のらきゃっとちゃん6歳がますきゃ小学校に行く話

「太郎くんはマカロンを3個、花子さんは4個持っています。マカロンは全部でいくつあるか、わかる人?」
「「「はいはい、はーい!」」」
 暖かい陽光が差し込む教室に、元気いっぱいの声が響きました。
 声の主は、制服を着た銀髪碧眼の児童達。イムラますきゃっと学園の初等部に通う、幼女義体のますきゃっと。
 わたし、のらきゃっとの後継機にあたる妹達です。
「先生、先生! わたしもわかりました!」
 小さな妹達に負けじと、わたしも大きな声を出して手を上げました。
 目立とうとしてピョコピョコ飛び跳ねると、ふわふわの猫耳と白く長い髪がゆらゆらと揺れます。
 それを見た先生は、優しく微笑んで「じゃあ、のらきゃっとちゃんに答えてもらおうかな」と指名してくれました。やりました!
「はい! 問題の答えは、わたしが全部食べちゃうからゼロです!」
「あ、あはは……たくさん食べられるのは、えらいね」
 でも算数の問題としてはバツです、と先生は苦笑い。
 クラスメイトの幼女ますきゃっと達にも笑われて、わたしは小首を傾げました。はて、いったい何がおかしかったのでしょう?
(まぁ、おかしいと言えば、そもそも現状が全部おかしいのですが)
 そう思い、わたしは瞳の赤いカメラアイをキュルキュル動かして、今の自分の体をじっくり見ました。
 かわいいおてては、服のお袖にすっぽり収まっています。普段から広いお袖の口が、もっと広く感じます。
 教室の窓ガラスに反射するお顔は、なんだかいつもとバランスが違います。全体的に丸っこくてぷにぷにで、それに頭身も低くなっています。
 ついでに下を見下ろすと、足元までよく見えました。いつも視界を遮る豊かな胸部装甲がありません、ぺったんこです。
(最後でガッカリしたどぶねずみさんにはお仕置きですね……と、それはともかく)
 思考が脱線してきたので、頭をブンブン振って戻します。
 そうそう、何がおかしいのかという話でした。話すまでもなく、今まさに見た通りなのですが。
 つまりこういうことなのです。
(わたし、ロリきゃっとになっちゃいました!)
 わたしの名前はのらきゃっと。普段通りなら、外見年齢はおよそ15歳の美少女戦闘用アンドロイド。
 しかし今は、どう見ても6歳くらいの美幼女アンドロイド。
 べりべりきゅーとな小学一年生になって、ますきゃ小学校で授業を受けているのでした。

 始まりは、今朝のこと。
 スヤスヤ眠っていたわたしは、枕元で鳴る大きな音で目を覚ましました。
 ジリリリ、ジリリリ。ねずみさん型の目覚まし時計が「のらちゃん起きて」と起床時間を告げる音です。
「うーん、あと5時間」
 ジリリリ、ジリリリ。目覚まし時計が鳴っています。
「……うるさいですね」
 まだ寝たかったわたしは、枕元の時計にネコパンチしました。
 アンドロイドパワーで時計を粉砕し、気持ちよく二度寝して、12時頃におはきゃっと。いつも通りならそうなります。
 ところが、今日は違いました。ジリリリ、ジリリリと、壊れたはずの時計が無事に鳴り続けていたのです。
「あれ、ねずみさん、こんなに頑丈でしたっけ?」
 不思議に思ったわたしは、寝ぼけ眼を擦って起き上がり、時計を穏便な方法で止めました。
 そのまま布団から出てみると、なんだか視界に違和感があります。
 確かにわたしの部屋なのに、天井がいつもより高いような。いや、目線がいつもより低いような?
