OSTER Project解説動画の解説 - 「ベースライン事前着地方法」の作り方-後編-
この記事はプロの作編曲家OSTER Project(以下OSTERさん)の解説講座にでてくるaug(オーギュメント)の和音を、自分の曲に応用するにはどうしたらいいかを考える記事の後編です。前編はこちら。
OSTERさんのaugアレンジ技の一つ「ベースライン事前着地方法」のルールは以下のようなものでした。
「ベースライン事前着地方法」は、「ドミナントモーションしているV7を裏コードで置き換えて全音下のaugをテンションノートとして上に乗せる」とできる。
今回はOSTER楽曲に実際どこでどのように使われているのか、そして自分でこうしたアレンジを自在にさしこむにはどうしたらいいかをみていきましょう。
OSTER楽曲には実際どこに使われてるの?
実際OSTERさんはこの方法かなりお気に入りなんじゃないかと思われるくらいいっぱい使ってます。
【いるかジェット】
「サビ冒頭の二小節目」に入ってます。
【1:10 ~ 1:14あたり】
|Db |Faug/G |Gb Fm |Ebm Ab7 |
解説動画ででてきたものは一瞬だけaugがでてきますが、こちらは一小節まるまる使ったパターンですね。「ばたつかせるあし〜」の「し」の音がDbでちょうどaugの+5の音と一致していますね。綺麗!
この方法は『AIシテ!きりたん』や『くじらライダー』など、かなりいろんなOSTER楽曲に入っているので、OSTER楽曲らしさを出すにはとてもいいみたい。
「ベースライン事前着地方法」なアレンジってどうやるの?
リクツと具体例を見てきた今、あとは実際に編曲するだけですね。では比較的シンプルなコード進行の曲をアレンジしてみましょう。
【バスルームガーデン】
初音ミクのウィスパーボイスなどのサウンドライブラリ(Append)が初めて追加発売された際いち早く取り入れて発表されたOSTER作品ですね。
この曲はサビについてはKey=Abです。サビの前半八小節を使って考えてみましょう。コード進行はこちらになります。(ちなみにAメロが半分きたところでFからAbに転調してあとずっとAb)
【原曲:サビ前半八小節】
|Ab |Db |Bbm7 |Eb7 |
|Cm7 |Fm7 |Bbm7 |Eb7 |
ゆっくり再生したピアノトリオ版の音源がこちら
これを「ベースライン事前着地方法」でアレンジするとこうなります。とりあえず全部盛りにしちゃう。
【アレンジ:サビ前半八小節】
|Ab Caug/D |Db |Bbm7 Daug/E |Eb7 |
|Cm7 Eaug/F# |Fm7 Aaug/B |Bbm7 Daug/E |Eb7 |
aug化の方法は前記事で以下のようになっていました。
★★★ベースライン事前着地方法のaug化★★★
Step1. 事件->結末の関係のコード進行(=ドミナントモーション)を探す。
Step2. 事件のコードの裏コードを探す。
Step3. 2で判明した裏コードの上に全音下のaugコードを重ねる。
アレンジの各場所でどんな変化を加えたのかプロセスをみてみます。
<1〜2小節目>
Step1. Ab -> Dbがドミナントモーションになっています。「事件」のコードであるAbがaugのターゲットになりますね。
Step2. Abの裏はDです。
Step3. Dの全音下はCですね。ということはAbはCaug/Dに差し替えが可能ということになります。
同じようにやっていきましょう。
<3〜4小節目>
Bbm7->Eb7が「事件->結末」の関係になっていますね。aug化のターゲットはBbm7。Bbの裏はE。全音下のDのaugをくっつけて、Daug/Eが差し替え可能であることがわかります。
<5〜6小節目>
Cm7 -> Fm7が「事件->結末」の関係。Cの裏はF#。全音下のaugであるEaugをくっつけてEaug/F#を差し込む。
今回はわかりやすくするため全てのベースライン事前着地方法適用箇所に三拍目の裏で入れています。かなりOSTER節に近づきますね。
おしまい
というわけで、「私もOSTERさんみたいな曲作ってみたい!」と思うOSTER楽曲ファンは少なくないと私は思ってます。そんな人たちの参考になれば幸いです!