Led Zeppelin / Led Zeppelin (1969)
1970年代のレッド・ツェッペリンは、60年代におけるビートルズに匹敵する人気と実力、存在感と影響力を持ったバンドであり、そして本作は言わずと知れたその傑作デビュー・アルバム。
ヤードバーズでの活動に限界を感じたジミー・ペイジが、セッション・ミュージシャンとして活躍していたベーシスト/鍵盤奏者/アレンジャーのジョン・ポール・ジョーンズと組むことで盤石なサウンド・クリエイター陣が揃い、そこに当時は無名のヴォーカリストのロバート・プラント、ドラマーのジョン・ボーナムを加えてスタートしたツェッペリンは、すぐに各パートの”理想形”の集合体といえるスーパーバンドへと飛躍を遂げる。
本作は1作目にしてすでに「ハード・ロックの元祖」としての音楽性だけでなく、ブルーズやアコースティック、トラッド・フォーク、ワールド・ミュージック的要素など多彩な音楽的素養を示すとともに、かつてなく屈強なギター・リフや劇的な曲の展開力や斬新なサウンド・アレンジに、プラントの強靭なハイトーン・ヴォーカルとボンゾの爆発的なドラムが入り乱れ、ペイジ言うところの「未知の音楽」としての革新性と、来たる70年代ロックの”巨大化”の発火点となるエネルギーと衝動性が確実に胎動している。
激動の60年代において複雑・難解になりかけもした当時のロック・シーンにおいて、ハード・ロックの音圧といわゆる「メロディとしてのリフ」は聴いていて単純に気持ち良く、本作がロックに"肉体性”を取り戻した意義はあまりにも大きいし、その衝撃の大きさは計り知れない。
なーんてそれっぽいことを書いているけど、果たして僕は本当にツェッペリンの魅力を理解しているのか疑問に思っている時期が長かった。
特にファンの多いバンドだし、迂闊なことは言えないなと。
でも、古き良きブルーズ系の音楽を一通り(?)通過した耳であらためて聴いてみると、その凄さがよく分かった。ような気がする。
(初期の)ツェッペリンってハードでヘヴィだけど決してファストではない。どっしりとした強靭なグルーヴの上に得体の知れない屈強な音を不安定なように見えて絶妙なバランスで積み上げている。石造りの城みたいに。
ロックの代名詞のようなギター・リフやヘヴィなサウンドだけじゃなく、スティール・ギターやハモンド・オルガン、ティンパニなど多彩な楽器を効果的に使って、文字通り「幻惑されて」しまうのもまた大きな魅力の一つ。
その意味では、本作は「ハード・ロックのプロトタイプ」というよりは、この先大きく広がっていくツェッペリンというバンドの特大の可能性を秘めた原石なんだな。しかもこの時点で完成度だって頗る高い。
プラントの声やボンゾのドラムやペイジのギター・リフなどの一聴してすぐ分かる部分だけでも充分に凄い上に、ペイジの創造性とジョンジーの”編集能力”が肝になっている。そりゃデビュー作とはいえ凄いレコードが作れるよなと今更ながらあらためて納得。
やはりツェッペリンといえば渋谷陽一氏の愛情と愛着が全面に押し出された熱い批評。
読んでると聴きたくなるよね。
渋谷さん、早く戻ってきてくれ!