page16 ヒマワリ
it's story of the Mr. 八木 快
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快「浴衣とか、反則だろ」
蓮「いや、
浴衣持ってるって言ったら
目印にもなるし
着てきてって言われたから」
・
いつもの公園は露店が並び
いつもと全く違う世界を作っている
夕暮れは薄紫のグラデーションで
夜へ向かう階段を作り
祭りで賑わう人波を
徐々に暗い青に染めていく。
浴衣姿の蓮と、半ば酔った勢いの俺は
賑わう人波の流れを進んでいく
快「なーんか、髪の雰囲気も
いつもと違いますね」
蓮「変だった?」
変だった?の 逆だっつーの。
額を出すようにセットされた前髪が
いつもと違う雰囲気を演出してる。
向こうから
歩いて来た浴衣の女の子達が
蓮に見惚れながらすれ違って行く
あ…また
こんな色気ダダ漏れ状態の蓮を
初対面の女の子に
会わせていいのか心底疑問。
下手に夢中にさせたって
蓮がその気になんなかった場合、
傷つくのは相手の女の子だ。
分かってんだろうか
その辺りの事情を。
この男は本当に…
快「で? 何故に一輪のヒマワリ?」
蓮「目印に持ってくって約束した」
ほら、
また数人の女の子達が振り向いてく
蓮「で、そっちこそ
珍しくメガネなんかかけて」
快「ワタシは蓮を守るボディガード
ですからね」
蓮「ボッ ボディガード!笑」
快「感謝して欲しいよ。
ビール2杯で引き受けてんだから」
ははははは
蓮「3杯だろうが 笑
変な所を誤魔化すなよ」
ドン
「あ、すみません」
「いや、こちらこそ」
もの凄く派手な服の男と快は
すれ違う瞬間にぶつかった。
ボタニカル柄のセットアップに
黄色のサングラス
おまけにサンダルは
多分あえての左右で色違いだろう
蓮「快、ちゃんと前見て歩こうか」
快「ボディガードだから
護衛したまでだ」
蓮「俺のせいかよ 笑」
・
それにしても蓮は
どんだけその子を気に入ってんだよ
普段なら女の子のためにここまで
しないだろ。
汐音さん以外には・・・
・
人波を泳ぎながら前を向く蓮の横顔に
霧状の水滴が涼しげに降り注ぐ
蓮が言ってた待ち合わせ場所は
この広場だったはず。
二人でぼんやり噴水を見つめた
噴水から吹き上がる水は
時間を追うごとに高さを変える
祭りの街灯が鮮やかさを増して
日が落ちた事を知った。
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