西郷の衛兵

[物語]
敗走する西郷軍の殿を務める老マタギと、熊撃ちの猟犬。近代に移ろうとする日本の戦いに、最果ての地から訪れた老兵が楔を穿つ。風を読み、匂いを追い、音を探り、放たれる必殺の一撃は、西郷隆盛を守り抜けるのか?

東北の寒村の出身の安倍野阿倍野相太は、故郷の因習を嫌って九州を訪れていた。そこで偶然出会った西郷隆盛に、祖父直伝の狙撃の腕を見込まれて彼の警護を務めることとなる。

時は西南戦争中期。敗走を始めた西郷軍は四面楚歌、孤立無援の状況の只中にあったが、相太の獅子奮迅の活躍もあり、なんとか持ちこたえていたが、仲間の裏切りにあい、西郷隆盛を庇って被弾。相太の運命も尽きようとしていた。

そんな中、厳重な警備の中にいた西郷軍の陣中に、ひとりの老人と大柄な犬が侵入。彼こそ、相太の祖父であり東北最強のマタギ、阿倍野久蔵と、その愛犬であり熊撃ちの猟犬クロであった。久蔵は相太の死を看取り、その間際に「先生を守って欲しい」と相太に遺言を残される。

西郷隆盛追撃の手はさらに激しく熾烈さを増すなかで、「針穴を穿つ」と称される久蔵の狙撃は、西郷を死守できるのか?


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