ようせえへん
「限界3号」にてお笑いを語られることについてのエッセイを書かせていただいた。錚々たるメンツの中に、周りに「名前」がたくさんあるから「名前」だと認識できるでお馴染み「にぼしいわし・いわし」がある。一丁前にいわしだけ大きくしていただいていわしも喜んでいる。まさかサンキュータツオさんと同じ本に載る世界線だとは思っていなかったから、壁に飾っている、以前ご一緒したときにいただいた居島一平さん手書きの謝礼袋も「ヨイショ!」と持ち上げてくれている。
若手芸人なおかつ、みんな大好きM-1グランプリに幾度となく果敢に挑戦している私は自身のお笑いを他人に語られることが多い。褒めてくれているのはとても嬉しいけど、意図が伝わってなかったり、そこじゃないのになと思うことがあったりして、それはそれでモヤモヤしたり、批判されているのを見聞きして、鼻の穴ふくらまして怒ることもあれば、落ち込みスイッチオンからのお笑い活動閉店ガラガラになりかけることもある。なんでこんなに忙しなくなっちゃうのかはこちらに書いてるので是非ご購入いただきたい。
なんでお笑いの批評は嫌われるのかということについてたくさんの方が意見を発表してらっしゃり(終わりの会みたいに)非常に興味深かった。
昔、こちらのツイッターを見て、
めちゃくちゃ確かに!!じゃあ芸人ってプライド高めで嫌なやつなだけやないか!とかなり焦ったことを覚えている。
でもよくよく考えてみると、映画とか文芸とかって身を持ってスベるという経験がなかったり、芸人は自分という人間を切り売りしている上で、真正面にいるお客さんにスベる(=拒否)されている時点でもう辛いのにそれ以上言わないでくれ!ってなるのかなと思った。これについては赤ノ宮翼さん(元レットブルつばさ)さんやエル上田さんも記事に書かれているのでそれを読んでホッとした覚えがある。ちなみにこのツイートをされている伊藤聡さんの見解がとっても面白くてコーヒー冷めちゃいます。
私の「赤ノ宮翼」さんの初呼びがnoteだとは思ってもいなかった。
そこからお笑い批評についてのことや、ネタのこと、今日食べるご飯のこと、サウナの混み具合のことなどを考えていたら2年くらい過ぎ、このお話をいただき、それは書いてみたいと思い書かせていただいた。
サンキュータツオさん、矢野利裕さん、新道さんのインタビューを読んで、お笑いは大衆に向けていることが多く、気軽に批評しやすい。でもそこに専門性はないからただの感想になってしまうということがわかった。私が感じていたモヤモヤに輪郭をもたせてくれて、チョコソースをかけてくれた。批評家の西村紗知さんの記事もとっても面白くてお紅茶冷めてしまったし、クッキーは湿気てしまった。ブリティッシュスタイルでいくなら、チョコソースではなくクロデットクリームである。西村さんの記事を読んで批評ってこういうことだったんだという感覚になった。幽霊の感覚とてもわかる。ルールが追加される感覚もとてもわかる。全部は理解できていないだろうし、専門的にちゃんと感想を言いたいが、言えそうにないくらい馬鹿ではあるので超おもしろかった!とだけ言いたい。後は、金属さんのあのネタは私も幾度となくみているが、あのネタを分析している文字の連なりがもう面白かった。
後は、限界を読んでいて総じて思ったのは、お笑いの批評に経験があるかどうか、板の上に立ったことがあるのかどうかはとても重要な気がした。机で書いて、川の前でネタ合わせして、板の上に立って、スベるという経験をしたことがある人の意見はすんなり入ってくるが、そこを経験していない方のアドバイスは全く入ってこない。これは私がお笑いをやる前とお笑いをやった後、「スベる」ということが如何に苦痛の所業であることを思い知ったからである。お笑い芸人の全員をリスペクトした。
このことを話すときに、お笑い芸人にしか喰らわない攻撃「スベる」を理解してもらう必要があるのだが、これを理解していただくのは難しい。
最近ずっと考えて、どうやったらわかってくれるかなと思っていたのだが、多分、
「昔母がよく作ってくれていた炒め物を懐かしいから作ってお弁当に詰めて、会社で広げて懐かしいな〜と思って食べていると、『うわ何これ失敗したん?まずそう』と貶される」
「なんかこの辺おしっこ臭いよねって言われながら見られる」
「敬愛するおじいちゃんの形見のペン使ってたら『そのペンダサいな』と言われる」
「顔見て『キモ』って言われる」
くらいのショックだとは思う。これが見ている人が多くなればなるほどダメージは人数分掛け算になって感じられる。もっと本当は落ち込む。うちらのお笑いわかれへん客が悪いんや!という芸人はただの強がりである。ヤクルト1000を差し入れしてあげてほしい。というのを踏まえても、スベった芸人に対して批判をすることがどれだけ重罪なのかはわかっていただけたと思う。
にぼしいわしです。いつもありがとうございます。みなさまのサポートが我々にライブを作らせ、東京大阪間を移動させます。私たちは幸せ者です。