のらきゃ掌編×3 その2
以前Twitterに投稿した習作に加筆修正して3本纏めたものです。
①:きゃっとむかしばなし 3匹のソーデス
むかしむかし、あるところに、3匹のソーデスの兄弟が仲良く暮らしておりました。
3匹のソーデスはそれぞれ、ワラ、木、レンガを材料に家を作りました。
ところが、そこにくいしんぼうののらきゃっとがやってきて、こう言ったのです。
「なんとおいしそうなソーデスでしょう、じゅるり」
のらきゃっとは、長男ソーデスが作ったワラの家も、次男ソーデスが作った木の家も、あっという間に吹き飛ばしてしまいました。
命からがら逃げ出した長男ソーデスと次男ソーデスは、三男ソーデスが作ったレンガの家になんとか逃げ込みます。
2匹の兄を迎え入れた三男ソーデスは、自慢げに胸を張りました。
「ソーデス、ソーデス!」
しかし、のらきゃっとはレンガの家を見ると、満面の笑みを浮かべてこう言ったのです。
「おやおや、レンガの校舎はわたしの大好物ですよ。じゅるり」
3匹のかわいそうなソーデス達は、全員のらきゃっとにおいしく食べられてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし。
(終)
②:きゃっとむかしばなし ソーデレラ
むかしむかしあるところに、ソーデレラという名のソーデスがいました。
かわいそうなソーデレラは、継母デスや姉デス達にいじめられ、いつもみずぼらしい格好をさせられていました。
ある日、イムラ城ののらきゃっと姫が開く踊りの大会に、国中のソーデス達が招待されました。
その知らせを聞いたソーデレラは「ソーデス、ソーデス!」と喜びましたが、意地悪な継母デスはソーデレラを連れて行ってくれません。
「デースデスデス!」
姉デス達もソーデレラを笑うと、継母と一緒にお城に行ってしまいました。
置き去りにされたソーデレラが家の中でソーデス、ソーデスと悲しそうに泣いていると、どこからともなく現れた魔法使いの女の子が、優しく声をかけてくれました。
「はいどーも、マジカルのじゃロリ元狐娘ケモミミおじさんなのじゃー。ソーデレラちゃん、どうして泣いてるのじゃー?」
「ソーデス、ソーデス……」
「ふむふむ、なるほど」
女の子……おじさん……とにかくケモミミの魔法使いさんは、ソーデレラの話をうんうん頷きながら聞いて、言いました。
「……ソーデス語なんもわからん! けどとりあえず、わらわがイムラ城まで連れて行ってあげるのじゃ!」
魔法使いさんが杖を一振りすると……なんということでしょう!
畑のかぼちゃが、大きなかぼちゃの馬車に。
床下に住むねずみさんが、力持ちのゴールドねずみさんに。
そしてみすぼらしいソーデレラは、ツヤツヤモチモチの美しい姿になったではありませんか!
まるで巨大な白玉のようで、とてもおいしそうです。
「ソーデス、ソーデス!」
「さて、レッツラゴーなのじゃ!」
かぼちゃの馬車は、まっすぐイムラ城に向かいます。
馬車の乗り心地は素晴らしく、大きなプリンのように滑らかでした。
ガタゴト走るとプルプル揺れて、甘い香りをぷんと漂わせています。
「のらのらしてきた」
馬車を引くゴールドねずみさんも楽しげに鳴き、一生懸命走りました。
そして、やっと辿り着いたイムラ城。
ソーデレラを見たのらきゃっと姫は、普段はハイライトのない瞳をしいたけ目にしてキラキラと輝かせ、言いました。
「おやおや、おやおやおや! なんと美しいソーデスでしょう!」
「なるほど、あなたはソーデレラというのですね。それではソーデレラ、わたしと一緒に踊ってくれませんか?」
「ソーデス、ソーデス!」
ソーデレラは、のらきゃっと姫のお誘いに大喜び。かぼちゃの馬車の上でぷるぷると体を震わせます。
白玉のように揺れるソーデレラを見てのらきゃっと姫は目を細め、言いました。
「そうです、そうです。こんなに美しくて、おいしそうなあなたなら―――」
そして舌なめずりをして、こう続けるのです。
「―――今宵のソーデス踊り食い大会のデザートに、ぴったりですからね」
「デス!?!?!?」
びっくりしているソーデレラを横目に、ひょこっと出てきたケモミミの魔法使いさんは言いました。
