The Jam / Setting Sons (1979)
パンクやモッズの枠を超え、ブリティッシュ・ロックの金字塔となった前作「All Mod Cons」から1年。ザ・ジャムの4作目は、彼らがブリティッシュ・ロック・バンドとして”安定期”に入ったことを示した傑作。
ブルース・フォクストン作の7曲目と、ザ・フーもカヴァーしたマーサ&ザ・ヴァンデラス"Heat Wave"以外はポール・ウェラーによる楽曲が占めている。
当初コンセプト・アルバムを目指していたこともあって、戦争を背景にした"Little Boy Soldiers"や"Wasteland"、現実社会の現実的な人生を描いた"Burning Sky"や"Smithers-Jones"、無鉄砲な若者の姿が印象的な"Thick As Thieves"や"Saturday's Kids"、”The Eton Rifles”など、テーマや背景、構成にもこだわったであろう楽曲が粒揃いで詰まっている。
相変わらずソングライターとしての才覚が冴え渡っているウェラーをバンドの柱としているのは当然だが、リック・バックラーの正確なドラムスとフォクストンの太いベース・ラインも特徴的で、骨太なバンド・サウンドには一皮剥けた感がある。
権力や不条理に反抗し、庶民の日常を生々しく瑞々しく切り取り、皮肉めいた言い回しでクールに決める彼らに、当時英国中の若者が夢中になっていたことも頷ける、痛快なロック・レコード。
ザ・ジャムの最高傑作といえば3作目なのだろうけど、4〜5作目も素晴らしい。
楽曲の質が高く、詞も鋭く、歌唱も演奏もクールであると同時に誰よりも熱い。
尖ったセンスのバンドが相次いで登場した70年代末、ザ・ジャムがイギリス最強最高のロック・バンドであったことは言うまでもない。