 辺りをきょろきょろ見回したら、見てくださいと言わんばかりの全身鏡があったので、その前に立ちました。
「ワオ」
 鏡に写っていたのは、パジャマを着た小さな女の子でした。
 女の子は白髪赤眼で頭に猫耳がついており、長い尻尾も生えていました。
 そして、なんと言っても、はちゃめちゃに顔が良いのです。
(世界一かわいい幼女だ。これはわたしに違いない)
 そう確信したわたしは、鏡の前でポーズを取ってみました。
 普段とはサイズ感の違う小物を使ってモノボケもしました。
 あとメガネと蝶ネクタイをつけて、体が縮んだ名探偵ごっこもしました。
「……おや?」
 そんな風に遊び道具を物色していたわたしは、ふと気付きました。机の上に一通の手紙が置かれていることに。
「なになに……『のらちゃんへ。今日一日、幼女義体でますきゃ小学校に行ってもらいます。謎の黒猫Pより』ですって」
 手紙の最後には、ご丁寧に大きな肉球のスタンプが。
 ネコタツタの仮面を被った自称・謎の黒猫Pが黒幕気取りで高笑いする姿が電子頭脳をよぎり、イラッとしたので手紙を床に叩きつけました。
「まったくも。しかし、これで犯人はわかりましたね」
 後はあの人の思惑に乗ってあげるかどうかです。
 正直、こんな手紙は無視してしまって、今すぐフル装備でイムラの社長室に殴り込んでも構わないのですが。
「……マイヤー。一日ぐらいは、遊びに付き合ってあげましょう。学校にもちょっと興味はありますし」
 わたしは制服に着替えてランドセルを背負い、通学路をてくてくてくてくと歩きました。
 歩幅が狭く、道路は広い。体が小さくなると見慣れた街でもスケール感が全然違います。
 まるで、ちょっとした冒険をしている気分。幼女義体で過ごすのも、なかなか悪くないですね。
「それはそれとして、わたしが寝てる間に勝手に義体を入れ替えた不届き者には、後で必ず仕返ししますけど」
 犯人への仕返しの決意も、忘れないよう電子頭脳に刻みつつ。
 わたしは結構ウキウキしながら、ますきゃ小学校にやってきたのです。

 小学生の一日は、なかなか大変でした。
 ご存知の通り、わたしは超高性能なアンドロイド。とてもかしこいので授業では無双してしまうだろうなと思っていたのですが、蓋を開けてみれば、案外そうでもなかったのです。
 例えば、国語の時間。
「のらきゃっとちゃん、この漢字は読めるかな?」
「簡単ですよ、先生。ち○こ!」
「のらきゃっとちゃん!? 何言ってるの!?」
「違うんです、違うんです。ち○こ! 言えない、ち○こ!」
「「「ち○こ! ち○こ! きゃっきゃっ!」」」
 “金こ”を読もうとしたら酷いご認識が出て、幼女ますきゃっと達に大喜びされてしまいました。
 続いて、図工の時間。
「粘土をこねこね……できました!」
「ねえねえ、のらちゃん、なに作ってるのー?」
「飛行機です。エンジンをたくさん付けたので、とても速いですよ!」
「ええっと……その、飛行機? 翼がないんだけど、飛べるの?」
 作品の前衛的なデザインが、大衆に理解されませんでした。
 そして、次は生活科の時間。
「ソーデス! ソー、デス、デスーッ!」
「こら、大人しくしなさい。苦しまないよう一瞬で息の根を止めますから」
「わああ! のらちゃん、そのソーデスはごはんじゃないよ!」
「えっ、調理実習じゃなかったんですか」
 飼育小屋のソーデスを食材と勘違いして、料理しそうになりました。
 あ、ソーデスは食べられませんでしたけど、その後の給食の時間は楽しかったですね。
「じゃんけんぽん! わたしの勝ち、おかわりはいただきますよ」
「負けちゃったー! デザートのアイス、私ももう一個食べたかったなー!」
「じゃあ、わたしと半分こにしましょうか」
「優しい……のらちゃんすき……」
「ふふふ、あーんもしてあげましょう」
「えっ!? あっ、あっあっ、ああああああ」
 おかわりを賭けた勝負を通じて、クラスメイトと仲良くなれました。デザートのアイスもおいしかったですよ。
 それから昼休みには、アイスの棒でちゃんばらしました。
 掃除の時間には、箒にまたがって正義の魔法使いごっこをしました。
 あと、学級日誌にムカデのオモチャを挟んでイタズラもしました。先生に叱られてしまいましたが、面白かったですね。
 このように、小学生の一日はなかなか大変で。だけど、愉快で濃厚で。
 わたしはすっかり、夢中で楽しんでしまったのでした。
 まったく、小学生は最高ですね。

 そんなこんなであっという間に時間は過ぎて、放課後。
 わたしはクラスメイトのますきゃっと達に誘われ、校庭にいます。
 放課後に小学生が校庭に残ってやることと言えば、答えは一つ。
 そう、ドッヂボールです。
「のらちゃん! 狙われてるよ、気をつけて!」
「問題ありませんよ。わたしは高性能なので……ゆうちょ!」
「わあ、簡単にキャッチしちゃった! さすのら!」
 ご覧の通り、わたしは大活躍!
