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a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑥

ウィルバー卿が帰ったあと、デュベルは少し渋い顔をして座っているサー・ユージーンの空の杯にワインを注ぎながら話しかけた。

「叔父上、友人とのせっかくの再会だったのに愛想悪いですよ?」

「なんだ、お前はまた「叔父上」って、聞いてたのかよ。
・・・実はな、俺はあいつが嫌いなんだ」

「「嫌い」って子供じゃないんですから・・・。
まあそれは、どうしたって反りの合わない人はいますよ。でも、一緒に戦った戦友なんでしょう?」

「ああ、そりゃ確かに一緒に戦ったさ。
前にお前に話しただろ、俺らがしくじった討伐の話をさ。あいつはその時も一緒にいた」

「え、では、かなり昔からの友人じゃないですか。私、あの方のお話は聞いたことありませんでしたよ?」

「そりゃ、話したことがなかったからな。わざわざ嫌いなやつの話なんかするかよ」

サー・ユージーンはぶっきらぼうに言ったが、酒の席とはいえ、さすがに位のある人物を悪しざまに言うのを憚る分別はあったのか、周りに聞こえないようやや声を落として続けた。

「その時の討伐相手はな、ブリガンドじゃなく魔物の類だった。
俺はその頃、まだまだ駆け出しでな。人間相手の戦闘にようやく慣れてきたころだった」

「私が最初の討伐に行ったくらいの年頃だったんですか?」

「ああ、そうだな。
今のサイラスよりも年下で、隊の中では一番下っ端だった。
それでも俺を仕込んでくれた兄貴分の戦士たちと組んでいたし、自分で言うのもなんだが剣には自信があったから魔物相手の討伐が初めてでも、どうにかなると思っていた。
だが、現実はそんな甘いもんじゃなかった。
その魔物は普段は人の姿をしちゃいるが正体は人の精気を食らうやつらで、それが古い砦にぞろぞろはびこってたのさ」

「そういう魔物がいるとは聞いていますが・・・それは人に似ているんですか?怖ろしい姿でした?」

「ああ、おっそろしいぜ。お前なんてひん剥かれて・・・あ、いや、その、うん、確かに人間に似てた。

魔法を使うだけでも厄介だったが、中には子供の姿をしているやつもいて、攻撃をためらった仲間が何人もやられた。

ジャンは俺らの上官をしていたんだが、先鋒の俺たちが苦戦している間、あいつは魔物どもから宝を略奪していた。
戦士として腕が悪かったわけじゃないが、あいつはどこの戦場に行っても戦うよりそっちの仕事の方に熱心だった。

そりゃな、倒した相手から戦利品をぶんどるのは良くある話だし、それをどうこう言うつもりはないけどな、仲間よりも略奪を優先するあいつは・・・言いたかないが、酷かったぜ。

しかもあいつはそれを気前良く振舞って、周りの者とは上手く立ち回ったから、面と向かって文句を言う者はいなかったしな。

だけど俺はな、そういうのが大っ嫌いなんだよ」
 
彼の子供のような物言いに思わず吹き出してしまった彼女を少し睨んで彼は話を続けた。

「・・・なんだよ。
俺だって、人には色んな考えややり方があるのは分かってんだ。
戦場じゃ自分の身を守れないやつが悪い。名誉なんかじゃ腹は膨れないってことは。

あの時も、略奪をしてからやって来たジャンが魔物の首領を矢で射たことで戦況が変わり、結局は俺たちも助かったんだから皮肉なもんさ」

「その魔物の首領はどうなったんですか?」

「死んだ。・・・はずだ。

その時のはっきりしたことは俺には分からない。

だがジャンの弓は生半可なものならちぎれ飛ぶくらいに強かったから、魔物だろうが無事では済まなかっただろうさ」

「そんなことがあったんですね」

「あ、すまんな、祝杯を挙げてる時にこんな話じゃ、お前の酒までまずくなっちまうな」

「いえ、良いんです。
私も叔父上とウィルバー卿のいきさつは知らなかったですし。
・・・略奪の件はまあ、仕方ないことだとは思いますけど、正直、私もそのような人を友人とは言いたくないですね」

「ま、色んなやつがいるってことさ。

結局その討伐で兄貴分たちが死んで、俺は重傷で狂っちまった。
それでも俺が生き残ったからジャンもなにくれとなく俺に便宜を図ってやろうとしてくるのかもな。

俺に負い目を感じられても、なぁ・・・」

サー・ユージーンは杯のワインを空けて気分を切り替えるようにひとつ息を吐いた。
 

~⑦へ続く

お読みいただきありがとうございます。
 
物語の解説を少し。
ブリタニアの戦士たちは様々な武器を使用して戦います。
武器は大きく分けてソード、フェンス、メイス、ボウがあり、時代が進んでムチやブーメランのような投擲武器も登場しています。
 
武器の種類は多く、武器によって得意な攻撃や振る速さの違いがあり、さらにその中にも片手で盾と使用するもの、両手で使用するものと多岐にわたっています。
 
中には素手で戦う者もいて、戦い方ではかなりの強敵も倒すことができるとか。
 
ブリタニアの戦士たちは戦いで得る戦利品だけでなく、持ち帰った特殊な素材を使って職人たちが作成する強い武器で戦えるよう各地の迷宮の中、日々冒険に勤しんでいます。
 


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