NIリサーチャーコラム #40 集計表見やすさ向上のTips ~SAマトリクスをMA1つに統合!~(2024年3月執筆)
執筆者: リサーチ・コンサルティング部 A.Y
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。
1)集計表のデータ加工について
今回のコラムでは調査実施後の分析の原点でもある集計表のデータ加工におけるTipsについてのお話をさせていただきたいと思います。
集めたアンケート結果の集計一つをとっても、集計後におけるアウトプットのデータの見せ方の工夫一つで結果の解釈のしやすさに大きな差が生じます。
集計をしてみたら、結果が分かりづらかった、見たい結果にたどりつくまでにだいぶ遠回りになった等のご経験はないでしょうか。
同じ集計をするといった工程であってもデータの見せ方の工夫一つで分かりづらかった結果が視覚的にも分かりやすい結果になるので、集計後のデータ加工は、結果を読み解く上で非常に重要な要因の一つになると思っています。
データ加工というと、例えば5段階のスケール評価でTOP2BOXやBOTTOM2BOXとして小計(選択肢のまとめ)や平均・標準偏差などの基本統計量を付加したり、「実年齢」や「○○に使用できる金額」などといった実数で回答する質問に対して一定の幅で選択肢化するなどがあり、
集計後のデータ加工をすることによって、結果の解釈のしやすさ・データの活用のしやすさに大きな差が生まれてきます。
今回は、データ加工の中でも知られているようで知らない人も意外と多い「縦マルチ表」(○○一覧表)というデータ加工についてのお話をしたいと思います。
※集計ツールや各社によって呼び方は異なりますが、以降の表記は「縦マルチ表」で統一させていただきます。
2)「縦マルチ表」とは
「縦マルチ表」とは、簡単にいうと複数の設問の集計表の一部のデータを1つの集計表に集約するという考え方です。
例えば「そう思う~そう思わない」の5段階・SAの選択肢のイメージ評価の設問が10設問あったとします。
これをこのまま集計すると下記【図①】のように10個の集計表が作成されます。
【図①】
この状態では全体的な傾向を把握したい場合、10個の集計表を見ていく必要がありデータ量が多く結果の解釈にも時間がかかってしまいます。
そこで、今回の例としてTOP2BOXを【図②】のようなデータ加工を施して1つの集計表を作成します。
【図②】
ここでは例として、TOP2BOXのデータを集約したものを作成していますが、同様のやり方で、TOPBOXやBOTTOM2BOXなどのデータを集約した表の作成も可能です。
いかがでしょうか。
TOP2BOXのデータのみ集約しているとはいえ、10個ある集計表が1つの集計表になることで、全体の結果の解釈が格段にしやすくなったと思います。
今回の例では10個の集計表としていますが、これが20個30個の集計表となると、この「縦マルチ表」のようなデータ加工は、全体の傾向を把握する目的において、より効果を発揮します。
※選択肢別に詳細の結果を見る必要がある場合は個々の集計表で見る必要があります
3)留意点
では、「縦マルチ表」を作成する上で前提となる留意点をいくつか記載します。
✓選択肢の意味合いに注意、元の数表の選択肢が全て同じであること
選択肢が同じ内容でないと、異なる意味合いを持つ選択肢が混在し正しい解釈ができなくなります。
✓データの分布に注意
TOPBOXやTOP2BOXの他、BOTTOM評価にもデータがある程度分布している場合、 TOP評価だけ「縦マルチ表」を作成してしまうと、BOTTOM評価を見落としてしまいます。
✓回答者数(n)が同じであること
1つの表で集計表を作成するため、各質問の回答者数(n)が同じである必要があります。
各質問の回答者数(n)が異なると本来聴取したい回答ベースになっていなかったり、個々の集計表と%が異なる結果になってしまいます。
※回答者数(n)が異なる場合、例えば認知者について商品を聴取していくといった質問などは、各集計表から該当部分を抜き出して対応することは可能です。
(この場合は集計後の作表といった工程になります)
【縦マルチ表に該当する設問パターン例】
4)最後に
同じ集計結果であっても、データ加工をすることによって見え方・解釈のしやすさは大きく変わってきます。
また、こういったデータ加工は「集計結果を読み解きやすくするため」「集計後のデータ活用のため」にとても重要な役割を果たしています。
今回お話しました「縦マルチ表」では、セルフ型のアンケート集計ツールだとひと手間加えないと出てこないような出力になりますが、当社の集計表では、基本的にご指示がなくても「縦マルチ表」のようなデータ加工を準備してご納品しております。
「縦マルチ表」の他にも集計表のデータ加工は様々ありますので、調査結果のアウトプットにおいて、こういう目的・イメージでデータを見たい、こういう角度でデータを見たいなどといったことの他、レポートについてのデータ加工・見せ方についても、当社の経験豊富なリサーチャーにぜひお気軽にお問い合わせください。
執筆者プロフィール
リサーチ・コンサルティング部 A.Y
前職では、主にFW部門に従事、現場では実際にアンケート参加者の方の声を直接聞きながら走り回りまわりました。
集めたアンケート結果の集計・分析に興味を持ち2013年から当社集計部門へ。
現在では食品や日用品・消費財などのメーカー様の課題解決のために集計分析~報告までを担当しています。
単に集めたデータを正確に集計~報告するだけではなく、お客様がより解釈しやすい、新たな気づきを得られるような分かりやすいアウトプットを意識して業務にあたっています。