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拝啓 この世界さんへ

拝啓 この世界さんへ

私はとても良い御縁、良いお客さんに恵まれていて、とても感謝しています。

そして神仏との御縁もどんどんつながり、深まり、広がっていて、心より感謝しています。

ただ、ひとつお伝えしたいことがあって、この手紙を書いています。

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私は刀鍛冶を辞めます。

誤解のないように書きますが、刀剣を生み出すことをやめるわけではありません。

これからは宝剣鍛冶として生きてゆきます。

ここでいう宝剣は刀剣の形式の話ではないので、剣だけでなく太刀も刀も短刀も生み出します。

宝剣鍛冶として生み出す刀剣はエネルギーや祈りに特化しています。

美術刀剣でも、武用刀剣でも、お守り刀でも、
エネルギーと祈りに特化して生み出す刀剣は
宝剣鍛冶として生み出すことができます。

ただ、核心として、あくまでエネルギーと祈りに特化して生み出した結果、
エネルギーが美しい故に美しくもあり、
剣士の氣と共に刀剣の氣も放たれるが故に武用の機能性もあり、
エネルギーと祈りが働く故に持ち主を守るということです。

そういう刀剣もこれからも生み出していきますが、
宝剣鍛冶としての一番の役割としては、
神仏と共にあることで神仏の御働きを顕す刀剣や、
神仏と共に働いている人々と共にあることで
神仏の御働きを顕す刀剣を生み出していくことです。

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そういう意味では、これまでもそういう方針で刀剣を生み出していたので、これまでとそれほど変わっていないようでもあります。

でも、ただ単に軽い氣持ちで肩書きを変えただけではなく、
在り方の方向性や線引きを明確にするための覚悟と共に呼び方を変えました。

そして、それを宣誓するためにこうしてこの世界さんにお手紙をしたためています。


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私の天命は、精妙な御靈の宿る刀剣を生み出して、その刀剣が刀剣自身の天命を果たせるような配置につけるようにすること。

そして、天と地、神仏と人間の間を流れる呼吸のように刀剣を活かすこと。

それは現在、実現していっていますし、これからも進んでいきます。

ただ、それだけではどうも上手くは廻って行かないのです。

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元々はこう思っていました。

例えば多くの人が感じ入るような精妙な剣が生まれるようになったなら、需要もあり、経済的にも巡りが良くなり、さらにより多くの刀剣を生み出していけるようになるであろうと。

ところが、現実は思惑とは違いました。

精妙であればあるほど人間界での需要が増えるわけではないのです。

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御縁がつながり、神仏の需要に応じて、刀剣を生み出すというサイクルは、より活発になってきています。

ただし、その生み出した刀剣が様々な理由から販売することにはならないというのであれば、製作にも費用がかかるので、資金面でスタックすることになります。

これまで私は、そういう状況でも他の仕事は基本的にはせず、刀鍛冶という職業のみで生活し続けることが覚悟だと思っていました。

でも、ここまで色々試して来て、それはただの偏った思い込みだったという気づきに至りました。

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そこでいっそのこと、宝剣鍛冶として、精妙な御靈の宿る刀剣を生み出して、
この世界が必要とする神仏や人に納めることをメインにしようと思い至ったわけです。

という話だけだと、ただ単に肩書きが変わっただけとも言えるのですが、もう一つ重要な方針転換があります。

もちろん発注を受けて生み出す場合もあると思いますし、その方が多くの刀剣を生み出すことができるので望ましいのですが、
ここで重要なのは発注がなくとも必要とあらば生まれるべき刀剣を生み出すというところです。

そして更に、それは発注がなくても生み出すというだけでなく、
必要とあらば必要なところに奉納するということです。

もちろん刀剣を生み出すのにも資金が必要です。

その上さらに奉納もするということは、そこでの売上はないので、さらに資金が必要になります。

そこで、宝剣鍛冶としての天命を果たすために、様々な不要なこだわりを捨てて、刀剣以外の仕事もしてお金を稼ごうと思っています。

これからは、奉納しかしなくなるかもしれませんし、
発注も来るかもしれませんし、
奉納の発注もあるかもしれませんし、
出来上がった刀剣の普通の販売もするかもしれません。

ただ、いずれにせよ、自分自身の持っていた刀鍛冶という枠組みを完全に捨て去って、
新たな在り方として宝剣鍛冶として生きてゆこうと思っています。

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この文章の宛先を読んでくださる人々ではなく、
この世界さん宛の手紙にしたのは、
この文章がただの宣誓ではなく、
この世界そのものへの問いかけでもあるからです。

この世界との対話は主として、
こちらの行動と
示される現象とのやり取りによって為されていきます。

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私は意志をここに示しました。

さて、この世界さん。

その答えを示してください。




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