キヅタちゃんが死んだ話 〘1〙


 キヅタちゃんと初めて喋ったとき。

「あのさ、そのヘアピンかわいいね!」

 前髪につけていた、ねこのヘアピン、あれから大切に机の中にしまってるんだ。こんな普通の会話だったけど、わたしにとっては大事な思い出だよ? キヅタちゃんとわたしは、このキヅタちゃんの一言から仲良くなったんだ! 学校の休み時間はいつも一緒に遊んでたし、席も隣だったから、授業中の話し合いの時間では二人でこっそり授業に関係ない話をしたりしてた。それが毎日続いてたはず、なんだけど……。わたしと席が離れてから……キヅタちゃんはね、たくさんの友達に話しかけられるようになって、段々話せる時間が減ってきちゃったんだ。「キヅタちゃんだってたくさんお友達つくりたいでしょ?」ってお母さんは言ったけど、そうじゃないよ。キヅタちゃんは自分でつくろうとしたんじゃないよ! キヅタちゃんはみんなに話しかけてもらっただけだから。わたしの時とは違って、キヅタちゃんは自分から話しかけに行ってないから! それで……人気者になっちゃったんだ。わたしは嫌だったよ。

 キヅタちゃんはどう思ってたのかな? わたしの他に友達、欲しかったのかな? ふたりきりでしゃべる時間が減ると、なんだか不安になる。そのうち、キヅタちゃんと一生話せなくなるんじゃないかって。考えすぎって思うけど、やっぱり不安だよ。キヅタちゃんの友達はわたしだけだって思ってたのに、気づいたらキヅタちゃんの周りには友達が増えてるんだ。それで、前から友達だったわたしとは全然話せなくなって。本当は私以外に友達はいらないんだけどなって、キヅタちゃんには思っててほしいんだけど……。わたしもそう思ってるからさ。キヅタちゃん以外に友達はいないしいらないんだよ。キヅタちゃんも、そう思っていてくれていますように。


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