キヅタちゃんが死んだ話 〘6〙

 今日は学校に、キヅタちゃんとおそろいのクリップをつけていくの! 早く朝の準備をして学校に行きたいなぁ。キヅタちゃんは今日も誰かと話してるかな? でももうクリップがあるから安心! これはわたしとキヅタちゃんの友情をつなぐ物だから! ランドセルを背負ってドアを開ける。行ってきます! キヅタちゃんに早く会いたい!

 わたしが教室に入ると、キヅタちゃんは「おはよう」と挨拶してくれた。キヅタちゃんの前髪には、レモンがついた黄色のクリップが。キヅタちゃんすごく似合ってる! わたしが挨拶を返したら、キヅタちゃんは笑った。すごいかわいい。写真に撮っておきたかったなぁ。……あれ、でもそれはだめだよ。友達じゃなくてファンってことになっちゃうから。いや、でも……一応写真は一緒に撮ったし、おそろいの物も買った。お泊まりもした。これは友達のすること。だからわたしはキヅタちゃんと友達……。だから大丈夫なはず。だけどこのキヅタちゃんの笑顔はかわいいし……。えぇ? わたしはキヅタちゃんと友達がいい。だから、わたしは友達のすることをする。ただそれだけだよ。ファンになんてなりたくないもん。でも、キヅタちゃんってわたしよりもかわいいし、きれいだし、賢いし、性格もいいし。だからこれくらいしかたないと思うんだよね。でも、わたしは友達がいい。ファンは嫌だ。これはファンのする行動だよ。だからだめだよ。いや、もしかしたら、わたしは友達からファンに変わってきてるのかも。いや、わたしはキヅタちゃんのファンなのかもしれない。多分、キヅタちゃんにたくさんのファンができてからずっと。それから、わたしは前から思っちゃったよ。キヅタちゃんは憧れの存在でもあるって。よく考えてみれば、憧れって完全にファンだよね。ファンが言うことだよね。やっぱり、本当はずっとファンだったのかも……。

 実はもともと転校生だったキヅタちゃんだけど、初日の自己紹介のあとにすぐたくさんの人に話しかけられたわけじゃないよ。まぁ何人かはいた。ファンが増えてきたのは、授業での発言とか、先生からの褒め言葉とかでキヅタちゃんという子がみんなわかってきた頃から。あとは、元々話したいと思ってたけど、わたしとずっと一緒だったし隣の席だったから、わたしがじゃまで話しかけられなかったのかな。席が離れなきゃよかったのに。それで、わたしはキヅタちゃんがたくさんの子に話しかけられて、すごいなって思って、キヅタちゃんが羨ましくなったんだ。そうだよ。わたし憧れてたんだよ。じゃあ友達じゃないね……。

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