そういや、じいちゃんは銭湯に行かないね
僕は銭湯が好きだ。
特に古めかしい内装の銭湯にはグッと来る。
仕事柄いろんな街に出かけるのだが、ついでにその街の銭湯に立ち寄ることが密かな楽しみである。
さて、銭湯といえば、おじいさん達で賑わっていて、親しげに談笑しているのが風物詩だ。どの街でも変わらない。世のおじいさん達はみんな銭湯に集まっているんだろうと思わせる。
そんな中で、そういえばうちのじいちゃんは銭湯に行かないよな、とひらめいたことがある。実家に帰った際、こんな話をじいちゃんにしてみた。
「じいちゃんってあんま銭湯行かんね?」
「別に、風呂嫌いやしなあ…」
風呂が嫌い。シンプルな答えが返ってきた。
「おじいさんとは誰しも銭湯好きである」なんてひとくくりにしてはいけないと、ようやく気づいた。そりゃそうだ。あぶないあぶない。
・・・
いま僕は銭湯にいる。
一緒に湯船に浸かっているのは、“銭湯好きのおじいさん”。
僕と同じ嗜好を持つおじいさんだ。
そんなことを考えられるようになってから、他人なんだけど、心の距離がずっと近くなった気がする。
やっぱり銭湯は楽しい。