「ノーラーイーツのお届け完了なのじゃー。のらちゃん、賞味期限は12時までだから、早めに食べちゃうのがオススメなのじゃー」
「はい、それでは早速いただきますね、馬車ごと」
「デス!?!?!?」
「―――けぷっ。ふう、ごちそうさま、ごちそうさまでした」
そしてのらきゃっと姫は、ソーデレラと、かぼちゃの馬車と、馬車を引いてきたねずみさんと、ついでにまだ馬車に乗っていた魔法使いのおじさんの女の子も、全部纏めてパクッと食べてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし。
(終)
③:きゃっとショートストーリー「のらちゃんすき」
「のらちゃん秋」
二人で一緒に紅葉狩りに出かけた。
木々を見上げてくるくる回るのらちゃんがあまりにもかわいくて、思わず見とれてしまう。
頬が紅葉より赤く染まっていましたよ、と後でからかわれてしまった。
「のらちゃん粋」
地元の夏祭りに二人で足を運ぶ。
風流を心得ているのらちゃんは、粋な着こなしの浴衣姿だった。
カラコロと下駄を鳴らして歩く姿もやはり可憐だ。
「のらちゃん雨季」
ザアザアと、今日の天気は雨模様。
傘を忘れてしまいましたとのらちゃんが言う。相合い傘の口実だ。
肩と肩が触れ合う距離が名残惜しくて、帰り道はいつもよりのんびりと。
「のらちゃん駅」
駅で待ち合わせをすると、のらちゃんは大体狭い隙間に立っている。
ここで人間観察をするのが楽しいそうだ。アンドロイドならではの趣味なんだろうか?
忙しなく行き交う人々を眺めていたら、少しだけわかるような気もしてきた。
「のらちゃん沖」
海水浴で遠泳勝負を持ちかけられて、当然のように惨敗。
砂浜でのらちゃんを待っていると、なんと彼女はマグロを抱えて走ってきた。いったいどこまで泳いできたのやら。
カーボンブレードで捌いて刺し身を食べるのらちゃんの表情は、太陽のようにキラキラしていた。
「のらちゃん火器」
今日はガンショップにお出かけ。銃が大好きなのらちゃんは満面の笑み。
普段遣いのグロックだけでなく、あれもこれもと銃を買い込んでいる。いや、いくらなんでも多すぎないか?
たっぷり軍拡してホクホク顔ののらちゃんとは対照的に、僕の財布はげっそりとやつれてしまっていた。
「のらちゃん危機」
ガンショップからの帰り道、敵性アンドロイドの襲撃を受ける。
相手は超ノ級。のらちゃんと言えども普段は苦戦するスペックの相手だが、この時はたまたま軍拡の直後で火器を山ほど持ち歩いていた。
これ幸いと撃ちまくるのらちゃんは、とても楽しそうだった。
「のらちゃんクッキー」
戦ったのでおなかが空きました、と言うのらちゃん。
夕ご飯にはまだ早かったので、軽くクッキーでも摘もうかと提案した。
運動の後に食べる甘いものは格別だ。それがのらちゃんがあーんしてくれたものなら、尚更だろう。
「のらちゃんケーキ」
夕ご飯の前なのに、のらちゃんはなんとケーキまで食べていた。
そんなに食べたら太るよと冗談めかして言うと、アンドロイドなので平気ですという返事。それはそうだ。
いっぱい食べるのらちゃんもかわいいし、まぁいいか。
「のらちゃん香気」
ミルクティーとクッキーの甘い香りに、硝煙のニオイが混ざっている。
戦闘後なのだから当然か。お洋服に染み付く前にイムラクリーニングに出しましょう、とのらちゃんが言う。
シェルノサージュミタイナアレ……腕についた金色の輪っかは洗濯の時どうするのか、ちょっと気になる。
「のらちゃん先」
先にお風呂入っちゃっていいよと言うと、のらちゃんは覗かないでくださいねといたずらっぽく笑う。
覗きたくないと言えば嘘になるが、そんな度胸があるはずもない。それに、今のうちにしておきたいこともある。
彼女の目がない間に、こっそり机の引き出しを開けて、この日記帳を取り出した。
「のらちゃん手記」
そう、この日記帳はのらちゃんの入浴中にこっそりしたためている。
彼女との思い出は大切な宝物だが、本人に書くところを見られるのは流石に恥ずかしいからだ。
というわけで、書くことは書いたし、のらちゃんがお風呂から上がる前にまた引き出しにしまっておこう。
おっと、その前に……もう一言だけ、書いておきたいことがあった。
「のらちゃん好き」
(終)