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【NEXUM CREATOR'S INTERVIEW】メイクアップアーティストYuka Hirac氏から学ぶオリジナリティの育み方とは

クリエイター向けコミュニティサイトとして始まったNEXUM JAPANのインタビュー企画の連載「CREATOR'S INTERVIEW」。業界で活躍する様々なクリエイターの人生を振り返ると共に、クリエイティブのあり方を考えていく。


二回目のインタビューは、メイクアップアーティストのYuka Hirac氏のアトリエに訪問し、インタビューをさせていただいた。

Yuka Hirac氏の創作活動の源とは、オリジナリティはどこから出てくるのか、クリエイティブの本質を探っていく。



Yuka Hirac

Yuka Hirac

2006年渡英、London college of fashionを卒業後、メイクアップアーティストとして活動を開始。2013年に帰国後は、ファッション系の数々の有名誌のメイクをするほか、yohji Yamamoto POUR HOMMEやANREALAGE等のコレクションも担当。2020年には“52 days visual diary”といったコロナ禍での52日間の創作日記を出版する。現在もメイクだけに留まらず、展示会を実施し、アーティストとして活動の幅を広げている。

Instagram: https://www.instagram.com/yuka_hirac/


◾️Yukaさんの現在の活動を教えてください。

今はメイクアップアーティストとしてファッションやカタログの仕事をしています。また、普段の仕事とは別に、個人のプロジェクトとして自分の本を作ったり、展示活動も行ってます。

◾️Yukaさんがメイクの仕事を始めたきっかけについてお聞かせいただけますか?

<美容師に興味を持ったきっかけ>
高校生の頃、美容師ブームがあって、周りの友達もみんな美容師を目指していました。
それで、自然と自分も美容師に興味を持つようになったんです。

当時、雑誌が大好きで、ロンドンのi-DやPurpleなんかをよく買っていました。でも、そういった海外の雑誌はすごく高くて、買えるお店もほとんどなくて。唯一見つけたお店でいつも買っていたのを覚えています。ただ、その頃はヘアメイクの仕事なんて考えたこともなくて、とりあえず美容師を目指していました。


<メイクに興味を抱き、ロンドンに行く>
ヘアメイクに興味を持ち始めたのは、美容学校を卒業してからですね。
サロンで働いているうちに、成人式の前撮りやメイクの仕事に関わる機会が増えていって、次第にメイクの方が好きかもって感じるようになりました。

それで、思い切って海外に行こうと思ったんですが、ニューヨークにするかロンドンにするかで、めちゃくちゃ迷いました。昔ダンスをやっていたこともあって、ストリートカルチャーが好きだったので、ニューヨークのグラフィティにも興味があったんです。でも、いろいろ調べるうちに、ロンドンにあるグラウカロッシというメイクスクールではアーティストから直接教えてもらえると知って、ロンドンに決めました。


<ロンドン時代>
ロンドンに行ったものの、実はグラウカロッシには行かなかったんです(笑)。
まずは語学を学ぼうと、ロンドンに近くて比較的安いブライトンに行きました。でも、現地に着いたら、グラウカロッシの学費が高いことが分かって、それで最終的にはLCF(ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション)に通うことにしました。

LCFに通い始めて、初めてヘアとメイクでセパレートで仕事をすることがあるってことを知りました。どちらもやりたくて、ヘアスタイリストのアシスタントをしたりもしましたが、卒業する頃にはメイクの方に強く惹かれるようになっていました。

今でもヘアには興味がありますし、見るのも好きです。でも、ヘアメイクはやらないと決めたんです。普段ヘアスタイリストの方々と一緒に仕事をしているからこそ、その凄さがわかることもあって、自分には向いていないなと思いました。

◾️特に影響を受けたアーティストはいましたか?


