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David Bowie / Space Oddity (1969)
アポロ11号の月面着陸と同じ1969年にリリースされた本作は、「2001年宇宙の旅」にインスピレーションを受けた永遠の名曲"Space Oddity"をタイトルに据えた、デヴィッド・ボウイにとって”再デビュー作”となる通算2作目。
アーティストとしての実質最初のアルバム(リリース当初はセルフ・タイトルだった)が「宇宙の孤独」をテーマにした一曲から始まっているのが実にボウイらしい。
その後長く活動を共にする盟友トニー・ヴィスコンティを初めてプロデューサーに据えた本作は、時代を反映したディラン以降のフォーク・ロック・スタイルをメインに、浮遊感のあるサイケやゴスペルやストリングスの要素も取り入れ、ヒッピー・ムーヴメントやサマー・オブ・ラヴといった当時の文化についても取り上げ、繊細なニュアンスを持つシアトリカルな歌唱も表現力を増し、シンガー/ソングライターとしてのボウイのオリジナリティの原点を刻んでいる。
全盛期のボウイを象徴する表現方法である「ペルソナ」あるいは「オルター・エゴ」を生み出す前の”素”のストーリーテラーとしての才覚が、哲学的なものから世俗的なものまで様々なモチーフを持ち出しながら、鮮やかな手腕で発揮されている傑作。
まだ試作段階のようだった1作目(とはいえメロディには光るものがあった)から2年余り。
真のデビュー作とも言われる本作は、フォーク・ロックやサイケの影響下にある、ボウイとしてはかなりオーソドックスな曲作りがなされている。
しかし、「スペース・オディティ」が世に出たことはあまりにも大きく、月面着陸という歴史的な出来事とも運命的に(意図的にともいえるけど)共鳴し、(それ以外の曲の同時代的な作風とは裏腹に)時代の先駆者としてのイメージにも繋がったのだろう。
そしてボウイは驚異の70年代黄金期へと向かう。