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#3 受付スタッフの対応をデザインする

こんにちは、Soul-inです。
このnoteは院長の頭の中を言語化するnoteです。今日はスタッフの対応、特に受付対応について考えてみます。

看護師さんは医師と距離も近く、速やかに診察室で患者さんの病態を共有できますが、受付は違います。

受付スタッフは、看護師さんほど医師の中の当たり前が共有されないことがあります。それをふまえて考えたいと思います。

受付スタッフと共有が難しい理由
・院長が受付の業務(事情)に明るくない
・勤務医時代に事務とコミュニケーションをとり慣れてない
・受付スタッフは看護師さんほど疾患の病態に詳しくない
・患者さんの態度も医師・看護師相手の時とは異なることが多く、見えている光景が院長と違う

なぜ今回、受付スタッフ(事務)について話すかと言うと、上記のような理由があり、院長が受付スタッフと連携をとるためにひと工夫がいるからです。

1.クリニックの顔は受付である

クリニックの顔は院長ではなく、受付です。
なぜなら受診前の電話相談や、HPに書いてある内容の説明など、潜在顧客がクリニックのコンテンツにまず触れるとき、受付を入り口にすることが多いからです。

クリニックのすべての業務は、患者さんから始まります。

我々は患者さんの①問題を把握し、②作戦を立て、③満足して帰ってもらうを繰り返しているわけですが、診察室と受付(会計)は一般的に分離されており、患者さんもスタッフに伝える話が受付と看護師で異なったりするので、まず①問題の把握が難しいです。

受付では「いつもの薬をください」と言いつつ、診察室に入ったら「そういえばそろそろ胃カメラの予約も」となるわけです。

受付では周囲に他の患者さんもいてあまり話したくない人や、医療的なことは直接医者に言おうと思っている人などがいるからだと思われます。


先日、知り合いの内視鏡クリニックの院長からこのような相談を受けました。

「いままでやってなかったけど、今年はインフルエンザが流行ってて問い合わせも多いから、年明けは1/6から発熱外来をやろうと思ったんだよね。そうしたら、受付からすごい反対されちゃってさ……」

「今年は発熱外来やろうかな」という院長の気持ちはよく分かります。

院長の気持ち
・かかりつけの患者さんの体調不良は診てあげたい
・地域で発熱外来をやってるところが少ないから集患になる
・クリニックとしてのコンテンツを増やせる
・内科医として感染症は診療したい

ただ、前回のnoteで綴ったように、即席で発熱外来のオペレーションを組み上げるのは無茶です。受付は怒っているのではなく、分からないことだらけのものを現場に投げられて困惑しているのです。

受付の気持ち
・予約はどう分ける?時間帯は?予約枠の人数は?
・電話相談に対してはどこまで受診をOKしてよい?「きのう発熱したけど、今は下がってる」は普通の外来でいいの?
・受付の時点で待合室を分ける?それとも風邪症状の方は外で待ってもらう?
・検査でコロナ陽性の場合、お会計までどこで待ってもらう?
・インフルエンザの診断になったら、コロナより扱いは軽くてもいいの?もしすごく咳をしてる患者さんだったら?

これだけのオペレーションを当日の朝に決めるのは相当デキた院長しか難しいです。その域に到達するのは開業3院目、人生2周目くらいでしょうか。いやまあ、たまにそういう化け物みたいな強くてニューゲームみたいな院長いますが。

ほんと院長同士で話してると、みんなでハンター試験の話してるのに、ヒソカ混じってるみたいな感じになるときがあるんですよ。ジツリキの違いを思い知らされます。


ここからは具体的にスタッフオペレーションについて考えていきましょう。

大事なことは、クリニック診療とは医師・看護師・事務の三者がいて、合わせて100点を目指すということです。

医師と話が噛み合わなくても看護師さんがそっと別のところでお伝えしたり、看護師さんが渡し忘れた書類をお会計の時に事務さんが渡してくれたり、事務が間違えて予定されていた尿検査を「今日はない」と言ってしまいトイレに行ってしまったとしても、医師が「次回の外来の時でいいですよ」と言ってカバーしたり。

そうやって我々は互いの役割とキャラクターの違いでフォローしあっているのです。

ですので、院長はどのスタッフの対応についても責任もってデザインせねばなりません。いえ、しておいた方が結果的に自分の身を助けてくれます。

受付スタッフのオペレーション構築に最も大事なことは「判断してもらうポイントを明確にする」ことです。

2.スタッフが患者さんに接するシチュエーションを想像する

受付は患者さんが入ってきたらまず挨拶し、来院目的を聞き、書類のやり取りをし、最後はお会計をします。つまり患者さんの院内での体験の最初と最後は受付スタッフになります。

最初は問題を把握するところ、最後は問題をうまく締めるところです。問題の把握をするためにはある程度のフォーマットが必要なので問診票を用意します。

ここで受付に大事なことは一人一人丁寧に……ではありません。その受診者の受診目的を自院のコンテンツに当てはめ、するべきことが決まっていることかどうかを判断することです。

①保険診療(処方、検査、診察)