Walls of Yuka Hirac's atelier

そうですね、考えてみると、高校生の頃にテレビで見たメイクアップアーティストのパット・マグラスからは大きな影響を受けたんだと思います。

当時は海外のファッションショーがテレビで放送されることもあって、初期のガリアーノのショーなんかも見ることができたんです。彼女がバックステージで活躍する姿を初めて見たとき、「なんてかっこいい黒人女性なんだ!」と思って、その強烈な存在感にすごく憧れました。あまりにも憧れて、同じようにターバンを巻いていた時期もありましたね。(笑)

◾️LCF卒業後は、どのような活動をされていたんですか?

LCF卒業後は、エリート街道まっしぐらという感じではなくて、アシスタントの仕事もあまりできてない時期もありました。ショーのバックステージも興味はあったんですけど、なかなか勇気が出なくて、しばらくは行けなかったんです。

その頃、ロンドンで知り合った日本人のアーティストさんにはすごくお世話になりました。ヘルプやアシスタントに呼んでくださったり、他にもStreetersのアーティストの方々とも関わる機会があったんですけど、正直、アシスタントはあまり得意じゃなかったんですよね。気が利くタイプでもないし、英語も苦手で、逃げ回ってたこともありました(笑)。

それでも、アシスタントをしながら雑誌の撮影に呼んでもらえるようになって、お金は出ないこともありましたが、小さな雑誌で楽しく仕事をしていました。そんな感じでしばらく向こうで活動して、日本に帰国して今に至ります。

◾️今のようなクリエイティブなメイクのスタイルは、いつ頃から確立されたんですか?

きっかけは二つあると思います。

一つ目は、専門学校で講師をしていたときです。

学生は、若いからこそ突拍子もないアイディアを思い浮かべることがあると思うのですが、「先生、これやりたいんですけど、どうやってやるんですか?」ってよく聞かれることがあって。正直、私もわからないことが多かったんですが、「え?やってみよう!」って感じで、実験的にいろいろ試してみるのがすごく楽しかったんです。

もう一つは、"『』moment"というグループ展を実施したときです。

この展示会は少し変わっていて、アートディレクター、フォトグラファーと私でコラボレーションして作品を展示するというものでした。

この展示会を企画したきっかけは、私たちメイクアップアーティストが普段、作品作りや仕事において好きなことを自由にできないという話をフォトグラファーにしたことからでした。フォトグラファーやディレクターなど、作品を指揮する立場の人たちは、自分のスタイルに合わないものは依頼がきても断ることができますよね。でも、私たちヘアメイクは、クライアントやフォトグラファー、ディレクターが作りたいイメージに合わせて、探り探りで作品を作ることが多く、主体的にクリエイティブを表現する機会はなかなかないと思うんです。

だからこそ、この展示会では、誰かがディレクションするのではなく、みんながそれぞれ最大限にやりたいことをぶつけ合い終着点を探す作品を作りました。それで、タイトルも『』momentにしたんです。

◾️個展「52 days visual diary」はカメラマンを入れず、全部自分で作った作品の展示会でしたね。そのお話もお伺いできますか?


YUKA HIRAC "52 days visual diary"

この作品はコロナ禍に作ったものだったのですが、最初は展示会を開くつもりもなかったんです。本を作る予定もなく、何も考えていませんでした。

ただ、コロナ禍で仕事も全部ストップしてしまい、家にこもっていると気が滅入ってしまいそうで、「このままじゃ鬱になっちゃうかも」と思っていたんです。そう思っていたときに、ちょうど新しいアシスタントが近くに引っ越してきて、「せっかくだから一緒にスキルアップしよう」と思って実験的にアシスタントの顔にメイクをし始めたのがきっかけでした。

最初はアシスタントに教えながら進めていたんですが、だんだんと自分のやりたいことにシフトしていきました。その時に「1日1ルック撮る」というコンセプトを決めて、インスタでそれを宣言してしまったんです。(笑)それで毎日続けていたのですが、結果的に自分の表現を追求する時間になっていましたね。それがストレス発散や気持ちの整理にもなって、「この時間がずっと続けばいいな」と感じるほど、楽しく充実した時間でした。それで、最終的に展示会も開催しました。

◾️1日1ルック撮るなんて、アイデアの量がすごいですね。また、Yukaさんは常に新しくて斬新なメイクをされているイメージがありますが、アイデアはどのように思いつくんですか?