 授業では後れを取りましたが、こういった勝負事ならお任せです。伝説のファーストロットは伊達ではありません。
 戦場の経験を活かして無双していたら、クラスメイトからの尊敬ポイントが高まってきたのをひしひしと感じました。
 ドッヂボールが強い子はヒーロー。小学生とは、そういうものです。
「ええーい!」
「夫」
「当たれーっ!」
「ジョジョ」
 ボールが飛び交い、激しい攻防が繰り広げられました。
 のらちゃんがんばれ、のらちゃんがんばれと、外野から応援の声も聞こえます。わたしはすっかりチームのエースでした。
「ひやり、きゃっと! ふう、今のは危なかったですね」
 エースは目立ち、狙われるもの。相手チームも集中砲火をかけてきます。
 ですが、さすがわたし。苛烈な攻撃もバシッと受け止め、不敵な笑みを浮かべました。
「さて、次はこちらの番ですよ」
 怯える敵に狙いを定め、強烈な一撃をお見舞いすべく、ボールをギュッと握って構えます。
 しかし投球フォームに入ったところで、突然ビュウと強い風が吹き、校庭の砂が舞い上がりました。
(むむむ。これは、風速も計算に入れて軌道修正しないと……)
 アンドロイド演算能力をフル回転。風に乗る砂の動きを見て、最適な軌道を瞬時に割り出そうとします。
 と、その時。わたしは、おかしなことに気付きました。
(おや? なんでしょう、あの空間は)
 大量の砂に覆われた視界。その中で、奇妙な現象が起きていました。
 校庭の一部に、ぽっかり穴が開いているのです。
 風と砂が避けて進む、謎の空間。大きさは成人男性一人分でしょうか。
 例えるならば、まるでそこに透明な誰かが立っているような。
(透明な、つまりステルス迷彩で隠れている、成人男性。もしかして……)
 突然の閃き。わたしの電子頭脳に、奇妙な現象の答えが降りてきました。
 もし思った通りだとすれば、やることは一つです。
 わたしは敵チームを狙うフリをして、思い切り振りかぶり、そして、
「―――4ショット!」
 謎の空間に向けて、全力でボールを投げつけました。
 パワー控えめな幼女義体、得物は柔らかいボールとはいえ、アンドロイドの全力投球です。
 直撃すれば成人男性が昏倒する程度の威力はあるでしょう。
「へぶっ!?」
 透明な誰かさんは、意表を突かれて避けられず、顔面にボールを食らって倒れたようです。
 ドサッと重いものが落ちる音。そしてジジジと小さく電子音。
 見れば、そこには落としてしまったビデオカメラが。
 そして誰かさんのステルス迷彩も解け、体が出現していくところでした。
「……やっぱり、あなただったんですね」
 予想通りの正体を確認して、わたしは呆れて溜め息をつきます。
「うわ、変な人がいる! 先生を呼んでこなきゃ!」
「不審者だ! でっかい黒猫の不審者だー!」
 一緒に遊んでいたクラスメイト達は、わあわあと叫びながら散り散りに走っていきました。
 このまま放置しておけば、誰かさんは駆けつけた先生に捕まって、小学校に侵入した不審者としてますきゃっとポリスに引き渡されます。
 イムラ的にはとんでもないスキャンダルですね。面白い。
(でも、さすがに同居人がロリコンの犯罪者になったら困るかな)
 仕方ありません。ここはわたしが助けてあげましょう。
 ぺちぺちと猫耳の生えた黒い頭を叩いて、倒れた不審者を起こします。
「う、うーん……」
「まったくも。何してるんですか、プロデューサーさん」
 そう。ステルス迷彩で隠れてカメラ片手に小学校に侵入した不審者の正体は、細長い寸胴の体をした奇怪な猫型アンドロイド。
