見出し画像

小説「転職王」第十三話 JMR取締役 経営企画室長

グループ本社 取締役の辞令 と 2つのミッション


(本社にて)
橋口人事部長:「高橋加奈さん、お疲れ様です。町社長がお呼びです。取締役会で、高橋さんのJMR本社取締役経営企画室長への昇進が正式に決定しました。おめでとうございます。」

高橋加奈:「ありがとうございます。これまでの経験を活かし、全力で取り組んでまいります。」(これで来年の社長就任の道も、現実味を帯びてきた。)


新たなミッション

町洋介社長:「高橋さん、これまでの功績に感謝しています。ドラッグストア事業の風土改革、スーパーマーケットでのデータ活用、そして丸橋百貨店の新業態開発。どれも素晴らしい実績です。」

高橋加奈:「ありがとうございます。各事業会社の協力があってこその成果です。」

町洋介社長:「これからも多くを期待しています。まず1つ目のミッションとして、グループ統一の新会員制度の策定に着手してください。各事業間でのシナジーを十分に活かしきれていないのが、我が社の課題です。」

高橋加奈:「承知しました。データ活用を軸に、顧客ロイヤルティを高めると同時に、全体の収益向上につなげます。」

町洋介社長:「2つ目は、ショッピングセンター事業の改革です。アパレルテナントに依存するモデルから、住居・医療・介護を包括したライフセンター事業への進化が必要です。これこそが、JMRの未来に不可欠なビジネスモデルの転換です。」

高橋加奈:「ライフスタイル全般に対応するサービスを構築し、地域に根差した価値を提供します。全力で取り組みます。」


新会員制度の設計

加奈は、まずグループ会員制度の設計に取り掛かった。これまで、ドラッグストア、スーパーマーケット、百貨店などが各自で異なるポイント制度を運用しており、顧客の利便性が損なわれていた。加奈はこれを一元化し、次のような構造を考えた。

  • 共通ポイントプログラム:どの業態でも同一のポイントを付与・利用できる仕組み。

  • 会員ステータスの段階化:全事業での利用額に応じて、会員がランクアップする特典を用意。

  • AIによるパーソナライズ:各顧客の購入データに基づき、専用キャンペーンを自動生成。

「グループのデータプラットフォームを統合することで、より深い顧客理解が可能になります。」
加奈はプロジェクトに参加する各事業のデータ担当者と連携し、外部のシステムベンダーとも協力して、システムの設計と運用プランを進めた。


ショッピングセンター改革の着手

一方で、加奈はショッピングセンター事業の再構築にも動き出した。現行のアパレル依存から脱却し、地域コミュニティ全体を支えるライフセンター構想を推進するため、以下のコンセプトを立てた。

  • 住居スペース併設:高齢者向けのサービス付き住宅を導入し、ショッピングセンター内に居住者を増やす。

  • 医療・介護サービスの提供:クリニックやデイケアセンターを設置し、地域医療のハブとして機能。

  • 生活支援店舗の充実:食料品や日用品だけでなく、文化・教育スペースを設け、幅広いニーズに応える。

「地域社会との共生を重視し、医療や介護と日常の買い物を一体化させることで、滞在時間を増やし、売上を安定させます。」
加奈は、これらの改革を進めるため、事業部門の関係者との定期ミーティングを設定し、各部門の協力体制を築いた。


補佐役に選ばれた大塩美兎

補佐役選考では、複数の候補者の中から大塩美兎を選出することを決断した。彼女は高橋加奈自身の成長の軌跡を彷彿とさせ、革新的なアイデアとリーダーシップを発揮していた。

高橋加奈:「大塩さん、あなたの発想力とビジョンに強く感銘を受けました。私たちのチームに加わって、共にグループ会員制度の策定とライフセンター事業の構築に取り組んでいただけますか?」

大塩美兎:「ありがとうございます!精一杯お力になれるよう頑張ります。」

加奈は大塩を中心に、各事業会社から選ばれたメンバーと共に、プロジェクトを推進するチームを結成した。


新たなチャレンジの始まり

経営企画室の新チームが発足すると、すぐに最初のタスクとして会員制度の試験運用を開始した。選ばれた地域の店舗でのテストケースでは、顧客の利便性が大幅に向上し、初月でポイント利用率が25%増加する結果を生んだ。

ライフセンター構想の実現に向けては、地元自治体との協力や、医療・介護事業者とのパートナーシップが進展。ショッピングセンターにおける住宅の入居予約も順調に進み、今後の展開が期待されていた。

「これは、JMR全体の未来を変える第一歩です。」加奈は自分の役割と責任を改めて実感し、次のステップへと気持ちを引き締めた。


町社長からの期待と、JMRグループ全体の成長を担うことになった高橋加奈。彼女の挑戦は、これからも続いていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?