作品を作るときに深く考えすぎずに、ノリでやってみたりしてますね。とりあえずやってみるといいますか。

あと、私はふとした瞬間に見えたものからイメージが湧くことが多いです。例えば、大量のペイントを使って筆を洗うときに、すごく綺麗な色が出てきたり、そういう瞬間が面白くてインスピレーションになります。

割と携帯をどこにでも持っていっていて、気軽にいろんなものを撮るようにしていますね。

◾️Yukaさんのメイクには、Yukaさんらしさがあると思います。オリジナリティがないと感じたり、オリジナリティについて悩んでいる人へ何かアドバイスはありますか?


Yuka Hirac's work at her atelier

オリジナリティって、自分が好きなものや過去の自分から自然に出てくるものだと思うんです。

私の場合、メイク以外では虫が好きなんですが、好きなものの写真を並べてみると、「これが自分らしいんだな」って少しずつ見えてくるんですよね。そんな風に、自分の好きなことや過去を振り返ってみると、新しいひらめきが生まれることも多いと思います。

メイクのことばかり考えると、かえって行き詰まってしまうこともあるんじゃないかな。だから、メイクに限らず、自分が興味のある素材や好きなものに目を向けてみるのが大事かなと。私も最近はシリコンに興味を持っていて、単純に「これ、面白いな」って感じて興味が湧いているだけでメイクとして好きとかそういうことではないんです。こうやって、好きなものを集めたり写真を撮っていくうちに、自然と自分らしさが出てくるんじゃないかと思いますね。

あとは、私はよく散歩しますね。散歩で気になったところをひたすら写真撮るんですが、後から見返すと結構面白かったりしますよ。(笑)

◾️オリジナリティが見つからなくて辛くなってしまったら、Yukaさんならどうしますか?

自分が本当に好きなものやスタイルって、続けていく中で見えてくるものだと思うんです。だから、迷ったときこそ、すぐにやめてしまわずに、少し辛くても続けてみることが大切かなと感じます。もちろん、別のことに挑戦しながらでもいいんですけど、続けていくうちに少しずつ「これが自分なんだな」って気づくことがあると思います。

何年も続けていると、やりたいことや好きなことが変わることもありますよね。でも、そこで一気に切り替えるというよりは、別のことにも挑戦しつつ、今のクリエイティブも続けてみるといいんじゃないかなと。それが結果的に、自分のオリジナリティにつながっていくんじゃないかと思います。

◾️最後に、Yukaさんにとって、メイクアップや創作とはどんなものですか?


Yuka Hirac at her atelier.

ストレス発散みたいなところが大きいですね。でも、あんまりいい言い方じゃないかもしれませんが(笑)。

日常の中でうまくいかないことって、誰にでもたくさんあると思うんです。そういうとき、そのままで終わらせるんじゃなくて、それを活かして何か作品を作ると、私は自分の中で少しすっきりするんです。創作することで気分がリセットされる感じというか。

あと、作品を作ることで、自分の頭の中を整理しているような感覚になることもあります。まるでデータ処理をしているみたいに、作品を通して「今、自分はこういうものが好きなんだ」と気づいたりするんです。そういう意味で、自分の好きなものを理解するためにも、創作があるんだと思います。

Interview /Text /Photo(at her atelier) Marino Asahi
Assistant Kana Koga


Yuka Hirac氏は現在アシスタントの募集も実施しています。
アシスタントに興味がある方は下記掲示板を確認の上、応募をしてみてください。

掲示板URL:https://nexumjapan.com/items/5751


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