の先にあるもの。の描写。 戦勝国も、たくさんのものを失っている。ということもだけれど、ナチスの存在。朝ドラなどで戦争の描写があるとき、日本の状況は描写されども同盟を組んでいたナチスドイツへの言及があるのは見たことがない気がする。ホロコーストは同時代に絡み合っているし、日本に勝ったアメリカにもたくさんのユダヤ人がいたといことを、今回の言及によって改めて自覚した気持ち

          一枚のチョコレートの描写から。

          おいハンサム!が面白かったなぁ、という雑文

          毎週の楽しみだった「おいハンサム!」シーズン2が終わってしまった。寂しいなぁ。 Xにちょこちょこ感想を書いたけれど、そのままにしていると散り散りになってしまうので、投稿したものに加筆する形でここに残しておきたいと思う。 食にまつわる、日常のささやかなシーンが繰り返される。 伊丹十三の「タンポポ」(こちらも大好き!)を彷彿とする作りだなぁと思っていたのだけれど、シーズン2はもっと一回一回のテーマに明確な一貫性があるなぁと。 例えば第一話。 他者からの視点、自分自身の価値(急

          おいハンサム!が面白かったなぁ、という雑文

          日記 季節のない街について

          ・季節のない街 ドラマを観始めてから原作も読み始めて、今週の「がんもどき」も読了した。 その上でドラマの後半を観て感想を書こうかなと思っている。もしかしたら最終回まで観て原作も読み終えてからになるかも。 ドラマ、展開は原作通りなのだけど、筆致が全然違うようにも受け取れて、個人的には受ける印象が結構違う。 (ひとつひとつのエピソードは原作通りだけれど、半助を主人公に据えたり、順番を変えたり、別の展開を入れたり、の、最終回に向かって何かが起こりそうな物語構造は独自であり、そこに

          日記 季節のない街について