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高断熱住宅ならエアコンだけでも暖かいは本当か?

大工はおわって、設計の仕事に戻るので、改めて家についていろいろ勉強している。

今回は高断熱住宅でエアコン一台でも室温が20度あるのに、不思議とストーブをつけたくなる問題について書いてみる。

高断熱の家を建てようかな、断熱性能はとことんあげたほうが良いのか、本当に断熱って意味があるのかな? そういう人には役に立つかもしれない。

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まず、高断熱の家って本当に暖かいのか?っていう問題について。

自宅を高断熱高気密で建てた経験から確かにエアコン一台で室温20度が保てるのはすごいと思う。
我が家は冬は外がマイナス10度なんかになるけれど、それでも室温は20度近くをキープしている。
エアコンの温度設定は20度で、風量を強にしている。
(エアコンの暖房は、温度設定を上げると電気代を食うけれど、風量は強くしても大して電気代は変わらず温風を部屋全体に回してくれるので効率が良い)

ただ、不思議なことに室温が20度でも妻は灯油ストーブを付けたがるのだ。
つまり寒く感じているということだ。

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この原因についていろいろ考えてきたけれど、次の3つだろう。

・単純に妻が寒がりなだけ
・採暖の暖かさではない
・空気は暖まっているけれど、壁や床が暖まっていない

妻が寒がりについては、まあ、置いておくにして、順に見ていく。

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まず、採暖とは何ぞや?
簡単に言うと、ストーブや焚き火に手をかざすことだ。
熱源に近いところで暖を採ることを言う。
こたつなんかもそうだ。

これは暖かくて気持ち良い。

ただ、あんまり寒いところでこれをすると、体の一部だけ暖まって、暖まった血液が冷たいところに流れて、体にはあまりよろしくないとも言われる。

なので、やはり昔の家みたいに室温が寒い中でストーブやこたつだけで採暖するのは、あまりよろしくないらしい。

とはいえ、採暖自体が悪い行為というわけでもなく、やはり暖かくて気持ち良い。

エアコンだけで暖房すると、これがない。

妻がストーブをつけたがるのは、これが一つ大きい。

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次に、室温が高くても、周壁温度が低いと人間は寒く感じるということ。

周壁温度なんていうと難しい言葉だけど、要は周りの壁とか床のことだ。

すこぶる簡単にイメージすると分かるけれど、同じ室温でも壁が冷たい家と、暖かい壁だと、何となく暖かい壁の方が暖かそうな感じはする。
それこそ、日当たりの良い所を黒いタイルでも敷いて暖まっていたら、何だかポカポカしそうだ。

そういう意味では床暖房のように床から暖めて、じんわりと空気も暖めるというのは理想的ではある。

まあ、ざっくりの感覚的な説明だとそうなる。

それっぽい説明だと、熱放射なんかで説明される。
物体は熱を発している。
太陽から直接熱風が地球に届いているのではない。宇宙には空気がないので熱風もない。赤外線だか電磁波だか、まあ、言うなればポカポカ光線が地球に届くので温かい。

太陽ではない物も熱を発している。

だから、周辺のものが温かいと、そこから出るポカポカ光線で人間も暖かく感じる。

一番分かりやすいのはハロゲンヒーターなんかの遠赤外線暖房だ。
熱源自体は熱くないのに、手をかざしているとポカポカする。
アレはポカポカ光線を出しているから、それが当たる部分は暖かいというわけだ。

平たく言うと、そういう理屈らしい。

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もう少し突っ込むと、人間が暖かく感じるかどうかは、体の内部で作る熱量と、体から外に逃げていく熱量のバランスだそうな。

生きていれば代謝して熱を作る。

熱を作れば、当然、熱は出て行く。

ただ、外が暑いと、逆に外から体の中に熱が入ってくる。
そうなると暑い。

逆に外が寒くて、体の代謝で作る熱量で追いつかないほど、外に熱が出て行くと寒い。

この時、室温だけではなく、周辺からのポカポカ光線も大きく影響するらしい。
ポカポカ光線を受けていると、体の表面が暖かくなるので、外に逃げていく熱量が少なくなる。

気温が低くても、太陽が出ているとひなたぼっこしていれば暖かく感じることもある。
逆に気温はそこそこ高いけれど、日陰にいて、周りのものも冷たくて、ポカポカ光線が当たらない。
さらに風がビュービュー吹いていると、体の表面が冷えて、体の熱がどんどん外に出ていくと寒い感じがするわけだ。

つまり、人間が暖かいと感じるのは、体の代謝により発生する熱と、体の外に逃げていく熱のバランスによって決まる。
それは、室温だけじゃなく、風やポカポカ光線も大きく影響するということだ。

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高気密高断熱で、エアコンだけで室温が20度近く保てても、ついついストーブを付けたくなってしまうというのは、そういうことなのだ。
妻が単純に寒がりというだけでなく、高気密高断熱の家は、室温は高くても、必ずしも体感的に暖かいわけではない。
まあ、確かに寒くはないし、外がマイナスということも考えれば十分に素晴らしいんだけど。