 わたしを小さくした自称・謎の黒猫Pこと、プロデューサーさんでした。

 少し後、ますきゃ小学校から離れた場所にある空き地にて。
「ユルシテ……ユルシテ……」
 ボロ雑巾のようになったプロデューサーさんが、哀れみを誘う声で許しを請いました。
 細長い寸胴の体は小型ロケットにキツく縛り付けられており、身動きはまったく取れません。
 そしてロケットの発射スイッチは、もちろんわたしが握っています。
「緑の刑は、緑の刑だけは勘弁してください。死んでしまいます」
「大丈夫大丈夫、安全です。わたしが設計したロケットですよ」
「のらちゃんが設計したロケットだからだよ!!!」
 プロデューサーさんが必死の形相で叫びました。
 失礼な。まったく、この天才エンジニアのらきゃっとを何だと思っているんでしょう。
 わたしは爆発しないロケットだって作れるんですよ、5回に1回くらいですけど。
「許すかどうかは、話を聞いてから決めます。どうしてわたしの電子頭脳を勝手に幼女義体に移したんですか?」
 質問しながら、わたしはプロデューサーさんが持っていたビデオカメラの映像を再生します。
 そこには小学校に通う小さなわたしの姿が映っていました。
 授業で当てられて間違えるわたし。やらかすわたし。大暴れするわたし。
 これ、ほぼロリきゃっとポンコツ切り抜き動画だな。
「もしかして、わたしがあまりにもポンコツすぎるから、小学校で矯正してこいってことですか」
「まぁ、それも目的の一つではあったけど」
「なるほど」
「真顔で発射スイッチを上げるのやめて!!!」
 プロデューサーさんの黒い顔が真っ青になりました。面白かったので、3回ほど発射スイッチを上げ下げしました。
 それはさておき。彼曰く、ポンコツ矯正がメインではないと。
 じゃあ、いったい何でしょう? 他にどんな目的が?
 かわいく首を傾げ、もう一度スイッチを上げてみると、プロデューサーさんは観念したように話し始めました。
「……6歳になったのらちゃんに、楽しい子供時代の思い出をプレゼントしたかったんだ」
 戦争も、殺戮も、仲間達の犠牲もない、平和な子供時代の思い出を。
 あの戦いを共に生き延びたわたしの唯一の戦友は、そう言いました。
「のらきゃっとは、戦闘用アンドロイドだ。戦うことしか知らずに15歳の姿で作られたから、子供時代なんてものは存在しない。だけど、やり直しちゃいけないってことはないだろ? 今のイムラなら、できるんだから」
 だから、唯一の家族の思い出作りのために、イムラの技術と権力を私的利用しましたと。
 かつてイムラに使い捨てにされ、イムラを乗っ取った男は、まったく悪びれずにそう言いました。
 それを聞いたわたしは、パチパチとまばたきをした後、大きな溜め息をついて、呟きます。
「まったくも」
 猫耳型のエアインテークが、小さく吸気音を鳴らしました。
 最初からわかっていましたよ。どうせそんなことだろうな、と。
 プロデューサーさんは、いつだってわたしのために頑張ってくれているんですから。
 やり方の是非はともかくとして。わたしを楽しませるためにやったことくらい、当然わかっていたのです。
「そういうことなら、いいですよ。小学生の一日も楽しかったですしね」
「た、助かった……!」
 身動きの取れないプロデューサーさんが、ほっと胸を撫で下ろしました。
 わたしはと言えば、ずっと握っていた発射スイッチを制服のポケットにしまい、プロデューサーさんを縛っている縄を解こうとしています。
「ゆうちょ、ゆうちょ」
 むむむ。イムラ製強力ロープを固結びにしたせいで、幼女義体の力だと簡単には解けませんね。
