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Suede / Suede (1993)
フロントマンのブレット・アンダーソンを中心にロンドンで結成されたスウェードのデビュー・アルバムは、当時のデビュー作最速売上記録を樹立し、栄えあるマーキュリー賞にも輝いた。
まだまだグランジが猛威を振るう1993年。ブリットポップ前夜、異端の存在ながら英国らしいロックを取り戻した、UKロック史においても重要な作品。
挑発的なアルバム・ジャケットが示すように、ブレットの妖艶でナルシスティックな歌唱と、極端で倒錯した性(この表現は今の時代にはそぐわないか)などタブー視されがちなものに光を当てた詞による頽廃的で耽美な世界観が、初代ギタリストのバーナード・バトラーのグラマラスに”歌う”ギターにより劇的にポップに輝き出す。
アンダーソン&バトラーの妖しくも美しいコンビネーションは、70年代のボウイ&ミック・ロンソンや80年代のモリッシー&マーの系譜を継いでいる。
一瞬身構えながらも、一度聴くとやみつきになる魅惑のメロディはまさに英国ロック。シングル曲はどれも強力だし、アルバムの終わり方も美しい。
今日で30周年を迎えたスウェードの1作目は、93年屈指の名盤。ブレットの歌い方は好き嫌い分かれるが、このポップ・センスは抗いがたい。
ヴェルヴェッツのような頽廃と耽美と危険な香りを湛えつつ、グラム・ロックの煌びやかさと妖艶さも併せ持ち、そしてメロディは間違いなく、英国ロックの伝統を引き継いでいる。