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薪ストーブや灯油ストーブが暖かいのはそういうことなのだ。
ポカポカ光線を出す暖房だからなのだ。
なおかつ、室温も上げてくれる。

仮に熱源の近くにいなくても、ポカポカ光線が当たった周辺の床や壁が暖まって、そこからポカポカ光線が出やすくなる。

薪ストーブなんか分かりやすい。火災防止のために、周辺を鉄板やタイルなどの不燃材でガードしないといけない。
そのくらい周辺のものが暖まる。
空気だけではなく、周辺のものが温まるのだ。

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そう考えていくと、高断熱だけをせっせと頑張るよりも、薪ストーブやFF式の輻射熱灯油ストーブなんかにお金をかける方が良いんじゃないかとも思う。

FF式の輻射熱というと難しい響きだけど。
FF式とは、外の空気を取り込んで、燃焼させて、燃えたあとの空気は外に出すというものだ。
壁に穴を開けて設置するタイプで、北海道ではごく一般的なもので、アパートなんかでも付いているところもある。

輻射式というと、ポカポカ光線タイプということだ。
本州でなじみがある灯油ファンヒーターは対流式で、これは空気を暖めるタイプなのでエアコンと原理的には同じだ。
輻射式の暖房というのがポイントだ。

薪ストーブやFF式輻射熱ストーブは大掛かりすぎるしお金もかかる。
FF式にこだわらなくても、輻射の灯油ストーブでも良い。最近は減ったけど。昔はファンヒーターよりも輻射熱の灯油ストーブが多かった。上にやかんを置いたり、モチや焼き芋焼いたり。火事や火傷の問題もあったんだろう。
電気のものならオイルヒーターなんかも輻射熱タイプの暖房だ。ハロゲンヒーターもそうだけど、さすがに周囲の壁や床を暖めるほどの火力はないだろう。

総じて考えると、やはりFF式ストーブを最初に付けておけば良かったなーという気はする。
薪ストーブでも良かったけど。まあ、薪はやっぱりいろいろ面倒だ。ペレットストーブでも良いけど、ペレットって結構お高い。

エアコンで室温を作って、並行して輻射熱の暖房も使うのが暖かいんだろう。

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実のところ、僕の前いた会社ではエアコン一台で暖かいと謳っていた。
確かにエアコン一台で家全体がそこそこの室温になる。
これは嘘ではない。

だけど、改めて暮らしてみて分かったけれど、室温が高いだけでは、不思議と暖かくない。

まあ、確かに寒くはない。
妻はストーブを付けたがるけれど、灯油が切れていれば、まあ良いか、くらいのものだ。
深刻に寒くてストーブを付けたいというわけじゃないらしい。

寒いというよりは、採暖の心地良さにあたりたいのだ。
実際、妻はこの家は暖かいと言っている。
アパートの頃は、冬は地獄だった。
地元の人は寒さに慣れているが、県外出身の我々には家の中でも寒いというのは本当に地獄だった。
その点、今の家は確かに暖かい。

だけど、ストーブを付けたくなるのも事実ではある。

ストーブを付けると、確かに燃料代は食う。
室温を上げるだけならエアコンの方が圧倒的に安い。
ただ、家の中の壁や床が暖まるまでは、ストーブを使うのが良いんだろう。

問題なのは、妻はファンヒーターを使いたがるので、空気が暖まるばかりで、周壁温度は上がらないということだ。

FF式ストーブが欲しい。

とはいえ、そこまで寒くもないので、今さら壁に穴開けて、外に灯油タンク設置してまで多分つけないんだろうけど。
それなら薪ストーブか。薪ストーブはやっぱり楽しそうだ。いろいろ不便だろうけど。生活を楽しむという意味ならやっぱり薪ストーブなんだろう。
でも、面倒だから、結局、ペレットストーブなんかに落ち着く気もする。
とはいえ、そこまで寒いわけでもないので、結局買わないんだろう。
まあ、オイルヒーターくらいは買うかもしれない。
もうすぐ冬も終わるから、次の冬になるだろうけど。
何にせよ置く場所が邪魔なので、やっぱり微妙だ。

床暖房はその点良いけど、まあ、高過ぎる。導入コストも電気代も。

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そんなわけで、高断熱の家を検討している人は、断熱性能ばかり考えるのではなく、エアコン以外の暖房器具についても少し検討してみるのも良いと思う。

身も蓋もない話だけど、寒い北海道で実績があるFF式ストーブがやっぱり良いんだろう。
まあ、冬でもマイナスにならない地域だったら、エアコンだけでも良い気もするけど。
そう、マイナスの時期がやっぱりエアコンだけじゃなくて、採暖できる暖房があると嬉しいと思う。
20度あるから寒いってわけでもないんだけど。

まあ、そんなこんなでした。

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