さよならGO TO THE BEDS - 2022年とGANG PARADE -
さよならGO TO THE BEDS
2022年1月1日00:00
何かがおかしいなと思った。例年なら私の好きなアイドルさんたちがTwitterやLINEであけましておめでとうを伝えてくれるのに、そのときは大晦日の夜から更新が途絶えていた。
「GANG PARADEが再始動するらしい」
GANG PARADEというのは、私が当時追いかけていたアイドルグループGO TO THE BEDSの前身グループだった。GANG PARADEは2020年に分裂することとなり、元グループは活動休止、同時期に創始者のカミヤサキは事務所を辞めて独立した。GANG PARADEが今後どうなるのかはメンバーもファンも誰もわからないまま1年半が経っていた。
2日にゲリラライブがあるらしい。公式Twitterから流れてくる動画から察するに、メンバーも同じタイミングで突然聞かされたようだ。ほとんど寝ずにライブの曲を10何曲も覚えて振り入れしているということだった。数時間おきに流れてくるドキュメント映像からその過酷な様子が伺えた。再始動と聞いたときに、嬉しそうな、または、不安そうな、いろんな顔をしていたメンバーたちが必死にひとつになって練習していた。
Twitterではみんな待っていたと口々に言うけれど、私は置いてけぼりで、言い表せない喪失感を感じていた。私たちが応援していた1年半はなかったことになってしまうのかな、私はこの1年半積み重ねてきた時間と同じように、GANG PARADEというグループを好きになれるんだろうか。
2日の朝、人々が早売りに向かう寒空の下、なんとも言えない面持ちで渋谷タワーレコードの列に並んでいた。抽選で当たった人だけが再始動ライブを
見れるらしい。今まで見たことがないとんでもない行列だった。
GO TO THE BEDSを続けていてもこんな行列は見ることができなかったかもしれないな、と思った。だからこれで良かったんだ。当たらなかったら縁がなかったと思おう、多分私よりGANG PARADEに会いたい「遊び人」はいっぱいいるから。そう思っていたけれど、抽選機を回すと鐘が鳴ったので、ちゃんと見届けろと誰かに言われたような気がした。
親戚の食事会からギリギリ抜け出し、渋谷までタクシーで駆けつけた。出てきたメンバーの顔を見て、おそらくこれは家に帰ってないなと察したが、見れる形に仕上げてきたのはさすがだった。
終演前、翌日も同じ形式でライブが開催されることが発表された。聞いたことはあるけど見たことがなかった曲を目の当たりにして、周りの人が興奮気味に話している中で、実感が湧かなかった。自分はこれからどうなるのかなと他人事のように思っていた。
翌日のライブでGO TO THE BEDSの曲が流れたとき、それまでちっともそんな気配はなかったのに一気に涙が込み上げてきた。目の前に好きなメンバーがいたけれど、泣きすぎて顔が上げられなかった。
グループにも人格があるらしいと感じたのはそのときが初めてだった。死んでしまった人の面影を残した別人がそこにいるようで、本当に死んでしまったんだなという寂しさと、その面影をまた見れるんだなという嬉しさで情緒がぐちゃぐちゃになっていた。歌詞でまた会いたいですと歌うけど、多分もう会えないんだろう。私が好きだったGO TO THE BEDSはもういない。その面影を引き連れてGANG PARADEがきっと彼女たちを大きなステージに連れて行ってくれるだろう。
だから、いつかまた同じくらいGANG PARADEのことが好きになれるかはわからないけど、それがわかるまではちゃんと見届けようと思った。彼女たちがGO TO THE BEDSというグループで毎週のようにライブをして走り抜けたこの1年半を無駄にしないためにも。
こんにちはGANG PARADE
ここまでを2022年の年始に書いてから、ちゃんと心からGANG PARADEのことが好きだと言える状態になったら世に出そうと思っていたけど、2022年末現在、GANG PARADEは自分にとってもうひとつの大切なグループになったように思う。
2022年のGANG PARADEは、いまになって振り返ると本当に素晴らしかった。分裂からの再結成というおそらく二度と使えない手札を切って、この先は一度も失敗できないというプレッシャーが彼女たちにはあったはずだが、そのプレッシャーを上回る1年だった。11月リリースの4thシングルPriorityは初週売上約8万枚、分裂前のメジャーデビューシングルが初週売上5.5万枚でそこから集客が横ばいだった(らしい)ことと比べても、間違いなくGANG PARADEの生まれ変わりをやり遂げた1年だった。おそらくカミヤサキの脱退を聞いたとき、ファンもメンバーも誰もが終わったかもしれないと思ったGANG PARADEを新しく作ってみせたのは、数々の施策はあれど、何よりも新人2人を迎えた13人の関係性とステージ構成力だったと思う。
2022年のGANG PARADEはとにかく練習とライブの連続だった。キャリアを重ねた7人のメンバーが屋台骨となって、以前のGANG PARADEにはなかった6人がもう半分の新しい風となって、GANG PARADEの売りである多幸感と高度なステージングをさらに洗練させていった。緻密なフォーメーション移動に振り付けのメリハリを加えた13人体制初めてのシングル「シグナル」は、13人による情報量を生かした遊園地を感じさせる多様な振りと、4-5-4のようなグループ分けが目まぐるしく変わる構成が特徴的で見ていて飽きず、期待以上のステージングで本当に驚いたのを覚えている。
全国ワンマンツアー3本、リリースイベントや対バンも含めてステージ数は100本を越えていると思う。メンバーが大人数になったことで遠征がバス移動になってからも、長時間の移動をして、移動先でライブをして、ときには遠征先ですら練習をして、そこから帰って練習するような毎日。13人向けに振りをどんどんアップデートしながら、新体制初披露曲をまとめて披露して見せたり、とくに後半はそういう機会が多かったように思う。推しにいつ練習しているのか聞いたら「練習?練習はね、ずっとしてるよ」と言っていたが、多分、言葉通り本当にずっとしていたんだと思う。
そんな中でも、新しいメンバーも前からいるメンバーも気兼ねなく関われているように感じる、笑いの絶えない関係性は、見ていてとても心温まるものだった。それはGANG PARADEのメンバーが、全員いいやつと同事務所のBiSH セントチヒロ・チッチをして言わしめるような人柄であることもそうだが、過去のいろんな失敗や反省を生かして今があるからのようにも思う。メンバーが楽しそうに活動しているのを見るのはファンにとってこんなに良いものなんだなと感じた1年だった。アニメの主題歌が決定したり、なんばグランド花月や幕張メッセのようなステージに立ったり、新しい機会もたくさん増えた。彼女たちの言葉を借りれば、まだまだここからだけど、来年もそういう機会に多く恵まれることを祈っている。
1月1日にはGANG PARADE Memorial LIVE ~PAST, NOW, and FUTUREと銘打った5時間超のライブが配信されるので、もし時間があったら少しだけでも見てほしい。そんな彼女たちが創意工夫をしながら作り上げた5時間ものステージがどうなるか、心から楽しみにしている。