【創作短編】megumo #3
<参>
ここに到る頃には、もはや、まともな医者に診てもらおうなどという気持ちは、愈々しなくなっていた。
普通の皮膚科なり内科なりへ行ってみたところで、解決する望みは殆ど無いだろうと確信された。精神科に回される事はなお耐え難かった。
しかし蜘蛛は容赦なく日に日に成長を続けていく。
日本国内には、まず生息してはいないだろう程に大きくなり、丸々と肥え太っていった。このままでは服を着ても隠せなくなるし、明らかに、おれの生命が危険だった。
おれは無駄とは知りながら、市販の塗り薬を片っ端から、あらゆる種類試してみた……出来物や虫さされに付けるような気軽なものから、ステロイド剤、果ては「殺虫剤」さえ、垂らしてみた…………しかしすべてが徒労に終わった。
どうせ何も感じないのなら……と、
ある日、おれは鋭利なナイフを持ち出して、蜘蛛の胴体に突き刺した。途端に大量の血が溢れはじめ、おれは眩暈を感じてナイフを取り落とした。冷静さを取り戻してみると、そんな行為は確かに自殺に他ならなかった。おれは頭さえおかしくなりだしたのだろうか?と、そんな考えが芽生える先から打ち消して、おれは外見上は少なくとも、普段通りの生活を続けていた。
傷は、次の日にはもう跡形もなかった。
ここから先は
2,515字
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?