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彼に抱きしめられる度に、傷つけたことを思い出す。
2度目の復縁。
久しぶりだねってハグをした。
彼の肩に顎を乗せて、髪の匂いを嗅ぐ。
彼は家中ホワイトムスクの香りにするから、服やら髪やら全部がその匂い。
だけど、この日だけは違った。
ツンとする体に良くなさそうな匂い。
幼い頃によく嗅いでた匂いだった。
「たばこ吸ってるの?」
「…うん」
少し答えにくそうにする彼。
後ろめたさがあるならしないでよ。
別に私はたばこをする人が嫌いではなかった。
母が私が生まれる前から吸ってたし、祖父も吸ってた。
でも、祖父が肺炎になったことをきっかけに母はぱったりたばこをやめた。
普通、禁煙ってだんだんやめていくものだと思う。
だけど、覚悟を決めた母は強く、その日からずっとたばこを手にしてない。
禁煙をして11年目になっていた。
祖父は肺炎が治ってもやめれず、電子タバコに変えて、だんだんと禁煙をした。
間近で禁煙をした人を見た私は、ただの習慣付いた行為をやめるだけではないことを知っている。
見た目や性格、生活まで変えてしまうのだ。
だけど、所詮その人が自分で決めること。
私にも影響はあるが、それも考慮した上だろう、と思っている。
まあ、吸ってないに越したことはないけど。
「いつから始めたの?」
「いや、これにはちょっとストーリーがあって」
訳の分からない言い訳を始めるのかな。
言い訳しなくてもいいのにと思いながら、聞いてみた。
1番初めに私たちが付き合った時、お互いをすごく信頼してただろうし、周りから見ても順調だった。
だけど、彼がへなちょこなのか私を大事にしてくれてるのか、それともその両方なのかわからないが、キスから先は何もなかった。
1年6ヶ月も付き合ってたのに。
キスをいつまでも恥ずかしがる彼は可愛かったし初々しかったけど、お互いのペースは合ってなかった。
だから私は、ある人からのアプローチをきっかけに彼を振った。
その後の彼はよく知らない。
LINEのアイコンが真っ白になったくらいしか。
後から聞いたのは、彼はその頃本当にどうでもよくなったらしい。
ご飯も学校も全部。
だから、友達に勧められてたばこを始めたと聞いた時は複雑な感情になった。
私が振ったのが原因だと言え、彼がたばこを始めると決断したので責任はもちろん彼にある。
それはわかってるけど、どうしても私のせいだと思ってしまう。
ごめんと言うと、決めたのは俺だから、と言う。
あぁ、復縁って元通りになれるわけじゃないんだ。
私がつけた傷はなくならないし、彼が私につけた傷もなくならない。
別にたばこは嫌いじゃない。
けど、それで肺炎になったり何か患う彼を見るのは苦しいな。
彼の髪を匂うたびに私が彼につけた傷を思い出す。
抱き締められる腕の中で、そっと涙がこぼれた。