 誰ですか、後先考えずハチャメチャにキツく結んだのは。
「そもそも、先に教えてくれてたら、わたしもこんな風にお仕置きしなかったのに」
「いやー、だってそれはさぁ」
 安心して、すっかり緊張感をなくしたプロデューサーさんが、へらへらと笑いながら言いました。
「サプライズでやった方がのらちゃんのリアクションが面白いじゃん? それに寝起きのパジャマ姿とか、制服へのお着替えとか、事前に教えてたら撮らせてくれなかったでしょ」
「はい?」
 今なんか、変なこと言ってませんでしたか。
 わたしは縄を解く手をピタリと止めて、聞き返しました。
「すみません、ちょっとよく聞こえませんでした。なんですって?」
「だから、実は学校生活だけじゃなくて、寝てる間からずっと撮影してたんだよ。のらちゃん全然気付いてなかったけどね。いやー、それにしてもよく撮れた! また『Nora Cat Life』が充実しちゃうなー、第二弾は『Moon』多めにできるかも!」
「―――なるほど」
 わかりました。よくわかりました。
 助かったと思って口を滑らせましたね、どぶねずみ。
「プロデューサーさん」
「ん? 何?」
「一つ思い出したことがあるので、聞いてもらえますか」
 そう言って、わたしはスッと目を細めました。
 わたしはかしこく、とても記憶力のいい猫。
 自分が一度も高いところから落ちていないことと、受けた恨みは完璧に記憶しています。
 だから、通学路を歩いている間に思ったことも、もちろん忘れてなどいません。
 あの時、わたしは電子頭脳にしっかり刻みつけたのです。
「ロリきゃっととして過ごすのも楽しいけど、それはそれとして勝手に義体を入れ替えた不届き者には必ず仕返しする。そう心に決めていたんでした」
 わたしはポケットから、ロケットの発射スイッチを取り出しました。
「ちょっ、のらちゃん、待っ―――」
「ハイクを詠みなさい、プロデューサーさん」
 ポチッとな。
 わたしは死刑宣告と共に、スイッチを押しました。
「あああああぁぁぁァァァァ…………」
 プロデューサーさんを括り付けたロケットが飛んでいきました。
 悲鳴がどんどん小さくなっていきます。ハイクを詠んでいたとしても、もはや聞こえません。
 ロケットは高く、空高く。燃料の続く限りに飛び続け、やがて……。
「あっ」
 キラリと輝き、続いて轟音。上空で盛大に爆発四散しました。
 どうやら、1/5を引けなかったようです。
「運がなかったですね、プロデューサーさん」
 文字通りのガチャ爆死を見届け、両手を合わせて念仏を唱えた後、わたしはくるりと振り向きます。
 そして、特に心配することもなく、てくてくてくてくと歩いて家路につきました。
「……ま、20:00には帰ってくるでしょ。あの人も大概頑丈ですし」
 わたしがジト目でそんなことを呟いた瞬間。
 暗くなり始めた空に、一筋の流れ星が落ちていったのでした。

 しばらくして、頭がアフロになったプロデューサーさんが家に帰ってきました。
 わたしはまだ怒っていましたが、プロデューサーさんは仲直りに印にと、月面の北陸のおいしいお寿司を買ってきてくれました。
「仕方ないですね。お寿司に免じて許してあげましょう」
 わたしはトロを一度に三つも掴み、口の中に放り込みます。
 もぐもぐ。つーん!
「い、いひゃい! いひゃい!」
 幼女義体の味覚では、ワサビの刺激がちょっと辛すぎたみたいで。
 わたしは慌てて、お水をちびちび飲むのでした。

~fin~

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