【創作詩】捨てる
「捨てる」
髪を切り、髪を捨てる
不要な死んだ細胞のいくらかを切り、捨てる
不要な自分のいくらかを切り捨てる
爪を切り、捨てる
不要な死んだ細胞のいくらかを切り捨てる
いらないと言っても増殖し押しつけてくる因縁を断ち、捨てる
ピアスの穴を開ける
不要な生きた細胞のいくらかを殺し、捨てる
不要な自分のいくらかを殺し捨てる
言葉を書き、捨てる
不要な死んだ心のいくらかを切り捨てる
不要な生きた心のいくらかを殺し捨てる
捨てた言葉を拾う
必要な死んだ心のいくらかを生き返らせる
それをもう一度だけ愛してみてから、
やっぱり不要だったと念入りに殺し直し、捨てる
臭わないようビニール袋に入れきつく口を縛って蓋付のゴミ箱に、捨てる
そして必要な生きた心のいくらかも殺し、
殺し殺し殺し殺してなお死なず、
死に死に死に死んでなお生の終りに冥い人間に、
しがみついて啼く脂ぎった蝉のような自分ごと、
捨てる
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?