糖尿病や内視鏡などの専門が特化したクリニックでは患者層の傾向はありますが、それでもイレギュラーはあります。

どう体調が悪いのか、医師・看護師にタッチすべきなのか、待合室でそのまま待たせて良いものか、という次にすべきことが決まっていないケースでは誰かが考えて判断せねばなりません。

そのためどこまでは「待合室で待たせる」という判断をしてよいか、どういう状況なら資格職を呼ぶのかなどのラインを決めましょう。

例えば発熱外来であれば、受診者のケースによって待合室や来院時間を別にする必要があるかなど、最低限の問診事項と意思決定までのフローを決めておく必要があります。

そうしないと「私たちでは責任が取れないので、看護師さんが一人受付に立っててください」とか言われてしまいます。

もちろん責任など求めないのですが、「間違っていた時に怒られるのが嫌だ」という感情が起点となってそう言います。

「えっ、オレ怒ったりしないよ?」と思う院長先生もいると思いますが、事務を怒るのはたいてい看護師さんです。女の敵はいつも女なのです。

他のケースでは、院長にとって専門外のことでも受付が「お待ちください」と言えば患者さんは診てくれるのかと思って待ってしまいます。しばし待って診察室に入り「診れません」というのはあまりにもユーザー体験として悪いです。

受付スタッフは医学的な情報の聴取はできても、判断は高度なものは求められません。SOAPカルテの中でSを埋め、可能ならOを一部うめるお手伝いをしてもらう(自動血圧計でバイタルをとる、体温計を渡す)くらいに考えて、その上で診察までの流れをその都度フローチャートにしておきましょう。

②公的サービス(高齢者ワクチン、自治体の健診、がん検診)

これらはモデルとして出来上がっているため何をするかは考えることが少ないです。大事なのは「無料」のコンテンツであるので、それを利用する適性があるかを判断することになります。

その判断が出来そうにない場合は、あらかじめ予約制にする、HPに注意事項を記載するなど外出しして受付業務から切り離しましょう。

無料のコンテンツほど、受診者はサービスの内容を読まず、自分事としてとらえずすべてお任せできてしまうことが多いです。電話で相談があっても「予約制になっています」などと説明し、一段前置きを作りましょう

最も良くないのは、せっかく時間を作って受診したのに望んだサービスが受けられないことです。そのミスマッチを来院前に防ぐことを目指しましょう。

③自由診療(健診(to B)、AGA等)

これらは自院でオリジナルのコンテンツになるため、きちんと患者導線の設計が必要です。設計したことはHPなり企業担当者とのメールなりで周知すると思われますが、「HPに書いてあること」「メルマガで発信していること」などはきちんと受付に共有せねばなりません。

「HPに書いてあった」と電話しに来たのに、受付が把握していないと受付も困るし、受診者の方からもしっかりしていないクリニックだと思われてしまいます。

どう受け答えし、どうご案内するかなど、受診者の方へ伝える内容は、端々まで決めておかねばなりません。電話対応の仕方までは院長はタッチできないところだと思ってしまいますが、定期的に声をかけて振り返りましょう。

受付スタッフとの振り返り
①何に関する問い合わせが多いか
②どう答えたらよいか困ったことはなかったか、それに対しどう回答したか
③どんなクレームがあったか
④医師と話したいなど「こんなことはできないか?」と要望はあったか
⑤HPに書いておいた方が良いことは何かあったか

①②はデータ取り、③④は潜在顧客、⑤は対策です。

電話対応は今日び大きな会社ではなくなりつつありますが、クリニックではまだまだ主力です。上記のように受付の困りごとをヒアリングし、対策をすぐに考えましょう。

電話は非常に時間を食います。
受付スタッフは外来で具合の悪い方の受付をしつつ、会計もして、目の前に患者さんがいるのに電話というコミュニケーションの取りづらい中で応対もせねばなりません。電話で話さねばならない労力は極力減らす工夫が必要です。

受診者の方の気持ちを考えて、あれもしてあげよう、これもしてあげようと考えてくれるスタッフは非常に貴重で院長の強い味方です。ですが、仕事を考えることはできても、仕事を減らせるのは院長だけです。

「その説明は、HPで済ませよう」
「受診してから看護師さんが話そう」
「そこで戸惑う人が多いならメニューをもう少しわかりやすく変えよう」

など、コンテンツの内容や届かせ方をデザインすることは院長が巻き取ってあげましょう。

これはつまるところ、コンテンツ設計とは患者さんに届くところから逆算せねばならないということだと思います。


今日はここまでとなります。いかがだったでしょうか。クリニックは医師一人では、どうにもなりません。ワンオペの院長さんもいらっしゃると聞いていますが、数が増えればやはりスタッフの力の必要性を実感します。

スタッフ全員で100点を取れるように、受付スタッフにしてもらいたいこと、しなくてもよいことを院長先生は考えてあげましょう。

『アオアシ』(小林有吾/小学館)


ここまでお読みいただいてありがとうございます
😊先輩開業医の先生方や、開業志望の方、同じように雇われ院長をしている方は、見えている光景も自分とは違うかもしれませんが、あたたかく見守っていただけると幸いです🙏

あなたのクリニックが、ウハクリかつ人事労務で無問題になりますように
🍀

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