九州アスティーダが挑む変革 「ピンポンクリエイター」の活躍
2021年発足から九州全県をホームタウンとして活動を行う九州アスティーダ。地方での試合開催や学生インターンの活躍など独自の成長戦略を築いている。発足から現在まで代表を務める川面創氏に話をうかがった。
【この記事に登場する人】
川面 創(かわつら・はじめ)。三重県出身。三重高、立命館大を経て実業団。百五銀行でプレー。2003年から立命館大女子卓球部の監督を務め、2021年に九州アスティーダの監督兼代表に就任。2023年より代表に専念。
地元「九州」を背負う
-2021年のチーム発足から監督と代表を兼任されていましたが、2023年シーズンから監督を増田秀文氏へ任せ、代表に専念することになりました。その意図はなんですか?
当初から監督と代表は分けるべきだと思っていました。監督は色々な優秀な方が経験すべきだと考えているからです。また、私たちのチームは「九州」という名前を冠しており、「地元で強くしていく」というミッションがあります。増田監督は熊本県出身で日本代表経験もある監督にうってつけのすばらしい人材です。
-ミッションの「地元で強くしていく」について、実際に行っていることを教えてください。
現在アスティーダに所属する選手の多くは九州出身です。現役の高校生も在籍しており、今後の成長が期待される選手が多いのも特徴です。九州の小中学生が「アスティーダで活躍したい」と目指してもらえるよう編成にも気を配っています。
-試合は九州各地で行われていますね。開催基準などはあるのでしょうか?
ありがたいことに九州各地からオファーをいただきます。観客収容人数、アクセス、搬入経路、土足可等の利用条件などを総合的に見て判断しています。条件を満たすアリーナは多いのですが、バスケットボールやバレーボールなどの他競技と会場の取り合いになるので調整には苦労します。
-特定のホームアリーナを決めることは考えていますか?
特定箇所で開催できれば設営、物品搬入、運営など楽になる面はあると思います。しかし今は特定のホームアリーナを決めることは考えていません。それでは「『九州』アスティーダ」という名前である意味がない。九州各地で試合を行い、ファンの方々と接点を多く作っていきたいです。
たとえば、よく利用させていただいている福岡県田川市の総合体育館は、交通手段が限られていますが、注目される試合では都市圏と同程度の来場者数を記録しています。田川市公式LINEで試合予定を告知していただけるなど行政の方の協力もあり接点を作ってきた結果だと思います。
-九州各地での転戦はスポンサー集めにも影響しますか?
チームスポンサーは全国各地から募集していますが、マッチデースポンサーなど単発のスポンサーは各地元のTV局様や代理店様にご協力いただき募集しています。現在正社員は3人とスポンサー営業だけに人を割く余裕はありません。
地方で試合をするメリットの一つは、競合となるような大きなイベントが少ないという点です。注目度が高く、お客様、地元の企業様から応援していただける環境にあると思っています。
※マッチデースポンサー……1試合限定のスポンサー。試合会場へ企業ロゴの掲示、セレモニアルイベント参加権など試合現場でPR等利用権利が付与される。
大学生インターンの活躍
-昨年スタートした「九州卓球(ぴんぽん)盛り上げプロジェクト」の発足経緯、目的を教えてください。
若者視点を取り入れた新規事業開発や新たな集客策の考案などを目的として始めました。2021年チーム発足当初、学生の方から「なにかお手伝いできないか」とお問い合わせをいただいていたのですが、チームとして受け入れる態勢が取れる状態ではありませんでした。
パートナーシップを結んでいるいろいろ株式会社と共同で同プロジェクトを育てていく座組です。現在は10名強の学生インターンの方に「ピンポンクリエイター」として参画いただいています。
-学生インターンの方々は具体的にどのような活動をされていますか?
試合やイベントの企画運営、SNS投稿などの広報活動と様々な面で活躍いただいています。九州アスティーダを盛り上げたいという方に集まっていただいてると感じています。
昨年はホームゲームでの活動だけでなく、「RKBカラフルフェス」でもイベント企画運営を担っていただき、私たちにとって重要な戦力になっています。今後はスポンサー営業も担っていただきたいと考えています。
-学生インターンを巻き込み、実力を発揮してもらうために工夫していることはありますか?
彼らは卓球愛があり、高いモチベーションを持って参画してくれています。質の高い意見をたくさん出してくれるので、毎週一回の定例会で必ず意見や考えを聞くようにしています。
プロジェクトを通して彼らのスキルアップにつながるよう心がけています。最近では講師を呼んでSNS動画編集の勉強会を開催しました。
各学年リーダーを決めたことで学生インターンの活躍がより顕著になりました。学年リーダーが意見の吸い上げ、集約などを率先して行い、インターンチームを引っ張ってくれています。私たち運営と学生インターンの方々と円滑なコミュニケーションが可能になりました。
-今後九州アスティーダの今後の展望を教えてください。
卓球は子どもからお年寄りまで楽しめるスポーツです。誰でも一度はラケットを握ったことがあるのではないでしょうか。この卓球のポテンシャルを最大限に活かして九州に夢と感動を与えられるチームになりたいです。
昨年は過去最多1,200名の来場者を記録する試合もありました。スポンサー企業様や地元の団体様から試合以外での地元のイベント参加のご依頼も増えており、徐々に私たちの存在が浸透していっていると感じています。
さらに今年はパリ五輪も開催予定なので国内の卓球熱は間違いなく高まります。オフシーズンにイベント企画やスポンサー営業などを行い、万全の態勢で2024-2025シーズン開幕を迎えたいです。
<取材・文>
佐藤大輔(Spoship編集部)
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