新宿御苑の日曜日は盛況 / 23年の晩秋
俺は上京するために会社に就職した。
新人研修・初日の早上がりとともに、
新宿御苑の年間パスポートを手にしたことはいうまでもない。
だから俺のパスポートの写真はスーツ姿にしあがっている。
写真機の性能がわるいのか、風体がわるいのか
新卒とは思えないほどのシケこんだツラが写っている。
・・・
あれからずいぶんと冷え込んだ。
スーツも似合わなくなった。
だから会社をやめた。
ハア?なんてこった。
俺の誕生日に季節のみどころ情報が出てるじやねえか。
俺は花や植物にまったく疎いんだが、
これはなんかみたことあんな。
じいさんの仏壇だ。
要はホトケ。
幼俺の意識ができる前に、
ぽっくりイっちまったじいさんだから
俺の記憶はこのサザンカってわけだ。
それ以上でもそれ以下でもねえ。
新宿御苑の外周を西から回ってたら通った。
人が写真をぱしゃぱしゃしてるから
なんだって思ったら
ラクウショウとメタセコイアの交歓じゃねえか。
針葉樹で、どいつもこいつもパッと見似てんだ。
メタセコイアの葉はある種のシンメトリーになってんだな、生え方が。
ラクウショウの葉は微妙にズレている。よく見たらあ。
木肌もおもれえな。
メタセコイアの方は縦に皮が裂けてっている。
ラクウショウの方は、幾何学的に編み込まれた、感じるな、流れを。
メタセコイアはこれでもかってほど高えし、直立だ。
ラクウショウも負けてねえが、どっかグネリが、ぐつぐつとしたカオスが地中にあるに違いねえ。俺ぁ好きだ。
なんだって、この鍾乳石はよ。
ラクウショウの幹を中心に囲うように、モコモコと生えてんのは
とんでもねえ。
こっからこいつは息をするらしい。
とんでもねえ。大好きだ。
気根の肌はグロテスクだ、その内に秘めてるもんがちげえんだな。
そうにちげえない。
ツワブキの葉、めっちゃデケエ。
あの小柄でカワイイ黄色い花して
めっちゃデケエ。
花は見た目にヨらねえな。
ああ、コイツだ。
茎に触った瞬間、ビリッときた。
静電気。
季節なのか?
花だけみたら綺麗なんだよな。
想像以上にデケエ。
丈がデケエ。
写真じゃ伝わんねえ。
いや、すまん。伝わらない俺の写真がわるい。
そして茎がもはや竹だ。
やっぱり花は見た目にヨらねえな。
☈ 2023年晩秋、新宿御苑